第37話「試験が無事終わりました」
俺たちはセシリアに着いていくと、殺風景な部屋に通された。
実利を重んじるというか、ここでは仕事しかしませんというのか、無駄なものがない。
「適当に腰かけてくれ」
俺たちは促された通り、椅子に座る。
「まずは、おめでとう。君らは中級聖騎士だ」
「あ、あの! いいですか?」
「なんだ?」
「俺たちは、模擬戦に介入したのに、なぜ中級なんですか?」
騎士団と言ったら、規律とか重そうだ。
上官に逆らったら、すぐ処罰の対象になった日本軍ほどではないだろうが、ペナルティがあってもおかしくはない。
「うちは実力主義だからな。下級聖騎士にしておくにはもったいない、と判断しただけだ。実際、今回の試験では二人の実力は抜きん出ていいた。―――あまり嬉しそうではないな?」
そりゃあ、そうだ。
中級聖騎士ということは、それなりに責任がある。
そして、責任があるということは、過酷な任務に行かされるということだ。
強い魔人と戦うことにあんるのだろ。
嬉しいわけがない。
だが、そのことを素直に伝えることはしない。
「俺たちはルールを破りました。評価を下げられて当然のことをしたにも関わらず、中級聖騎士という評価に驚いだけです」
「殊勝な心掛けだ。ますます私の判断は正しかったな。さすがはマシューさんの息子というわけか」
「師匠のことをご存じなのですか!?」
レイラが身を乗り出して、質問する。
「ああ。マシューさんには随分と世話になった。私の憧れの人だ」
セシリアはどこか懐かしむように言った。
「おっと、昔話をするために、君らをここに呼んだんじゃないな」
そういうと、セシリアは引き出しの中を探り始めた。
「あった、あった。これを渡そう。ほれっ」
そう言って、バッチを投げてきた。
俺とレイラはそれぞれキャッチする。
「これはなんですか?」
「聖騎士としての証だ」
「え、今日から聖騎士ってことですか?」
「そんなわけないだろう。それは見習いバッチだ。正式に中級聖騎士に任命されるまでは見習い扱いだ」
「任命式があるってことですか?」
「ああ、そうだな。来月に行われる。そこで、君らも晴れて聖騎士だ。そうだった。泊まる場所ないだろう。今日から騎士館に泊まりなさい」
「騎士館とは?」
「騎士が寝泊まりするところだ。本来は、来月の式典が終わってからだが、君らのように遠くから来た者もいるからな。先に泊まれるようにしている」
それはありがたい。
一カ月も宿を取れるほど、お金に余裕はない。
かといって、一度村に戻るのも面倒だ。
馬車の旅は尻が痛くなるんだよ。
「式典まで何をすればいいのですか?」
「正式に騎士団に入団するまでは、フリーだ。何をやっても構わん。だが、くれぐれも羽目を外さないようにな。毎年この期間に馬鹿やらかして、入団を取り消されるものがいるからな」
つまり、この期間に問題を起こせば、聖騎士にならないで済むわけか。
と言っても、何かやれるわけでもないが。
前世では、小中高と真面目に通ってきたんだよ。
チキンハートなんだよ。
「騎士館までは私が案内してやる」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺とレイラは同時に感謝を口にした。
その後、騎士館まで行ったが、男子と女子は別々だった。
これで、レイラと二人きりのあの部屋とはおさらばか。
寂しい。
隣で眠るレイラは、もういないのか。
あの寝顔をもう二度と見れないと考えると、胸が締め付けられるような思いだ。
俺は案内された部屋に入る。
一人部屋のようだ。
とりあえず、ベッドに横たわり、目を閉じた。
■ ■ ■
「やあ、久しぶりだね」
神が出やがった。
何が久しぶりだ。
お前のせいで、聖騎士になっちゃったじゃねーか。
「おめでとう。これで君も英雄の道を上り始めたね」
そんなのは目指していない。
「あははは。頑なだね」
初志貫徹の男だからな。
「そうだね。童貞も貫いてるくらいだからね」
くっ・・・。
おい、お前、喧嘩売ってんのか?
大体、童貞の何が悪い。
「悪いとは言ってないよ」
そもそも童貞を守れないやつが、何を守れるって言うんだ。
「いいね、その無駄なプライド。その調子で魔人から人々を守ってくれよ」
うるせー。
それで、今回はどんな要件だ?
早く済ませてくれ。
「今回は君にありがたい話だ」
お前の言うありがたいが、本当にありがたかったことなんてないけどな。
「そう言わないでくれよ。今回は本当なんだ」
まるで狼少年だな。
「狼少年とは酷いな。僕はこんなに君のことを想っているのに」
その言葉がもう嘘くさいんだよ。
俺のことを考えてくれるなら、関わらないでくれ。
もしくは美少女を用意して、俺に童貞を捨てさせてくれ。
「君は童貞を守りたかったんじゃないの?」
捨てる勇気も必要だ。
「あははは。君は本当に面白いね」
笑うんじゃない。
「残念だけど、童貞を卒業できるかは君の努力次第だ」
くそっ。
正論だ。
言い返せない。
「だけど、美少女なら用意できるよ。それなら話を聞いてくれるかい?」
本当か?
「ああ、本当だ。僕を信じて」
まあ、話だけなら聞いてやる。
「ありがとう。君には、明日、聖都を散歩して欲しい」
・・・え、それだけ?
「そうだよ。ただし、一つ条件がある」
なんだ?
「12時に『飲み食い屋やっちゃん』を出て左にある路地裏にいて欲しいんだ」
なんか、裏がありそうだな。
「裏なんてないよ。ちゃんと美少女を用意してあげるからさ」
美少女とはお近づきになりたい。
だけど、こいつが言うことは信用できない。
「いいのかい? 君の運命の相手になるかもしれないんだ」
非常に迷うが、今回だけはお前の話に乗ろう。
「そうか。良かった。それと、聖騎士のバッチは持っていくんだよ」
ああ、わかったよ。




