幼馴染は朝早くから私の部屋を訪ねてきます。
日曜日の朝。少し重い体を起こすために部屋に設置されているシャワー室で汗を流します。
冷たいひんやりとした水が徐々にお湯に代わっていくのが気持ちいいです。
シャワーを止め、用意しておいたバスタオルで体をふきます。
そういえば、服を用意するのを忘れていました。
まあ、いいです。1人部屋ですから何の問題も……
「あれ? 優奈ちゃん。どこいるのー?」
「っ!!?」
扉の取っ手を持ったその時、外から声が聞こえました。
この声は……雄くん!?
どうして、私の部屋にいるのかと叫びそうになりましたが、思い出しました。
昨日、私が倒れたのを介抱してくれたのは雄くんです。
そのまま部屋にいても問題は……
(いや、普通は帰りますよね? でも……雄くんだし。いるほうが当然ですね)
自分の考えが間違っていたことに気付きます。
これはどちらかというと部屋をよく確認しなかった私の方が悪いですね。
少し反省。そして、これからどうしましょうか。
「……気配はある。でも、どこだ?」
雄くんが私の気配を感知しているみたいです。
さすがは異世界帰り。その手のことはできるみたいです。
と、先手を打たなくては。
「雄くん! 今、シャワー室にいるので出て行ってください!!」
「へ、あ、うん。わかったよ」
そうです。これでいいのです。何も考える必要なんてなかったですね。
雄くんは言われたとおりに外に出て行ったのか。ガチャッと扉の開く音が聞こえて、私も安心してシャワー室から出ました。
雄くんのためにも早めに着替えを終わらせなくてはいけません。すぐにお気に入りの下着と部屋着を身につけて鏡で全身チェックします。
(よし、髪は……雄くんを中に入れてからでもいいですね)
服が濡れますが別に気にしません。むしろ、昔みたいに乾かしてもらうのも……
(って! 私は何を考えて!?)
頭がゆだっているのか。雄くんといえでも、男の人に身を任せすぎです。
急いで、タオルを髪に当てその上からドライヤーで手早く、乾かせます。
軽く薄化粧をし、前髪が気になってきました。
(ああもう! どうしてこんな時に……!!)
「優奈ちゃーん。まだー?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
なんだかドアを突き破ってきそうな気配を感じて先んじて雄くんを中に入れます。
「あ、よかった。無事だったんだね」
「無事って、大丈夫ですよ」
笑顔で私の無事を心配してくれる雄くんですが、手には昨日、いや一昨日の夜に見た真紅の手甲を身に着けていました。
「もう少しでぶち破るところだったよ」
「それは、絶対にやめてくださいね」
「うん。わかった」
うなづく雄くんですけど、信用できません。これからも注意が必要ですね。
心の中でため息をついて雄くんを中に招き入れました。
「ただいまー」
「お帰りなさ……い?」
まあ、間違いではないですね。ちょっと気になりますけど。
部屋に招き入れ、とりあえず私は紅茶の準備を始めます。
テーブルについた雄くんは手慣れた様子で手甲を外しています。
そういえば……。
「雄くん。その手甲はなんですか?」
「これ?」
雄くんが私に見せやすいようにひょいと持ち上げてくれました。
4枚の革、いや、鉄ですか? まさに戦国武将がつけていたころのやつを思い出します。
赤い色は血の色とは違い、鮮やかに光を反射します。
うっすらと見える傷跡から使い込まれたものという風格を感じました。
「これは精霊石の力を引き出せる赤鬼の手甲だよ」
「……そういえば、精霊石とかあれはなんですか? 異世界の力ですか?」
「そうだね。思えば、優奈ちゃんの状況もわかってみたいだし、一から説明するよ」
「??」
いまいち、雄くんの言っていることがわからにですけど、説明してくれるみたいです。
淹れたての紅茶を一口飲んで、雄くんの話を聞きましょうか。




