第13話「森に行ってきます」
マシューが聖都に行ってから10日が過ぎた。
今日か明日には帰ってくるだろう。
「ははは! 帰ったぞ! 元気にしてたか!」
と、暑苦しい感じで来るに違いない。
この10日間は特にトラブルもなかった。
しいていうなら、レイラが家に来なかったぐらいだ。
「今日もレイラちゃん来ないわね」
「父さんがいないし、来る意味はないんだろ」
実際、レイラはマシューに稽古をつけてもらうために来てるのだ。
「寂しいわね。たまにはルークから会いに行きなさい」
いや、俺も特に用ないんだけど。
ていうか、ちょっと嫌われているし。
生理的に無理とか思われていたらどうしよう。
女の子に生理的無理と言われると、おじさん傷ついちゃうぞ。
「女の子は男の子が会いに来るのを待ってるの」
いや、母さん。
俺たちそういう関係じゃないから。
と、言ったものの、なんだかんだカナリアに押し切られた。
しぶしぶ、レイラの家までいく。
「レーイーラ―、あーそーぼー」
「気持ち悪い」
一蹴された。
そんな蔑む目で見つめないで。
変な属性に芽生えちゃうじゃないか。
俺をドエム変態ロリコン野郎にしないでくれ。
「ごめん、ごめん。暇だったからレイラ何してるかなと思って」
「稽古してたの」
「邪魔だったか?」
「ちょうど終わったところよ。・・・カナリアさんに言われてきたんでしょ」
「え、なんでわかった?」
「あんたが一人で来る理由なんてそのぐらいでしょ」
その通りなんだが、まさか言い当てられるとは。
彼女は勘が鋭いようだ。
俺の場合、もし異性が訪ねてきたら、「この子、俺に気があるんじゃないか」と思って惚れてしまう。
「それで、今からどうするの? もちろんプランがあるんでしょうね」
「いや、ないよ」
「はあ!? 何しに来たのよ」
「レイラに会いに来たんだよ」
キリっとした表情でかっこつけて言っておく。
どうだ、かっこいいだろ。
「帰るわ」
「冗談だって! ごめん、ごめん。プラン考えてるって! 森に行こーぜ」
村の子供の遊びと言ったら、森に行くのが定番だ。
前世と違って娯楽がない。
い〇の、野球しよーぜが、レイラ、森行こーぜになるのだ。
「わかったわ。行きましょ」
■ ■ ■
村は柵で囲われている。
魔人対策だ。
実際、魔人が本気出せば柵なんてあってもないようなものだが、一定の効果はあるようだ。
そして、柵の外に出ると、森が広がっている。
森に危険がないわけではないが、ここ最近、魔人が現れていない。
そのため、子供でも昼間なら森に行くのが許されている。
俺はレイラを連れて森に入った。
「レイラはどうして、聖騎士になりたいんだ?」
「なによ、唐突に。・・・聖騎士になりたいなんて言った?」
「いや、態度を見ればわかるって。なりたいんだろ」
聖騎士は憧れの職業であるが、実際聖騎士になれる人はあまりに少ない。
というか、この世界の人たちは大抵が親の職を継ぎ、一生を過ごす。
アイドルや野球選手になりたいが、それが無理だと諦めてサラリーマンになるのと似ている気がする。
だから、聖騎士に憧れようが、本気で目指す人は少ない。
しかし、レイラは本気で聖騎士になりたいように見えた。
「ええ、なりたいわよ」
「どうして? 村長の娘なんだから、この村で不自由なく暮らしていけるだろうに」
村の良い男と結婚すれば、それなりに充実した生活を送れるはずだ。
聖騎士という危険な職業よりも、よっぽど安定している。
俺がレイラの立場だったら間違いなく、村に残ることを選ぶ。
可愛い奥さんを捕まえて、一生ラブラブするのだ。
「それが嫌なのよ。ずっとこの村で生きていくのは嫌」
「十分幸せだと思うけど」
「あんたはそういう人よね」
どういう人だ?
童貞みたいな人と言うことか?
いや、それはさすがに被害妄想だろう。
「まだ若いんだ。ゆっくり考えるといい」
おじさんからのアドバイスだ。
年長者の意見は貴重だぞ。
「何言ってんの。あんたも同じ歳でしょ」
そうだった。
見た目は子供、頭脳はおっさん、その名もルーク・ウォーカーだ。




