第32話「コリンの戦い」
コリンはルークとレイラの試合を見て思った。
やっぱり自分は凡人なんだ、と。
聖騎士になるために、精一杯努力をしてきたつもりだった。
だが、その努力を軽々超えていく者たちがいることに、今更ながら気づいた。
だけど、それがどうしたって言うのだろうか。
最初から自分に才能がないことなど知っていた。
それを突き付けられたところで、大したことはない。
「よぉ、コリン。逃げずに来たことを褒めてやる」
目の前に立つのはレビンスだ。
コリンの格上の相手だ。
ルークやレイラなら、あるいは。
いや、今それを考えたところで意味はない。
「今日こそ君に勝たせてもらうよ」
「はっ、お前が俺に勝てるわけねーだろ」
レビンスは素行は悪くても実力は一流だ。
自分との力の差も理解している。
だけど、コリンは戦うと決めたのだ。
どうせ戦うなら、勝ちにいかなくてどうする。
試験官は、コリンとレビンスが所定の位置にいることを確かめると、「はじめ!」と言った。
コリンは合図とともに、レビンスのもとに動き出した。
コリンは純粋な剣士だ。
魔法は全く使えないが、身体強化は多少できる。
難易度が高いと言われる身体強化だ。
コリンは全ての魔法の練習時間を身体強化に費やした。
一切の魔法の取得を捨てたのにも関わらず、身体強化も中途半端なコリンは、周囲から出来損ないと言われるようになった。
「雷撃」
レビンスは直線的に走るコリンに向けて、魔法を放った。
コリンは体を屈めて避ける。
いくらレビンスが才能あると言っても、魔法使いとしては、だ。
距離を詰めれば、コリンにも勝機はある。
コリンは数々打ち出されるレビンスの魔法を避けていく。
「逃げばっかでかっこわりーなあ、おい。・・・だが、これならどうだ。―――雷よ、渦となりて敵を殲滅せよ」
レビンスは雷の渦を作り出す。
(あの魔法に当たったら、ただじゃ済まない)
コリンは直感的に感じる。
だが、渦は広範囲に広がっているため、避けようにも避けきれない。
コリンは魔力の循環速度を上げ、身体強化を強めた。
「あああああああああ!」
雷の渦がコリンの体を引き裂く。
想定以上の威力だ。
レビンスとの圧倒的な力の差は理解していたはずなのに。
コリンはその場で膝をつく。
「おいおい、もう終わりってことはないよな」
レビンスはコリンが動けないとみると、近づいてきた。
「・・・・」
「無視してんじゃねーぞ!」
レビンスはコリンを蹴りつけようとしてきた。
その瞬間、コリンは右手で握りしめていた木刀を横に振り切る。
「おっ、あぶねぇ」
レビンスは思わぬ反撃に、体制を崩す。
コリンは、それを見逃さず、すばやく立ち上がった。
「はああああああああ!」
レビンスに木刀を突き出した。
コリンには接近戦しかない。
このチャンスを逃したら、絶対に勝てない。
体がボロボロであろうと、ここしかないのだ。
満身創痍の体に鞭を打ち、木刀を握る手を強くする。
だが、その一撃は届かなかった。
代わりに、
「ガッ・・・!」
レビンスの拳がコリンの腹に入った。
「接近戦なら勝てると思ったか?」
レビンスはあざ笑う。
「俺とお前では格が違うんだよ」
レビンスはコリンの体を蹴りつける。
「がはっ・・・」
「俺が身体強化を使えないとでも考えたのか? お前のような凡人と一緒にしないでくれよ」
レビンスは攻撃の手を止めない。
殴る、蹴る、殴る、蹴る。
まるでサンドバッグのようにコリンを痛めつけた。
「くくく。無様だな。俺に勝つんじゃなかったのか? ―――顕現せよ、雷の槍」
レビンスは雷の槍を生成する。
それを、コリンにつき刺そうとした。




