第17話「男には頑張らなきゃいけないときがあるようです」
俺は森に行くため、村を囲っている柵まできた。
この柵を超えれば、村の外だ。
高さ2メートルほどあり、普通に飛んだら飛び越えられないが、身体強化が使えれば、柵を超えるのは簡単だ。
門には村の男が外に出ることを禁止しているため、ここからしか、外に出られない。
本音を言えば、この状況になっても行きたくない。
魔人は怖いし、自分の命が大事だ。
ホラー映画だって最後まで見切れない小心者なんだよ。
ちゃちゃっと行って終わらせよう。
俺は気合いを入れて、柵を飛び越えようとしたときだ。
「そこで何しているの?」
振り向くとカナリアがいた。
「母さん。・・・どうしてここに?」
「それは私のセリフ。―――柵に近づく気配を感じたから来てみたのよ」
「何かの魔法?」
「そうよ。さすがに私の魔力で村全体に魔法をかけられないから、仕方なく魔石を使ったわ。本当は使いたくはないのだけど」
そういって、袖から透明の石を取り出す。
カナリアが村を守るため、村に結界を張るって言ってたのはそのことか。
「レイラちゃんの家にいるように伝えたはずよ」
「いやー。あははは」
「まさか、一人で森に行くつもりじゃないでしょうね」
「・・・」
そのまさかだよ。
俺だって行かなくていいなら行かない。
「どんな理由で村を抜け出そうとしているのかは、想像がつくわ。ユリウス君を助けるためでしょ。だからこそ言います。やめなさい。ルークの実力では死ぬだけだわ」
そんなにはっきり言わないで。
怖くなるから。
逃げたくなるから。
「無理だとわかっていても、やらなくちゃいけないんだ」
どっちにしても、死ぬなら抗って死にたい。
せめて、童貞を捨ててからが良いけど。
「その正義感・・・ルークは、お父さんに似たのね。でも、ここで行かせるわけにはいきません」
俺のことを思うなら行かせてくれ。
神に殺されるんだ。
と言っても信じてもらえないだろうな。
最初から、カナリアが止めに来る可能性も考えていた。
だから、
「レイラ!!!」
と、叫ぶと同時に足に魔力を込めた。
カナリアは俺に向かって動き出そうとする。
しかし、その瞬間、茂みからレイラが現れる。
そして、レイラはカナリアの腰に抱き着いた。
「あなた・・・! レイラちゃん!?」
「ルーク! 行って!」
カナリアが驚いている間に、俺は身体強化した足で思いっきり地面を蹴った。
「うわっ・・・!」
柵は超えれたものの、少し飛びすぎてしまった。
俺は足に魔力を込めたまま、衝撃に備える。
ドサッという音とともに上手く着地することに成功した。
「ルーク! 帰ってきなさい!」
カナリアは叫ぶが、すでに俺は柵の外だ。
「母さん。ごめん」
俺はカナリアに向け、つぶやく。
そして、森を見た。
異様な雰囲気を放っている。
夕方の森に何度か訪れたことがあるが、もっと穏やかだ。
普段であれば、綺麗とさえ思う。
しかし、今は不気味なものしか感じない。
怖気づきそうになる。
だが、行くしかない。
俺は魔人がいる森へと足を踏み入れた。




