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第14話「ストライムの花畑に来ました」

 森に入ってから30分近く経過した。


「着いたぞ」


 森の中、ぽっかりと開けた場所に到着した。


 そこは高い木がないため、日の光が降り注いでいる。


 地面には草花も生えておらず、森の中にいることを考えると、特殊ない空間だとわかる。


「何もないわよ」


「魔力を目に集中させるんだ」


「なんで?」


「とにかくやってみろ」


「わかったわ・・・。え? なにこれ?」


 一面に咲き乱れる白い花。


 彼女からすれば、それらが突然現れたように見えるだろう。


「こいつはな。ストライムという花でな、魔力越しでないと見えないようになってるんだ」


「すごく・・・綺麗」


 しばらく彼女は目の前の花畑に見惚れていた。


「いい所だろ」


「・・・そうね」


「俺はこの景色が好きだ」


 この村で生活して感じたことがある。


 自然に囲まれる生活はいいものだな、と。


 前世の都会での生活は不便ではないが、多少息が詰まる思いがしていた。


 ビルやコンクリート、人で埋め尽くされた環境だ。


 窮屈に感じるのも仕方ない。


 この世界に転生し、父さんにこの景色を見せてもらっときは心が軽くなった気がした。


「レイラが村を出たい気持ちを否定するわけじゃないが、案外この村も悪くないと思う」


「ええ・・・」


 俺も他の村に行ったことがないため、比較することはできない。


 マシューから聞くところ、聖都は華やかでこの村よりも随分と便利だそうだ。


 とは言うものの、俺が暮らしていた日本と比べると、高が知れている。


 黙って、花畑を見つめていたレイラは突然、俺の袖を引っ張った。


「・・・ねえ、ルーク。あれは何?」


「ん? ・・・どこだ?」


「ほら、あそこよ」


 俺はレイラの指の方向を見た。


「あれは・・・人?」


 黒い塊がゆらゆらと動いてるように見える。


 距離が離れているため、しっかりと確認できない。


 俺は目に魔力を込め、循環させた。


 こうすることで視力が良くなり、遠くまで見れるようになる。


 部分的身体強化だ。


 ・・・なんだ、あれは?


 人の形をしている。


 だが、あれは人ではない。


 禍々しい黒い瘴気を纏わている。


 瘴気を纏わせている生き物は―――魔人しかいない。


「・・・レイラ。静かに聞いてくれ」


 彼女は魔人の存在には気づいていない。


 だが、黒い塊がよくないものだと感づいているようだ。


 俺は努めて冷静な声で言った。


「あれは、魔人だ」


「ま、魔人!?」


「しっ、声が大きい。気づかれる」


 俺は自分の口に人差し指を当てる。


「どうして魔人がここに・・・?」


「最近出てなかったからと言って、ずっと出続けないわけじゃない」


 人間は今まであったことが当然明日もあるものだと信じる生き物だ。


 そんな保障はどこにもないのに。


「村まで逃げるぞ」


「ええ・・・」


 レイラは緊張したように頷く。


 幸い、魔人には気づかれていない。


 距離がある状態で、運よく先に見つけることができた。


 魔人から視線を外さずに、ゆっくりと後退する。


 だが、レイラはその場から動けないでいた。


「レイラ?」


「ご、ごめんなさい。・・・行きましょ」


 と、次の瞬間。


 ゾクリと背筋が凍るような感覚に襲われた。


 魔人はこちらに顔を向けてニヤッと笑ったのだ。


 大丈夫だ。


 この距離なら村まで逃げ切れる。


 俺はレイラの手を握り、一目散に走り出した。

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