第19話「柄にもなく、人助けをします」
森の中を探索し始めて20分くらい経った。
ストライムの花畑にも行ったが、ユリウスの姿はなかった。
俺たちの後を追いかけていたなら、この辺にいるはずだ。
そう予想を付けたが、中々見つけられない。
焦りだけが募っていく。
だが、ユリウスは死んでないことだけはわかる。
もし、彼が死んでたら俺は死んでいる。
まだ、俺が五体満足で動けているということは、きっとユリウスは無事なのだろう。
できれば、魔人に遭遇せずに彼を見つけたい。
もし、魔人と遭遇した場合でも、村まで逃げ切り、あとはカナリアに退治してもらえばいい。
逃げるのは恥だが、役に立つんだぜ。
必ずしも俺自身が戦う必要はない。
と、考えてるときだ。
「みぃつけた」
不気味な声が森の中に響いた。
嫌悪感を抱くような声だ。
俺はとっさに声がした方向を向く。
遠くには、魔人がいた。
魔人は口をぱっくりと開きながら少年に接近していた。
俺は腕に魔力を込め、「石弾!!」と言って、魔法をぶっ放した。
石が魔人の顔に直撃する。
「よし・・・!」
ほとんど反射で攻撃したため、当たるかはわからなかったので、運がよかった。
最悪、ユリウスに当たっていたかもしれない。
もし当たってても、威力は抑えたし、問題なかっただろう。
「アアアアァァァァ!」
魔人は恐ろしい咆哮を上げながら、俺の方に走り出してきた。
なんだよ、あの叫び声。
まんま化け物じゃねーかよ。
恐ろしくて、小便ちびったわ。
次は大きい方を漏らすぞ、ごらぁ。
そんなことも思いながらも、ユリウスから意識を逸らさせるため、石弾を続けて数発放つ。
当たっても、ほとんどダメージはないだろう。
ただのけん制だが、効果はあった。
魔人が完全に俺をターゲットを変えたようだ。
それを確認した俺は、来た道を引き返すために、体を反転させた。
内心ガクガクの状態で、俺はなんとか走り出す。
村まで逃げれば、カナリアがいる。
大丈夫。
距離も道のりもしっかり把握している。
逃げ切れるはずだ。
俺は足に魔力を込め、部分的身体強化を最大限使いながら走り続ける。
何度か、後ろを見つつ、魔人がついてきていることを確認する。
これで、ユリウスのところに戻っていたら、元も子もない。
そして、しばらくリアル鬼ごっこをしていたときだ。
「ウラアアアアアアア!!」
魔人が奇声を上げた。
そして、その直後―――ドンッという鈍い音がし、猛烈な痛みが左足を襲った。
魔人に石を投げられたのだ。
石が当たった左足がぐしゃりとつぶれていた。
「うわあああああ!!!」
俺はその場に倒れみ、潰れた足を抱え込む。
痛い、痛い、痛い、痛い、ひたすらに痛い。
そして、痛みに打ちまわっているうちに、魔人が近くまで来ていた。
「ごろ、じてやる」
魔人は片言で話し、右腕を振り上げる。
俺はとっさに体を横にずらした。
同時に、「土壁!」と言って、魔人との間に壁を作る。
何もやらないよりはマシだろう。
少し転がるだけだと思いきや、そこはちょうど傾斜だった。
「うああああああ」
そのまま下へ転がり落ちる。
「グハッ・・・」
しばらく転がった先で、強い衝撃に襲われた。
周囲を見渡すと、森の中でぽっかりと開けた空間にいた。
ここは、・・・ストライムの花畑だ。
目に魔力を込めると、辺り一帯は白い花畑が写り込む。
「ハア・・・ハア・・・」
左足の痛みは強くなるばかりだ。
神様はRPGに例えていたが、いきなりハードモードだろ。
最初に戦う相手はスライムかゴブリンぐらいにしてくれよ。
「・・・ごろしてやる」
転がり落ちたことで、運よく逃げられることを期待したのだが、現実はそんなに甘くない。
ほんとに嫌になるよな。
もうこの足では逃げ切れそうにない。
「・・・」
なぜ、魔人は向かってこない。
ストライム畑の外からこちらを睨みつけるばかりで、一向に花畑に踏み入れようとしない。
もしかして、こいつストライムが苦手なのだろうか。
幻想的な花だとは思っていたが、魔人を引き付けない効果もあったのか。
なんと、俺は九死に一生を得たようだった。




