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第12話「父さんが聖都に行くらしいです」

 レイラが家に来るようになってから、しばらく経った。


 彼女は稽古にしか興味がないらしい。


 家に来て挨拶を済ませると、すぐにマシューとともに庭に行く。


 そうして、1カ月くらい過ぎると、俺とレイラで模擬戦をやるようになった。


 結果は、俺の惨敗。


 近距離では勝負にならなかった。


 レイラは剣術の才能があるだけでなく、身体強化も使えた。


 「硬化」で体を守っていても、体中あざだけらけにされる。


 嫌だわ。


 こんな体じゃあ、お婿にいけない。


 冗談は置いといて、実際問題、俺は彼女との実力差を感じていた。


 だから、距離を取り、魔法を放つ戦い方―――名付けて「逃げるは恥だが、役に立つ」戦法を取ることにした。


 どこで聞いたことある名前だって?


 そんなことは気にするな。


 レイラは魔法が使えないため、距離を詰めてくる。


 いかに相手との間合いを確保するかという戦いの胆だ。


「正々堂々と戦え!」


 とレイラは言われるものの、そもそも魔法使い(37歳童貞)からすれば、剣士と近距離で戦うのは無謀だ。


 それをわかっているマシューは「はっはっは。元気だな!」と言って止めようとしない。


 レイラの一撃は日に日に鋭くなっており、冗談なしで戦闘不能になる。


 多少の傷であれば、魔法で治せてしまうのだが、痛いのは勘弁して欲しい。


 そんな感じで充実していると言っていいのかよくわからない日常を過ごしていたときだ。


「聖都に行ってくる」


 マシューは普段は着ない騎士の服を着ている。


 彼は年に一度、聖騎士としての活動報告をするため、10日程度村を離れる。


 その間の村の守護はカナリアが行う。


 元聖騎士である母さんは、下位魔人なら一人で倒せてしまう。


 ちなみに魔人には上位魔人と下位魔人がいる。


 もちろん、上位の方が強い。


 上位か下位の見分け方は、人と見た目が似ているかや、人の言葉を流暢に操っているか、らしい。


 要は人と似ていれば、上位魔人ということだ。


 さらに厳密な区分もあるらしいが、そこまでは知らない。


 人と似ていると言っても、上位魔人が人に成りすまして生活することはほとんどないとのことだ。


 魔人は人の生活圏を嫌う特徴がある。


 生理的に無理ということだろう。


 そういうことだから、魔人による被害の大半は人気のないところで起きる。


 特に危険なのが町から町への移動だ。


 移動中に失踪したと言ったら十中八九魔人の仕業と言われている。


 本当に危険な世界だ。


 家から出たくない。


 インターネットが欲しい。


 インターネットがあれば家から一歩も出ないで娯楽にありつけたのに。


 仕事だってインターネットを介して行っていた。


 食料や服もネット上で注文すれば届くのだから、非常に便利な世の中だった。


 なんだかんだ前世は恵まれていたと感じる。


「俺がいない間、カナリアとレイラを頼むぞ!」


 男に生まれたからには女性を守ることが務めだ。


 マシューは常日頃、そう言ってきた。


 いつもだったら「母さんを頼むぞ」だが、今回はレイラもいる。


 二人とも俺に守られるほどヤワじゃないと思うが。


「わかった。任せて」


「おう、任せたぞ!」


「ふふ、頼りにしてるわ」


 マシューは俺の頭をポンと叩いた。


「行ってくる!」


 彼はそう言って、出かけて行った。

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