安心しないでね
「で、逃したと」
「いや、逃したんじゃなくて送っバッ!」
リオルは身体を切り裂かれる。
もう20回以上は殺されてる。
リオルの言い分をカミスは一切聞かない。
「あなたに喋る権利は無い」
カミスが静かに言う。
表情は呆れを通り越して怒りと化していた。
もともと怒りだったのかもしれないが。
「ちょっとはヂョブ
喋ったリオルをまた殺す。
ちなみに今のは、ちょっとはちょうだいよと言おうとしていたのだ。
プラス1。
リオルが生き返った後、男の子が呻き、頭を振って意識を覚醒させる。
男の子は少し不思議そうな顔をしてからキョロキョロと周りを見てリオル達を見、
「アリス!」
と、叫んび立ち上がる。
先ほどよりも早く周りを見て、いかにも慌てている様子だった。
だが、リオルは人の気持ちを理解したとしても、そんなの意味ないでしょーと言いながら無視する人なので、言ってしまう。
「やあこんにちわ〜、グリムくん。安心しないで、アリスちゃんはちゃんと連れ去られたから」
「えっ、そんな!」
グリム少年は驚き、身を乗り出す。
どう言うことだと、掴みかかろうとしてくるグリムの手をリオルは避ける。
「グリムくん、安心して、このゴミクズ以下の男は私が責任を持って、苦痛を与え続けるから」
「それはやめてくれないかなぁ、痛いきらぁい」
はぁ?
「カミスさん怖いです!」
リオルが、カミスのふざけんなよクズやろう殺すぞというような「はぁ?」に震えている間に、グリムは立ち上がっていた
その表情は青ざめていたが、のろのろと歩き出していた。
「どーしたの?どこ行くつもり?」
リオルが先程の震えはどこに行ったと言うような、いつもと変わらない軽薄な口調で訊く。
「アリスを、助けるんだ、行かないと」
「どこにいるか知ってるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
リオルの質問にグリムは力無く首を横に振ってから、手を握りしめて、
「ならアンタならどこにあるか知ってんのかよ!」
「知ってるよ」
グリムの激昂を一切気に留めず、リオルはケロッと言う。
その言葉にグリムは目を見開いて驚くが、リオルはこともなげに
「知らなかったら送ってあげられないじゃん」
と、言う。
「じゃあ、行こうか。君はアリスちゃんを助けに、僕は赤い絶望退治と、黄の宝玉をもらいに」
リオルが言って、腕を前に出し、手を開くと目の前の空間に穴が開いた。
穴は少しづつ広がっていき、やがて人が10人でも簡単に通れそうな大きさになった。
『接続機関』
さっき賊を送った能力とは別の能力だ。
グリムは怖がりながら歩き、覚悟を決めて穴に入り、洞窟の入り口に立った
怖い
怖い
怖い
ひたすら体を丸めて、身体を縮めて、見つからないように、バレないように、傷つけられないように、苦しまないように、悲しまないように、
心を閉ざして、
自分を無くして、
そうしていたけど、
あの子に会って、話も合って、仲良くなって、心を開いて、自分を取り戻して、
好きになって。
なんでもない日にプレゼントをもらって、
今日はあの子の誕生日で、お返しにプレザントを上げたくて、外に出て、
怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖い外に出て、
何も買えないうちに追われた。
捕まった。
少し、諦めた。
でも、あの子から離れたくなかったし、心配させたくなかったから暴れた。
でも、ダメだった。
今私は牢屋にいる。
閉じ込められた。
体を丸めて座っていると「ボス、チース」と牢屋にの前にいる男が言った。
ボス、どんな人なんだろう。
痛くないといいな。
苦しくないといいな。
辛くないといいな。
ガチャン
と、鍵が開く音がした。
「おいお嬢ちゃん、顔上げろ。それじゃ顔が見えねぇだろ」
私は顔を上げた。
命令されたからじゃなくて、声が女性のものだったから。
そこにいたのはやっぱり女性で、美人というよりかは可愛いと思ってしまう容姿だった。
でも美人と言ってもいいような人だった。
身長は私よりも少し大きいくらいで、よく写真に写ってるような女の人だった。そして子供のような顔をしていた。
だがその顔には、子供には似合わない残虐な笑みを浮かべていた。
それはとても大人っぽくも見えた。
だがそれも消えて、今度は欲しいものが貰えた子供のような笑顔になって、
「かあああぁわいいいぃぃぃぃぃ」
破顔して言った。
私も少しは人の嘘がわかるが、これは
本心だ。
正直ちょっと可愛いと思ってしまう笑顔だ。
でも、彼女は悪い人だ。警戒しなくちゃ。
それにあの表情はみたことがある
怖い。
「あぁ可愛い、可愛いよぉえっとアリスちゃんだったっけ?ほんとーに可愛いなぁほんとーに」
抱きたいよ。
ああそうだそれだ。
やられたことは無いけど、やられた人を見たことはある。
気持ち悪かった。
でもあれは男女じゃなき出来ないんじゃ。
考えているうちに頭の上に彼女の手が乗る、
身体が跳ねる。
怖い。
身体が震える。
たすけて、たすけて、たすけて。
「んな震えんなよ、俺はお前みたいな子供は殺さねーよ、
酷いことも、痛いことも、辛いことも、何もしねえ
ただお前の持ってる石が欲しい」
石?
なんの石?
「それを渡せば、私は、帰れるの?」
自分の声がとても震えていた。
「ああそうだ、俺は嘘はつかない、まぁ女子供限定だけどな」
そう言って、彼女はにやっと笑いながら私の頭を撫でる。その手は優しかったが、気は抜けない。
「どんな石?私が持ってる石なの?」
「そーだ、お前の持ってるあの、太陽にすかすと黄色い光りを出す石だ」
あれか。
あの石か。
いやだ。
渡したくない。
グリムからもらったものだ。
絶対渡したくない。
「その顔は渡したくないって顔だな、いいぜ、気が変わるまでいろよ。衣食住は保証する」
んじゃな。
と、女性は最後まで男口調を崩さなかった。
この牢屋の中でのはじめての食事は、今まで食べたことのないものだった。




