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幼馴染が精霊石について説明してくれます。


 紅茶を一口で飲み終わるとカチャンと雄くんは音を鳴らしておきました。

 その音から察するにここからはまじめな話ですね。


「優奈ちゃん。君は現在、命を狙われているんだ」

「命を……それは、私の家が」


 頭の中に暁家のことがよぎります。

 【暁家】それは世界有数の大貴族です。それゆえに幼い頃から両親から外に出ることを制限されることも少なくはありませんでした。

 だから、今回も……。 


「違うよ。君自身の力が問題視されてる」

「私の? でも、私は何も持っていませんよ」


 学校の成績が中よりの上なだけで後はいたって普通の学生のはずです。

 家柄抜きでは命を狙われることなんて……せいぜいライトノベルを買いあさるのが趣味なだけのはずなのに。


「実はね。僕たちの、いやこの場合は異世界って言ったらわかりやすいかな。異世界の力である【精霊石】と優奈ちゃんがかかわることが問題なんだ」

「待ってください。私はその精霊石を持っていません。そんなものは――」

「いや、持っているよ。だって、人なら、生き物なら絶対に一つは持っているものだから」


 そういって、雄くんは私の胸を指さします。

 一瞬、セクハラっと頭によぎりましたけど今はまじめな話です。

 胸。おっぱい……いえ、それよりももっと根本的なものです。人の、生き物なら絶対に一つ。


「まさか、心臓?」

「そう、僕たちの異世界の【精霊石】はこの世界はでは心臓と呼ばれているんだ」

「え、でも……」

「見てて」


 雄くんは握りこぶしを自身の左胸に手を当てるとぼわっと赤く光りました。

 そして、こぶしをゆっくりと開くとそこには、赤い色の宝石みたいな石が握られていました。

 

「その力が覚醒すると精霊石は自由に取り出すことができてその人自身の力になる。こんな風にね」


 説明をしながら、器用に精霊石を握ったまま手甲を自身の手に装着すると私から少し距離を置いて、両手を引き締めて叫びました。


「『ワイヴァーン!』」

「っ!!」


 叫ぶと同時に雄くんの体がうっすらと膜を張るように発光します。

 ゆらゆらと火の粉が舞い散り、粉雪のように地面に触れては消え失せます。

 その中でも赤鬼の手甲は燃えるように赤く光り輝き、私はそれに見惚れてしまいます。

 すっと構えをとくとじわっロウソクが消えるように雄くんの体が元に戻ります。


「まあ、こんな感じかな」

「す、すごいですね」

「本来、精霊石の力を使うと擬人の姿で現れる。だけど、僕はまだ未熟だから精霊石の姿はないんだ。だから、正しい言い方をすると属性石っていう呼び方もあるけど、精霊石と呼び方は統一しているよ」

「そうなんですか。あ、思い出しました。私を襲い掛かってきたあの人も属性石では……」

「いや、それは違うね。あれは返答が返ってきていた。多分だけど、精霊石だね」


 言われてみると確かにあの時、変な声が聞こえた。あれが、精霊石の声らしい。


「話は戻すけど、優奈ちゃんの力だけど……」

「比べ物にならないぐらいすごいのですか?」

「そうなんだ。この世界で精霊石を使うためにある特殊な石を使うんだ。いわゆる覚醒石と言われている。貴重品でそれこそ一般には出回ったりしないし、関わらなかったら一生、手にすることがないんだ」

「待ってください。さっきからその説明だと私の、その精霊石の力はわからなくないですか?」


 精霊石の説明によると私のいるこの世界で覚醒石に触れなければ力を確認することができない。

 そして、恐らくだけど私はその覚醒石に触れたことがない。だとしたら、私はなぜ私の力を問題視され命を狙われているのかがわからない。


「それは――予言の力を持つ精霊石が優奈ちゃんの力を予言したんだ」

「予言の精霊石……」

「そうなんだ。そして、予言通りなら優奈ちゃんは死者を蘇らせることができるかもしれない」

「え……」


 まさか、その力って……。

 ふと頭によぎるのは雄くんのこと。一度死んで、蘇った。


「まだ実証していないし、優奈ちゃんは覚醒石に触っていない。でも、それが本当なら優奈ちゃんはとてつもない力を手に入れることになるんだ」

「死者……蘇生能力」


 ドクンッドクンッと心臓が高鳴るのを感じます。

 死者蘇生。それは死んだ人が蘇る現象。

 愛する人。尊敬する人……大切な人。

 誰でも生き帰ってほしい人がいます。喉から出るほどその力を欲し、手に入れることは不可能だとされています。

 だけど、私はその力を持っていて、そして――――。


「もしかして……雄くんが蘇ったのは……」

「それは違うよ。僕が生きているのは全く別の要因なんだ」

「だけど……」

「安心して、優奈ちゃん。君はまだ覚醒石に触れていない。それだけは絶対に間違いない」


 ぎゅっと震える私の手を雄くんが握ります。

 気づいてませんでしたが私の頬には涙が流れ、うまく声が出ません。


「うっ、うっ……雄くん」

「…………」


 それは自分が知らない力を持つ不安からか。それとも、雄くんが生き返ったのは自分のせいではないという安心感からか……。

 私は自身の感情を抑えられずに雄くんの前でしばらく泣いていました。


 それから数十分後。落ち着いた私はゆっくりと紅茶を飲み、味がわかるまで回復しました。

 その間、雄くんは背中をさすってくれたり、泣き終わった後は水で浸したタオルで目を張れないようにケアしてくれたりしてくれました。


「突然でごめんね。こんな話をして」

「ううん。大丈夫です」


 雄くんは悪くないです。私が勝手に思い込んで、勝手にほっとしただけの話です。

 それでも、雄くんは私のことを心配してくれます。


「とにかく、優奈ちゃんの力は悪用しようと思えばいくらでも悪用できる。だから、世界中の組織が君を暗殺しようとしている」

「あの、そこが気になるんですが、そういう力を普通は取りいえようと思ったり保護するんじゃないですか? ほら、大切な人を生き返らせるとか」

「優奈ちゃん。確かにそういう考えはある。誰だって最初は考えることだ。でもね、世界はそう簡単じゃないんだ」

「簡単じゃない?」


 雄くんの言っていることがいまいちわかりません。


「優奈ちゃん。君が生き返らせた人を何度も殺すことができるとしたら……どう思う?」

「何度も殺す……まさか!!」

「そう、何度も身内の死を繰り返すことだってできて、すべて優奈ちゃんの思いのまま……人の生死が繰り返される」

「そ、それは……」


 私は想像してしまう。雄くんが、雲母ちゃんが早苗が私以外の人に意のままに操られる。 

 そんなことが起きたら私はどうなってしまうだろう。

 殺さないように懇願? 服従してしまうだろうか。

 もしくは――――


「そんな力は……誰だって望まない。だから、優奈ちゃん。世界中の人が君を狙っている」

「…………」


 理屈はわかりました。理由も理解します。

 でも、その結論なら一つの疑問が浮かびます。


「じゃあ、雄くんは私を殺さないのですか?」

「殺さない。絶対に君を守るよ」


 まっすぐとした迷いのない瞳で見つめてきます。

 その言葉に嘘偽りはないでしょう。疑う必要もないです。

 けど、私は……どうしても信じることができませんでした。


 目をそらし、少しだけ後ずさってしまいます。

 その時、雄くんの手が私に向けて伸ばしそうになり寸前のところでやめたのが目に入ります。

 こういう時、雄くんの優しさには感謝しかありません。だって、今伸ばされたら振りほどいてしまいそうですから……。


「今は……今は我慢するよ。だけど、僕は優奈ちゃんに信用してもらうまで絶対にあきらめないよ」

「……ありがとうございます」


 それから私たちの間に沈黙の時間が過ぎていきました……。


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