第30話「チンピラって寂しがりやなんですかね」
「じゃあ、いつものあれしましょ」
ストレッチを終えたところで、レイラが提案してきた。
あれ、とはなんだ?
エロいことか?
あれをあれしてあれすることか。
あれってなんだよ。
レイラが言ったのは魔力循環のことだ。
すべての基礎は魔力循環にある。
俺たちはどんなときも魔力循環するように、マシューに教えられてきた。
飯食ってる時も寝てる時もオ〇ニーしてるときも、だ。
だが、今から行うのは、常に行っている魔力循環ではない。
通常の5倍の速度で体内に魔力を駆け巡らせるものだ。
そうすることで、体中が熱くなり、良いウォーミングアップになる。
俺たちは無言のまま、足を組み、瞑想のポーズに入る。
それを見たコリンが声をかけてきた。
「何するの?」
「魔力循環よ」
「え? 君たち魔力循環できるの!? すごいね」
「コリンもやらないか?」
「いや・・・。僕は見ておくよ」
コリンは自信なさげに言う。
見てても楽し者ではないが。
レイラの体が火照っていくのは、見てて楽しいかもしれん。
この発想は良くない。
完全に変態だ。
俺は目を閉じて、体内の魔力に意識を寄せる。
そして、魔力の循環スピードを徐々に上げていく。
それにつれて、体温が上昇する。
「ふー。こんなところか」
5分程度、魔力循環に集中した。
気温は20度を超えていないのに、俺たちは汗でびしょぬれになった。
まるで、「あれ」をしたあとみたいだ。
俺は「あれ」の経験がないから、「あれ」がどんなものかは知らないが。
「君たちってすごいんだね」
ずっと見ていたコリンは、キラキラした瞳で言った。
「最初は大変だったが、毎日やっていれば自然とできるようになる」
自分に才能があると思ったことはない。
隣に才能の塊みたいなやつがいるのだ。
天狗になんてなれねーよ。
「僕、急に場違いな気がしてきた」
コリンは自信なさげに俯いたときだ。
「場違いなんて、わかっていたことだろ。今更なこと言うなよ」
レビンスがどこからか現れ、コリンを馬鹿にし出した。
こいつ、寂しがり屋なのかな。
「迷惑よ。失せなさい」
レイラはぴしゃりと言った。
「迷惑? お前らみたいな弱いやつらが、ここに来てる方が迷惑じゃないか?」
「あんたは自分が強いと思ってるのかしら。おめでたい頭ね」
「なんだと!? ちょっと可愛いからって。いい気になるなよ!」
レビンスよ、君は一つ間違っている。
いや、一つどころじゃないけどさ。
レイラがちょっと可愛い?
そんなわけないだろ!
めちゃ可愛いだろ。
どこからどう見ても美少女だろーが。
「お前の目は節穴みたいだな」
俺はドーンとレビンスを指さす。
すると、レビンスが俺の胸倉をつかんできた。
「あん?」
「君たち! 喧嘩するなら帰りなさい!」
試験官らしき女性が注意してきた。
レビンスは俺を掴んでいた手を放し、試験官を睨む。
「誰に口聞いてんだ?」
「受験番号37番のレビンス君。あなたによ」
「試験官さんよ。親父に言って、あんたを解雇することもできるんだぜ?」
「なんでもかんでも自分の思い通りになると思わないで」
試験官、かっけー。
惚れました。
俺の童貞捧げてもいいですか?
「ちっ。・・・おい、てめぇら、模擬戦でぶっ殺してやるかな」
レビンスは、そう言って離れていった。
■ ■ ■
「あいつら、ぜってぇ、ぶっ殺してやる」
レビンスはいら立ちを隠さずに言った。
レビンスの父は神級の聖騎士であり、騎士団の中でもトップクラスの力を有している。
その権威を使えば、入団試験なんて簡単に操作できる。
だが、せこい真似をしなくても、レビンスの実力なら試験突破は余裕だ。
5大特性の中で最強と謳われる雷の魔法適正があり、それを自由自在に操れるのだ。
入団試験で落ちることは万に一つもないと確信している。
だから、入団試験の目的は受かることではない。
自分の力を知らしめる機会だ。
「そうだ! あいつら、公開処刑にしてやる!」
レビンスは父親に高く評価されている。
裏から手を引き、模擬戦の相手を操作することぐらい簡単だ。
「くくく。模擬戦が楽しみだな」
こちらの作品で初めて感想をいただきました!
感想を書いて下さった方、ありがとうございます!




