第38話「美少女とデートです」
今日は朝から気分がいい。
理由は明確だ。
美少女が俺を待っているからだ。
あんな神でも良いところあるんだな。
今までくそ野郎と思ってたけど、もう少し評価を上げてやっても良い。
12時に路地裏と言っていた。
聖都では12時になると、中央にある塔から鐘がなる。
そのタイミングで路地裏にいればいいのだ。
腕時計を持っていないが、時計台があるため、時間を確認することはできる。
今日は一日やることもない。
と言っても、いつもの習慣のせいか、朝早く起きてしまう。
朝は魔法の訓練を行い、少し汗を流してきた。
もちろん、その後に水魔法で体を綺麗にした。
今から、美少女とデートだ。
体を清潔にしておくのはエチケットだろう。
12時になる少し前から路地裏で待機していた。
そして、その時は訪れた
―――カーン、カーン、カーン
塔の鐘が町に鳴り響く。
次の瞬間、
「危なあぁい! どいてえええぇぇぇぇ!」
空から少女が降ってきた。
そう。
空からだ。
なんだ、このラピ〇タ的な展開は。
俺は「シ〇ター!」と叫びそうになるのを抑える・
それよりも、このままぶつかったらお互い無事では済まない。
俺は瞬時に魔力を両腕に込めた。
「土雲!!」
名前の通り、雲のような土を少女の落下地点―――つまり俺の真上に出現させる。
土雲が少女を包み込み、落下による衝撃を抑えた。
そのまま、土雲を移動させ、ゆっくりと彼女を地面に下した。
「ふー。死ぬかと思ったわ」
少女を額の汗を拭きながら言った。
「ところで、あなたは誰?」
お前こそ誰だあああぁぁぁ!
と突っ込みたかったが、冷静になる。
この少女が、神の言っていた美少女だろう。
うん。
確かに可愛い。
肩までかかる白い髪は美しい。
そして、おおきくぱっちりとした目と、透き通った黒い瞳。
ん・・・?
黒い瞳?
前世ではよく見かけたが、この世界で黒い瞳なんて見たことない。
そもそも、黒の瞳は5大特性のどれにも当てはまらない。
「うん? どうしたんだい? お姉さんが綺麗だから見とれちゃったのかな?」
「あ、いや。そうじゃなくて・・・」
「キミ。こんな美少女を捕まえて可愛くないとでも言うのか?」
「い、いえ。・・・綺麗・・です」
「うん。よろしい。やはり素直な子が一番だ。私はアイナよ」
「ど、どうも、ルークです」
美少女の前だと緊張する。
女子との会話が苦手だ。
何を話せば良いのかわからん。
レイラとコリンも女の子だろうって?
レイラは幼い頃から一緒だし、コリンに関しては男だと思っていた。
二人ともノーカンなのだ。
「よろしくね。ところで、ルーク君は聖都に詳しい?」
「いや、全然。4日前に来たばかりなので」
「そう。じゃあ、一緒に回りましょ! 私が案内してあげる」
なんか良くわからんが、デートだぞ。
女子と二人で町を回る。
これがデートでなくて、なんと呼ぶのだ。
ありがとう、神様。
転生して初めて感謝するよ。
「じゃ、じゃあ。早速・・・あっちに行きましょう!」
「あの、そちらは行き止まりですが・・・」
「おおーと、間違えた。こっちだわ」
アイナは回れ右をする。
この人大丈夫かな?
ちょっと、ポンコツ感あるぞ。
まあ、美少女だから、そこも可愛いけど。
とりあえず、着いていくことにした。
「ここが・・・えっと、広場よ!」
うん、見ればわかる。
スペイン階段のような場所だ。
中央にあるのが、噴水の代わりに像が建っている。
俺たちは階段に腰を下した。
ジェラートがないため、「階段にジェラート落としちゃいました」ってのはできない。
そもそも、スペイン階段ではジェラートを食べるのは禁止されている。
「あれが、初代聖女の像よ」
アイナが中央に佇む像を指す。
聖女の像は美しかった。
特に胸が美しい。
やはり、聖女と言えばお〇ぱいだ。
お〇ぱい聖女という言葉が生まれたくらいだ。
Eカップ以上あって、初めて聖女と呼べるのだ。
「アイナさん、ご趣味は?」
初対面の人と話すときは趣味を聞いたほうが良い。
合コンの話題は? とググったら「趣味を聞こう」と出てくる。
趣味を聞いて、そこで共通点を探し、次の会話につなげるテクニックだ。
俺はいつか来ると信じていた合コンのために、いくつものテクニックを調べておいたのだ。
まあ、使う機会はなかったがな。
あはははは。
自分で言ってて悲しくなる。
「うーん、趣味かー。あんまり考えたことないな。ルーク君は?」
「俺は・・・」
趣味ってなんだろう?
転生してから、趣味らしい趣味を持ってこなかった。
朝起きて、魔法の練習して、朝食取って、魔法の練習して、昼食取って、レイラと修行して、夕食取って寝る。
そんな生活をしてきた。
・・・修行しかしてなくね?
なんてことだああぁぁぁ!
俺の生活はいつからこんな味気ないものになった!?
「土魔法で遊ぶことです」
はたして、これを趣味だと言えるのだろうか。
「へー、すごいね! 土魔法見せて!」
おお、意外に反応は良かった。
よし、ここは腕の見せ所だ。
俺は右手に魔力を込めて、土を生成する。
そして、ゆっくりと土の形を変えていく。
緻密な魔力制御を加えながら、手のひらサイズの龍を作った。
イメージはド〇ゴンボールの神龍だ。
これが、10年以上魔法を使い続けてきた成果だ。
「わあ! すごいわ! ルーク君は天才ね」
吸い込まれそうな黒い瞳で見つめてくる。
そんな目で見られたら、惚れてまうやろ。
「こ、これ、あげます」
「ほんとに!? 嬉しい!」
アイナは宝物をもらったかのようにはしゃぐ。
そんなに喜んでくれるなら作った甲斐がある。
これ売ったらお金になるんじゃないか?
自分でいうのもなんだが、かなりのクオリティだと思う。
もう聖騎士辞めて、人形職人として生きていくのもありだな。
「器用なのね。それとも聖騎士はみんなこういうことができるの?」
「え、どうして聖騎士だと?」
「聖騎士の見習いバッチ付けてるじゃない」
ああ、確かにそうだ。
昨日、バッチ付けるように神に言われなければ、持ってこなかったな。
「どうして聖騎士になったの?」
アイナの質問におれは一瞬考える。
親が聖騎士だからか?
神に世界救うように言われたからか?
レイラが一緒だったからか?
どれも違う。
「聖騎士になる以外の道がなかったから、です」
結局、俺はその道しか選べなかったのだ。
「そう。私と一緒ね」
「一緒?」
「ううん、何でもない。それより、違う場所行きましょ」
そう言って、アイナは立ち上がった。




