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幼馴染が転校してきました。


 そうして、月曜日の朝になります。私は私の私服に身を包んだ雄くんに一撃を入れた後、雲母ちゃんが起きました。


「あれ、なんで……雄が……っ!!?」

「大丈夫です。すでに仕留めました」

「そ、そう」


 すでに部屋のゴミと化した雄くんに布団をかぶせて私たちは着替え始めます。

 昨日の内に制服はライトノベルと共にこちらに非難させていたのでなんなく着替えます。

 今日からまた学校が始まるのできちんとした制服を着なければいけません。

 私はもちろん、雲母ちゃんも制服に身を包み……


「それにしても、雄。優奈の服をなんで無理やり切るかなぁ」

「本当ですよ。サイズが合うわけ……」


 雄くんはなぜか私の私服を着こなしていました。

 私の私服に身を包みながら胸のボタンを2つほど外して男を誘惑する感じになっています。

 というか、それ以外はぴったしなんですか。おっぱいをそれほど誇りたいのですか。なんだか腹立たしいです。

 なんとなく、蹴りの一撃をお見舞いしておいて「ぐごっ!?」変な声が聞こえましたが気にしません。


「ん~~。よし、目が覚めた。食堂行こうよ」

「そうですね」


 倒れた雄くんを置いて私たちは食堂に向かい、食事を手早く済ませると学校に向かいました。

 部屋に戻ると雄くんはすでに目を覚ましたのが丁寧に布団が折りたたまれています。


「はあ、雄くんも男のまんまで来ればいいんですが……」

「多分、体育の時間が違うから女のままで来るんじゃない?」

「でしょうね」


 聖地虞狼(セイントグロウ高校は共学の私立校です。

 ただ、普通の学校とは違い男子と女子でしっかりと分けられています。

 いささか男子の数は少ないために女子校と間違えられることもありますがしっかりと2クラスほど男子だけのクラスがあります。

 全8クラスの中で2クラスが男子のみ。そして、人数は20人程度です。

 その中に雄くんが紛れ込むのだと昨日は思っていたのですが、恐らくは……


「はい。今日から同じクラスメイトになる――――」

「初めまして。あかつき ゆうです。優奈、お姉ちゃんの双子の妹なのでよろしくです」


 何食わぬ顔で私と同じクラスに配属されています。


「知っている子も知らない子も仲良くしてあげてくださいね。暁えーと、妹さん?」

「雄と呼び捨てでいいです」

「じゃあ、雄さんは暁さんの隣でお願いします」

「はい。先生」


 本当に猫をかぶるのがうまいです。


「これで隣同士だね」

「……仕組んだくせに」

「ばれたか」


 ぺろっと舌を出して子供がいたずらをばれたような仕草をします。いえ、この場合は小悪魔のような……。

 それにしても、ふと思いますが本当に雄くんは同年代でしょうか?

 あまりにも幼いような気が……。


「暁さん? 妹さんが気になるのはわかりますが授業に集中してください」

「あ、はい。すみません……」


 じっーと見つめていると先生から注意を受けました。

 さすがに授業に集中しなければいけませんね。

 そして、先生の授業はつつがなく進み昼休みになりました。

 授業の片づけをしていると一足先に終えた雄くんが私の席までやってきます。


「授業は普通だね」

「普通って、ここ一応レベル高いですよ?」

「そうなんだ。その辺が僕は勉強不足だね」


 勉強不足とは……私としてはしっかり聞いておかなければいけないのですが……。

 と、そんなことを考えていると横から声をかけられます。


「あの、暁さん」

「「はい?」」

「あっ、えっと、その……」


 ? ああ、なるほどこれは私ではないですね。


「私たち二人は名前で呼んでもらって構いません」

「そうだね。優奈ちゃんの言う通りだ」

「あ、えっと、ありがとうございます。それで、雄さんなんですが――――」


 雄さんとクラスメイトは呼んだ。4月になってまで顔と名前が一致していないが知らない仲ではない。

 だけど、その人が雄くんの名前を呼ぶことに私は少しだけ心がちくりっと痛んだ。

 私はどうして――――。


「本当に妹さんですか?」


 悩んでいる場合ではなかった。

 転校初日にして雄くんの大ピンチが訪れた。

 なんということだ。やはり見た目は女の子になってもそういうのは――。


「ちょっと、失礼よ」


 と、教室に入ってきたのは雲母ちゃんです。

 私がどうやって言い訳をしようかと考えていると助け舟を出してくれました。


「あなたは、武井さんですか。なにか知っているのですか?」

「はあ……遠慮なしね。いいわ。答えてあげるからしっかりと質問してくれる?」


 ……。あ、わかりました。ここまでの会話でようやく雲母ちゃんが遠慮なしといった理由。それは――。


「優奈さんと雄さんは本当に血のつながった姉妹ですか?」


 それです。このクラスメイトはそのことが聞きたかっただけです。

 危ないところでした。もう少しで余計なことを言うところでした。

 

 雲母ちゃんはいらつきを隠さずにだけど、丁寧にそのことを説明してクラスメイトを追っ払いました。


「まったく、マナーっていうものを知らないのも度があるわよ」

「ありがとう。雲母ちゃん」

「優奈も次からああいうのがいたら無理に答えなくていいからね? あんた、根っこは優しいんだから今みたいな嘘つくの苦手でしょ?」

「うっ、ご忠告ありがとうです」

「どういたしまして。ほら、食堂行くわよ」


 私と雄くんの手を引っ張って雲母ちゃんは強引に教室から脱出します。

 背後からブツブツと声が聞こえてきますが雲母ちゃんは気にせずに連れ出してくれました。




「ったく、あいつらももう少しマナーってやつを」

「まあまあ、もういいじゃないですか」

「優奈がそういうなら、引っ込むけどさぁ」


 そういいながらも学食のうどんをすすりながら器用に雲母ちゃんは先ほどのことを怒りを鎮めてくれます。

 私のためにそこまで怒ってくれるのはうれしいですがちょっぴり今後、雲母ちゃんがターゲットにされるのではないかと不安になります。

 何か別の話題はないかと雄くんに視線を変えると買ってきたパンを二つ見つめて動いて、いえ、食べてませんでした。


「雄くん? 食べないと昼休みが終わりますよ」

「そうよ。そういう系なら雄も食べれるでしょ?」


 2人して雄くんに食べることを勧めます。

 この二日間で一緒に食事をしていたから食べずにじっと見つめているのは異常に見えて仕方ないです。

 雄くんは困ったような顔を浮かべて、こっちに質問してきました。


「昼ごはんって、給食じゃないの?」

「「は?」」

「ほら、クラスまで持ってきてくれて、机を合わせて……違う?」

「給食って、ああそうですね」


 雄くんが何で食事に手を付けないのか。ようやくわかりました。異世界に行っていたからこういうことにはうといみたいです。


「優奈? わかったの」

「はい。雄くん、今の私たちはそれはありません。学食と言ってこういうところで食べたり、弁当やパンで教室で食べるのが普通なんですよ」

「…………そっか。うん。わかったよ」


 雄くんは残念そうにパンを見つめ、何かを振り切るようにやぶいて口にします。

 多分、雄くんの中ではまだみんなで一緒に食べる給食を考えていたのでしょう。

 ですけど、私たちはもう高校生です。時折、恋しくはなりますがあれは子供が食べるものです。

 そう、私は自分にも言い聞かせて食事を終えました。




 食事を終えた私たちは残りの時間を教室で過ごそうと考えて、歩いています。

 途中、雲母ちゃんは電話がかかってきて別行動をとっており、雄くんと二人で歩いているのですが……。


「あれが、暁さんの妹さん……」

「血はつながってないらしいわよ」

「すっげーかわいいな」

「やめておけ。あの暁家だぞ? 高嶺の花に決まっている」


 誰かとすれ違う度にそういうつぶやきを耳にしてしまいます。

 まあ、こういうのは噂にならない方がおかしいですから大目に見ましょう。

 

(そういえば、あとどのくらいで昼休みが終わるのでしょうか?)


 ふと、気づいた私はポケットに手を突っ込んでスマホを取り出そうとしたときに「あっ」と声をあげてました。


「どうしたの?」

「あっ、いえ、その……そういえばスマホを落として……」

「優奈ちゃん!!」

「へっ?」


 ぐいっと左腕を引っ張られて雄くんの後ろに回ります。

 廊下にいる全員の注目を集めながらも雄くんはなにかを威嚇するように構えています。

 その雄くんの視線の先にいたのは……。


「やあ、君が暁、優奈さんだね」

「えーと、あなたは……保健科学の三国先生?」


 この学校の教師でした。基本的に保健室に従事している先生の1人で1年生の科学を担当しているはずです。

 白衣を身に纏い、一般受けしそうな優しそうな人柄の女子からの人気も高いイケメンです。

 そんな先生が一体私に何の用があるのでしょう。


「ありがとう。覚えてくれてるんだね。2年生は担当じゃなかったから嬉しいよ」

「あの、なにか?」


 私は、早めに話題を切り上げることに専念した。だって、さっきから雄くんが三国先生にとびかかりそうな雰囲気を醸し出している。

 そんな中で三国先生は気にも留めずに懐から見覚えのあるスマホを取り出した。


「落とし物だよ」

「あっ、それは私のスマホ」


 人差し指を親指で掴み、スマホを横に振って見せつけられる。

 どこからどう見ても私のスマホであって、でも……おかしいです。

 確かあのスマホを落としたのはあの――――。


「はい。もう忘れたらだめだよ」

「えっと。ありがと――――」


 考え込む間もなく、三国先生は一歩踏み込んで思わず伸ばした手の上にスマホを乗せようとした。

 その時だった。


「触れるなっ!!」


 バシッ! と雄くんが三国先生の腕をつかみこんで遮られた。

 私を守るように一歩前へ出た雄くんは敵意むき出しの目で三国先生を見つめている。

 そして、三国先生の様子はというと納得したような、それでて満足そうな微笑みを浮かべていた。


「へぇ、いいボディガードを連れているね。三日前の彼にどことなく似ている……」

「三日、前……あ!!」


 そこで私はようやく気が付く。

 三日前。落としたスマホ。雄くんの存在を知っている。

 そう……その三つを知っているのは私と雄くん。そのほかにもう1人だけいた。

 それが――――。


「ようやく気が付いた? 先日はすまない。君を――――殺しに来たよ」


 私を殺そうした暗殺者だった。


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