第34話「医務室であれやこれやしてしまいました」
その後、コリンを医務室に運んだ。
レイラは次の試合相手を聞くために、試験会場に残っている。
俺の相手も聞いて、あとで伝えてくれるとのことだ。
あの場では、レイラがコリンを抱いて医務室に運ぶのが自然な流れだった。
しかし、俺はそれを止めた。
レイラが運ぶってことは、コリンがレイラの体にずっと触れるってことだ。
それは許さん。
ケガ人の振りして、レイラに触れていいのは俺だけだ。
ということで、俺がコリンを医務室まで運んだ。
コリンは思ったより軽くて運びやすかった。
「ごめん。・・・僕のせいで」
コリンは申し訳なさそうに謝る。
「謝ることなんてない。―――よく頑張ったな」
「僕はなにもできなかった・・・」
「俺が、変なこと言ったのが悪かった」
「そんなこないよ。ルーク君の言葉があったから頑張れた。そうでなきゃ、戦う前に逃げていた。頑張れなかった・・・でもやっぱり無理だね。僕なんかじゃ・・・」
そう言って、コリンは俯く。
うーん。
ダメだ。
こういうしみったれた雰囲気好きじゃないんだよ。
なんて声かければいいのかわからんし、慰めの言葉も苦手だ。
「そんな落ち込むなって」
ありふれた言葉しか思い浮かばない。
「ありがとう」
コリンは弱弱しく微笑む。
会話が成り立たない。
今、コミュニケーション能力を問われているのか?
何かを話さなければ。
何かを・・・って何を話せばいいんだああああああ!
「コリン。服を脱げ」
「え、なんでだよ」
俺にそういう趣味はないぞ。
コリンを治療してやろうって考えだ。
回復魔法を使うなら服がない方がいい。
それだけのことだ。
「良いから脱げ」
「い、嫌だよ」
「なんでだ? 男同士だ。気にすることでもないだろ」
コリンは頑なに脱ごうとしない。
なせだ?
そんなに見られたくないものでもあるのか?
まあ、こいつは妙に女っぽいところあるから、裸を見られるのが恥ずかしいと思ってるのだろうな。
「ルークってもしかして僕のこと・・・」
「もういい。無理やりにでも脱がすからな」
「え、ちょ、それはやめて!」
俺はコリンの服を掴み、脱がそうとした。
すると、ペチンと頬を叩かれた。
コリンはなぜか涙目だ。
「あんた、何やってんの?」
レイラが医務室に入ってきていた。
「あ、ああ。ちょっとな」
レイラはゴキブリを見るような目で俺を見ていた。
ちょっと、待て。
この状況だと、俺がコリンを襲ったみたいになるだろ。
さすがにそんなことはしないぞ。
いくら童貞歴が40年を超えようが、男に目覚めてはいない。
「最低ね。コリンが泣いているじゃない」
「いや、俺は回復魔法をかけようとしただけで」
「それで服を脱がそうと? 一回死んどけ」
男の服を脱がすのが、そんなに悪いことなのか?
なんだか会話がかみ合ってないような。
「コリン大丈夫だった?」
「う、うん、大丈夫」
「ごめんね。まさか、ルークがこんなにポンコツだとは知らなかったわ」
「そう、そうだね。僕もまさか男だと思われてたなんて」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て! まさか、コリンは女の子なのか!?」
「そうよ。どっからどう見たっても女の子じゃない」
いや、自分のこと「僕」というのは男だと思うだろうが。
ボクっ娘は2次元だけの存在だと思ってたわ。
でも、よく見れば確かに女の子に見える。
「あんまりジロジロみないでよ」
「お。おう。すまん」
やべぇ。
ってことは俺は少女の服を脱がそうとしていたのか。
それも体中傷ついて上手く動けない子の。
これはどこからどう見ても犯罪だ。
弁明の余地もない。
「はあ・・・。あんたがコリンを男だと思っているだろうって薄々気づいていたわ。別に害はないから放置してたけど」
「ご、ごめん。コリン、俺は本当に・・・」
「ううん。気にしてないよ。僕もそんな気がしてたから」
「・・・コリンが許すならあたしから言うことはないわ」
良かった。
社会的に死なずに済んだ。
「それより、次の対戦相手が決まったわよ」
「そ、そうか。それで?」
「あんたの対戦相手は、レビンスよ」
「予想通りだな」
レビンスが裏で手を引いたのだろう。
でなければ、ある程度受験者がいる中で、コリンとレビンスが戦うことはないだろう。
レビンスは次の標的を俺にしたわけだ。
「ルーク君。負けないで」
「あんたが負けるとは思ってないわ。ぶん殴ってきなさい」
「お、おう。任せろ」
当然、負ける気はしない。
一発ぶん殴ってやろう。




