第28話「喧嘩は良くないのでやめましょう」
「何の用だよ」
コリンは金髪の少年を睨む。
「出来損ないのコリンにレビンス様が構ってやってるんだから、少しは喜べよ」
金髪の少年はレビンスというらしい。
チンピラみたいなやつだな。
「ちょっと、あんたね」
「あん。・・・ってなんだ、上玉じゃねーか」
レビンスはレイラの顔をじろじろと覗く。
「気持ち悪い視線向けないでくれる?」
「気が強い女は嫌いじゃないぜ。どうだ? こんな、しみったれたやつじゃなく、俺と飲まねーか」
「レイラは俺と飲んでいるんだ。邪魔しないでくれ」
「あ? なんだてめーは」
レビンスがガンを飛ばしてくる。
マシューの過酷な修行を経験した俺からすると、こんなの可愛いものだ。
「じゃあ、俺も混ぜてくれよ」
レビンスは俺の飲んでいたジョッキを持ち上げる。
「エールってのはな、こうやって飲むもんだ!」
そう言って、ジョッキを俺の頭の上で裏返した。
中身が半分以上あったため、エールでびしょ濡れになる。
「ハハハ! いい気味だ!」
「叩き潰してやる!」
レイラは腰に下げていた剣に触れる。
「やるか? 俺は女相手でも容赦しないぜ」
レビンスは完全に俺たちを見下している。
そんなに自分の腕に自信があるのだろうか。
レイラは、挑発を受けて、すっと立ち上がろうとする。
「レイラ、やめろ」
俺は静かに言った。
「どうした? かかって来ないのか?」
「俺は平和主義者なんだ」
喧嘩は極力したくない。
たかが、エールぶっ掛けられたぐらいだ。
ムカつくし、殴りたいが、暴力は振るわない。
「弱虫の間違えじゃないのか?」
「はあ? あんたなんて―――」
レイラが挑発を受け、剣の柄を掴んで立ち上がろうする。
「やめろ、レイラ! なんのために剣を渡されたか、思い出せ」
俺はレイラを袖を引っ張って座らせる。
レイラはマシューから剣を渡されている。
それは本来、俺が受け取るはずのものだ。
だが、俺は自分に剣の才能がないと言って断り、レイラに譲ったのだ。
そして、マシューは剣を渡す際に「これは人を守る剣だ」と言って渡した。
こんな、つまらない喧嘩に使っていいものではない。
「ごめんなさい」
レイラは冷静になったようだ。
「ふん、腰抜けども」
「腰抜けで結構。もう十分だろ」
「興が覚めたわ」
レビンスはそう言って去っていく。
「ごめん。僕のせいで、二人に迷惑かけて」
「別に構わん。それより、あいつはなんで偉そうなんだ?」
俺はエールでべたべたする髪を触りながら尋ねる。
「才能があり、父親も聖級騎士ということもあって、僕らの年代で誰も逆えないんだ。それで、あんなふうに」
「あんなやつが聖騎士に!? 許せないわ。もし模擬戦で当たったら叩き潰してやる」
レイラは怒りを込めて言った。
「それは難しいかな。レビンスの実力は中級聖騎士にも並ぶと言われてるから」
「例えそうだとしても、叩き潰す」
「レイラちゃんは、強いんだね」
レイラは天才だ。
なんたってマシューに「神級にもなれる才能」と評されたほどだ。
俺はどうかって?
なんも言われなかったぜ。
ははは。
俺は褒められて伸びるんだよ!
嘘でも才能あると言って欲しかった。




