128兆2943億8576万3742年と98日間生きてるからねー
「えーでは!リオル・クライシスのよくわかる(かもしれない)魔法、スキル、能力解説ぅ、イェーイ」
リオルが残像を残しながら1秒間に10回以上の速度で手を叩きながら言う。
グリムはシーーーっと人差し指を口に当ててやる。「いきなり何さ」とグリムは周囲を見ながら言った。
2人がいるのは最近出るようになった山賊の赤い絶望のアジトだった。
その中でリオルは一切警戒せず、むしろ山賊を呼ぶかのように大きな音を立てる。
「ねーねーグリム君、君は魔法とスキルと能力の違いって知ってる?」
「いや知らないですけど、今話すことですか?というか話すとしてももうちょと静かに話してください。山賊が来る」
「ダージョブ、能力使ってるから『消音』ね、僕を中心に半径3メートルの範囲の音を消す能力」
リオルは「ここで少し待っててね」と言ってグリムから離れてから、足を振り上げて振り下ろす。
すると、振り下ろされた地面に蜘蛛の巣のようなひび割れが、何の音もせずに生まれた。
確かになんの音もしなかった。
リオルはグリムの方へと戻って、それじゃあ話すよと言った。
「能力は魔力を使わずに使える物のこと。
使うほど使える幅は広がる」
そう言ってリオルは指を擦る
すると一瞬だけ火花が散った。
もう一度擦ると初級魔法レベルの火の玉が出た。
「こんな感じだよー。
次ね、スキルは魔力を使って使う能力みたいなもの、ちなみにスキルも使えば使うほどレベルが上がるのさ。
でも僕は能力しか使えないから、スキルも魔法も使えないんだよねぇ」
そう言って、ガッカリと言うふうに肩を落としてため息をつく。
すごくわざとらしかった。
「魔法は魔力を使った攻撃のこと、
水、土、雷、火、これが魔法の基本属性。
これが一つでも使えなかったら魔法は使えないと思った方がいいよ。
次、白、黒、闇、光、陽、陰これが基本的応用属性。
これも使えば使うほど強い魔法が使えるようになるんだよ。
でもこの魔法は最初からかなり強いから、これ以上強くするのもむずいよ。
取得方法は、魔法は才能が必要で、スキルは根性が必要で、能力は運が必要なんだ」
ちなみに僕には才能も根性もなく努力もしないぜ。
いらない告白だ。
「魔法は才能がなくても少しなら使えるし。
ただし使える人は、だけど。
スキルは、たとえば自動回復なら怪我をそのまま放置してればいい。
痛いしなんだしで、大体の人が聖魔法使いに治してもらってるけど。
でも能力は生まれた時に持ってなければもう取ることは出来ないんだよ。
だから僕はラッキーなんだ。
オーケー?」
「そーなんだ。じゃあお兄さんは運がいいだけなんだね」
「あはは、そうだねー、でもなんだか毒を感じた気がするよー」
そう言ってリオルが涙を拭うようにする。
もちろん涙は浮かんでいない。
「あぁそうだ。それにお兄さんじゃないんだよー、もう128兆2943億8576万3742年と98日間生きてるからねー、もうおじいちゃんなんだよー」
「えっ」
グリムは驚きの声を出す。
そして何かを言おうとした瞬間を見計らったように、談笑しながら3人の男が近くの扉から出てきた。
やばい。隠れなきゃ!
グリムが近くの岩陰に隠れようとした時、
「だいじょーぶだいじょーぶ」
と、リオルが言った。
「もしかして、消音以外の能力も使ってるの?」
「えっ、使ってないよ」
「えっ」
ケラケラ笑いながら言うリオルを、責めるような目でグリムは見る。
リオルはグリムを見ていて気づいていないが、山賊が3人とも武器を構えてじりじり近づいてきているのにグリムは気づいていた。
「大丈夫なんですよね」
グリムが不安そうにリオルに訊く。
リオルはグリムにニッコリと人好きする笑顔を浮かべた。
「さぁ?知らなーい」
「アンタなんか死んじまえ!」
グリムが叫んで、山賊とは逆方向に走り出した。
「はあ、めんど〜だな」
自然とため息が出る。
本当にめんどくさい。
ちょとした憂さ晴らしに地面に転がってるモノを蹴る。
さっきちょと血管を切って失血させて気絶させた男。
血管をすぐに縫ったから死んではいないはず。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん。
「殺さないで、敵を倒すってほんとめんど」
さっきだってうっかり殺しかけたからなぁ、糸でなんとか血管を繋ぎ直したけど、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に死んでないよな?
とりあえず、なんてめんどくさい仕事押し付けてくるんだあいつは。
アジトに入る前にリオルが言っていた。
「ねー、僕弱いからさ、敵が来たらあっという間にやられちゃうの、だから君が足止めしてくれないかなぁ」
リオルが捨てられた犬のような顔で言って来て、殺してやろうかと思ったが、グリムが見ていたしやめた。
「なんでですか?」
「えーだって僕より君の方が強いじゃん」
しゃあしゃあと抜かしやがる。
ふざけんな。
確かにそうだけど。
でも、
「私の方がグリム君を守れます。絶対」
「そうかもねぇ、でもいいじゃん」
ねぇ
ゾッ、とする。
意味が分からない。
なんでだ。
なんでだ。
なんでこんなやつなんかに私が気圧される?
リーダーでもないのに。
「わかった」
はあ、
なんでだ。
憂さ晴らしに、今出てきた5人を壊すことにする。
「ボス敵です」
「・・・・・・・・・・・・へぇ、分かった」
ボスと呼ばれた人が、私を抱きしめていた腕の力を緩める。
その敵がグリムだったらいいなと思うけど、グリムだったらすぐに倒されちゃう。
「どんな人?」
ボスと呼ばれた人が訊く。
「えーと、1人が化け物です。すごい糸使いです。たぶんなんらかのスキルか能力持ちです。
もう1人は防御が硬すぎます。崩せません。
もう1人は」
ドン、と
1人、男の子が腕を後ろで縛られて牢屋に入って来た。
「捕まえました」
「グリム!」
「アリス!」
グリムが身体を動かして私に近づいてくる。
ボスと呼ばれていた人が私を離す。
それにも気づかずにグリムに駆け寄る。
「グリム!グリム!大丈夫⁈怪我は⁈」
「僕は大丈夫だよ。アリスは大丈夫⁈」
そう言って、グリムが膝立ちで私とボスという人の間に立ち塞がる。
「絶対、守るから」
「ははっかっけー、俺が女だったら惚れちまうわ」
グリムの言葉にボスさんが応える。
その言葉の意味がよく分からない。
女の子でしょう?
「いやいや、別に男でも男に惚れちゃってもいいんだぜ?」
声が聞こえてきた。
全員が声の方を見る。
そこには、
生首がコロン、と、転がっていた。
叫んだのは子供2人だけで、他の人は奇妙なものを見る眼でそれを見ていた。
誰も動けないでいると、
「なんだこいつ」「化け物じゃねぇか!」「なんで死なねーんだよ」
そう言う男達の声と供に腕、脚胴、そして内臓がふわふわと漂ってきて、生首の下に集まってきて身体ができてきた。
腕と胴体にしがみついてついてきた男たちも腕を離して、再生が始まる。
そして、リオル・クライシスは立ち上がった。
「さぁ、負けの決まってる戦いを始めようぜ」
もしくは、
「交渉しよーぜ」
そう言ってリオルは人好きのする笑顔を浮かべた。




