幼馴染が私の部屋に泊まろうとして……やばい。
食後のティーを楽しんでいる時にふと思いました。
「雄くんて何号室ですか?」
「へっ?」
雄くんは食後のコーヒーをわずかに揺らして動揺します。
おかしなことを聞いたでしょうか?
「一応、この寮に住んでるんでしょう」
「うん。相部屋だけどね」
「相部屋……ならなおさら。部屋の番号くらい知っておかないと」
同居の人に雄くんが男だってことを伝えておかないと……いえ、なんでしょう。この男、普通に女子と生活するつもりですか。
ことと次第によって、暁家の権力を使うことも想定して……。
「優奈……それ、マジで言ってる?」
「え?」
雲母ちゃんが信じられないものを見る目で問いかけてきます。
ですが、私には一体何が間違っているのかわからず、首をかしげます。
雲母ちゃんはため息をつき。チラッと雄くんに目線を配ると口を開きます。
「はぁ、雄はそんなことも言ってないのか。優奈と同じだよ」
「おなじ?」
「同じ部屋だよ。503号室だよ」
オナジヘヤ……503号室? なるほど、503号室ですか。
私の記憶ではそこでは暁 優奈と言う人物が住んでおり、昨日から非日常の世界へ……。
うん。そこは私の部屋ですね。
「はあぁぁぁぁぁ!?」
「ちょ! 声が大きい!!」
「しーっ」と向かいの雲母ちゃんが身を乗り出して私の口をふさぎます。
しかし、それだけで大声が止まるわけもなく、周りの視線を集めてしまい私たち二人は席を立ち、すみませんすみませんと平謝りをして座り直ります。
「え! マジですか!?」
「マジ、マジ。大マジ」
「え!? じゃあ、朝から雄くんが「ただいまー」って言ったのも」
「そのままの意味じゃない」
「気づいてなかったんだ」
2人とも呆れたという視線を私に向けます。
そんなの気づけるわけ……いえ、冷静に考えてみればこういう展開はよくあることです。
ですけど、実際起きるとなると……。
「それじゃあ、昨日は……」
「うん。床で寝てたよ。朝、いなかったのは打ち合わせに行ってたから」
恐らく今の私の顔は真っ赤っ赤です。
顔面どころか全身が燃え上がるように熱いのを感じ、私は雄くんと距離をとろうと横にスライド移動します。
多分、ええ、大丈夫なはずです。
「で、どうするの? 優奈」
「どうするって……なにを」
「いや、このまま本当に男と泊まり続けるのかってこと。事情が事情だし、私の部屋にきてもいいよ」
手元にあるティーを軽く揺らしながら誘ってくれます。
確かに、よくよく考えてみるとこのまま一緒に泊まり続ける必要はありませんね。
「お願いします」
「りょうかい。じゃ、雄は優奈の部屋で寝泊まりしなさいよ」
「……まあ、わかったよ」
あれ? 案外あっさりと食い下がりましたね。
雄くんはまた間に合わないとか言って一緒に泊まるかと思ったのですが……。
まあ、これで寝るところの問題は……
「って、雄くんは私の部屋に泊まるんですか!?」
「まあ、そうなるね」
「正確には住むじゃないの?」
「そんな細かいことはいいのです! え!? 雄くんは他に寝ると来ないのですか!??」
雄くんは言われて、腕を組み始めます。
「う~んう~ん」とうなるように考え込んで――――。
「ないね。優奈ちゃんの部屋に泊まる以外に居場所はないよ」
「え、え~~」
はっきりと言い切りました。
まずいです。このままでの趣味のライトノベルが割と過激な表紙が多いことに気付かれてしまいます。
一応は紙の文庫カバーを付けているのまだばれていないはず……ええ、そう祈ることしかできませんが大丈夫なはずです。
同じ女子の友達のばれるなら構いませんが男の雄くんにばれるのはクるものがあります。
「優奈ちゃん? なんだか、鬼気迫るものを感じるだけど」
「おかしいな。寒気がする」
ばれないためにはどうすればいいか……考えろ。考えるのです優奈。
絶対にばれさせないためにはどうすればいいかを……。
その時、私に天啓が舞い降りました。
雄くんにライトノベルの趣味をばれる心配がなくなる完璧な手段。
それは――――。
「それでは、お泊りの準備してきますね」
「「へっ?」」
2人とも不意を突かれたように間抜けの声を漏らします。
これは、いけます!
「優奈。別に同じ寮なんだから準備ってほどでもないんじゃない?」
「いえ、雲母ちゃん。乙女的にその発言はダメです。女子同士でも化粧品の違いやプライバシーの問題があります」
「え、でも、優奈はそういうのあまり気にして……」
「プライバシーの問題です!」
「あっ、はい」
勝った。これで雲母ちゃんからの文句はないです。
あとは……。
「僕はあんまりわからないけど、何を持っていくの? 手伝うよ」
やはり、この発言が出ましたか。
ですが問題ないです。その雄くんの優しさを踏みにじりますが乙女として大切なものを先に守ります。
「雄くん。悪いですけどこれは女の子の問題なので必要ないです」
「でも、荷物持ちくらいは――――」
「雄くん? 嫌いになりますよ」
「…………ご、ごめんなさい」
この言葉に雄くんはそれ以上の追及はありませんでした。
「一体何がだめだったんだろう」「優奈ってなにかあったかしら?」とのつぶやきが聞こえます。
ほんのちょっぴり、罪悪感はありますが……まあ、はい。
やった後でですが、やりすぎた感は否めません。
(また今度、2人にはなにかおごることにしましょう)
そう考えて、私は先に食堂から出て荷物の整理、もといライトノベルの避難を始めました。




