第23話「レイラのことを可愛いと思いました」
目を覚ますと、見覚えのある白い天井があった。
自分の家だ。
俺は体を動かそうとしたが、「うっ」と足に痛みを感じる。
あんな無茶な戦いをしたんだ。
もう歩けなくなってもおかしくない。
そう思ったが、左足は筋肉痛のような痛みはあるものの、問題なく動かせた。
さらに、体中の傷も消えている。
これは、回復魔法を使って治してもらったのだろうか。
今回の怪我は治らないかもしれないと考えたが、回復魔法は想像以上に有能らしい。
カナリアかマシューに、回復魔法を施してもらったのだろう。
いやー、良かった。
8歳から松葉杖の生活はちょっときつい。
ゆっくり体を起こすと、右手にぬくもりを感じた。
そこにはレイラがいた。
え、なんでこいつ、いるの?
スヤスヤと眠る姿は可愛かった。
起きていなければ可愛いんだけどな。
いや、起きていても可愛いか。
レイラは美少女だ。
ちょっときつめの印象もあるが、寝ていれば穏やかな表情で、素直に可愛いと思える。
別に恋愛感情はないけど。
こちとら、精神年齢は30超えてんだ。
童貞だが、8歳児を恋愛対象と見るほど落ちぶれちゃいねーよ。
それにしても気持ちよさそうに寝てるよな。
俺は知らず知らずのうちに彼女の綺麗な赤髪を触ってみた。
さらさらしている。
そして、気持ちいい。
前世では女の子の髪を触る機会なんてなかったな。
そして、しばらく髪をなでているときだ。
「ん・・・んん」
レイラはゆっくりと目を覚ました。
「あれ? ・・・ルーク」
「お、おう」
やばいぞ、何か言われる。
他人の髪に、なに勝手に触ってのよ、変態! って罵られる。
うん。
それはそれで悪くないかも。
この思考こそ、まさに変態だ。
「・・・目を覚ましたのね」
「ごめん」
「なんで、謝るの?」
髪触ってたことがばれたわけではなさそうだ。
良かった。
ちょっと心臓がバクバクしてたんだ。
昔から、女の子とはそんなに関わってこなかった。
これだから、童貞臭いと言われるのだろう。
実際、童貞だが。
「ルークは何も悪くない」
そうか。
俺は悪くないのか。
じゃあ、もうちょっと髪撫でても許されるのか?
いや、冷静になれ。
そういうことではないだろう。
「・・・悪いのは全部あたしよ」
「なんのことだ?」
「あたしの身勝手であんたを危険な目に合わせた。あたしが、あたしが・・・」
レイラは弱々しく言う。
「ルークが、ユリウスが・・・死んじゃうかもって考えてると、どうしていいのかわからなくて・・・」
彼女の大きな目から涙がごぼれ落ちた。
そんな顔するなよ。
泣いてる女の子にどう対応していいのか、わからなくなるだろ。
「俺は大丈夫だから」
そう言って、安心させるように彼女の頭をポンポンと叩いた。
これくらいなら許されるだろう。
「それに、俺は自分のためにやっただけだ。レイラが気に病むことじゃない」
「助けに行くってあたしが言わなければ―――」
「どっちにしろ、助けに行っていた。レイラが何を言ったかなんて関係ない。自分の意思で助けに行ったんだ」
実際は神に強制されて、助けに行かされたのだが。
そこは今重要なことじゃない。
「・・・ごめんなさい」
「もう謝罪は聞き飽きたって。それに、なんでレイラの方が弱ってんだよ。ボロボロになったのは俺の方だろ?」
「・・・それも、そうね。・・・ルーク、ありがとう」
そう言ってレイラは小さく笑った。
寝てる時も可愛かったが、笑ってる顔はもっと可愛い。
今まで不機嫌な表情ばかり見てきたから、余計新鮮に感じる。
やっぱり、女の子は泣き顔より笑顔だ。
「ユリウスは無事か?」
「ええ。ピンピンしてるわ」
「それは良かった」
一応、ユリウスを助けにいくという目的は達せられたわけだ。
「・・・あたしはルークのことを誤解していたわ」
「誤解?」
「もっと自分のことしか考えない人だと思ってた。でも、命を張ってユリウスを救ってくれた。ルークこそ聖騎士になるべき人よ」
それこそ、誤解だ。
俺は自分のためでなければ、人助けなんてしない。
聖騎士にはまるで向いていない。
「ねえ、ルーク。あたしは決めたわ」
「何を?」
「あたしは―――」
レイラが何かを言おうとしたときだ。
部屋の扉がバンッと開かれた。




