第15話「村まで逃げ切りました」
無事、村にたどり着くことができた。
「ルーク! レイラちゃん!」
俺たちに気づいたカナリアがこちらに向かって走り出す。
「二人とも。無事でよかった・・・」
カナリアは近くまで来ると、俺たちを抱きしめた。
まじで怖かった。
今でも心臓がバクバクだ。
見た目は、バイ〇ハザードのボスキャラだ。
追いかけられる恐怖は半端なものではない。
話には何度も聞いていたが、魔人は本当に恐ろしい存在だった。
人とは決して交わることがないものだと、あの姿を見て感じた。
手が汗でびしょびしょに濡れている。
「母さん・・・。魔人が現れて」
「わかってるわ。村の人たちには緊急事態として、不用意に家から出ないように勧告しているところよ。ルークはレイラちゃんの家に行きなさい」
「母さんは?」
「魔人の襲撃に備えて、村に結界を張っておくわ」
■ ■ ■
俺たちはレイラの家に向かった。
レイラの家に着くと、
「レイラ! ルーク君!」
と、村長が駆けつけてきた。
どうやら、家の外で待っていたらしい。
「お父さん。ただいま」
「無事で本当に良かった。・・・ユリウスはどこにいる?」
「・・・知らない」
「お姉ちゃんの後を追うって、そう言って出ていったが・・・」
それを聞いたレイラは、「まさか」と口に手を当てる。
「あたしたちを追いかけて森に・・・」
レイラは逡巡したあと、踵を返した。
「おい! レイラ! どこに行くんだよ」
俺はレイラの手を掴んだ。
「どこに? そんなの当たり前でしょ。森に行くのよ」
「何を馬鹿なことを!」
「ちょっと待ってくれ。ユリウスはまだ森の中なのか? 一緒ではなかったのか?」
村長は慌てたように口をはさむ。
「一緒じゃないわ」
「・・・そんな」
村長はその場に崩れる。
「あたしのせいよ! だから、あたしが助けに行かなきゃ!」
「お前のせいじゃない。それに無理だ! 見ただろ。俺たちが敵う相手じゃない」
「じゃあ、何? ユリウスを見殺しにしろって? ―――冗談じゃないわ」
レイラは俺の手を振り払って、走り始めた。
「レイラ!」
俺は彼女の後を追う。
こいつはほんとにわかっているのか?
俺たちのような子供が魔人と戦えるわけがない。
なるほど、聖騎士は尊敬されるだろう。
化け物と戦って人々を守っているのだから、彼らは英雄だ。
だが、英雄ではない俺たちは黙っていることしかできないのだ。
レイラに追いつき、腕を掴んだ。
「母さんに任せよう」
彼女はこちらを振り向かずに言う。
「カナリアさんはここを守るので精一杯よ」。
子供一人を助けに行っている間に村が襲撃されたら、元の子もない。
少女一人の命と村の全員の命。
どっちが重いかと問われれば、迷わず後者と答えるだろう。
「じゃあ、父さんが帰ってくるのを待って―――」
「いつ帰ってくるの? それまでにあの子の命は保証できるの?」
「それは・・・。だからと言ってお前を行かせるわけにはいかない」
目が合った瞬間の寒気は時間が経った今でも覚えている。
転生し冒険者になって、魔物を倒すといったWeb小説を読んできた
だが、自分が似たような立場になってわかった。
無謀だ。
冒険者はリスクがあるが、リターンも大きい。
だけど、自分の命を掛けられる人間なんてごく一部だ。
凡人には荷が重い。
「あたしは行くわ」
レイラは俺の手を払いのけようとする。
と、そのときだった。
「・・・うっ」
急激に眠気にさらわれ、俺はその場で膝をついた。




