人の嫌がる嘘はつかない
「嘘は馬鹿馬鹿しいですよ」
「ンン?どうゆうことだね?」
ニヤニヤと、明らかにわかっているのに、笑いながらリオルは訊く。
リオルのその態度にカミスは少しイラッとしながらも、何も言わずにため息だけついて言う。
「奪うつもりもないくせに奪うなんて言わないでくださいね」
カミスの怒り混じりの声を聞いてもリオルは一切態度を変えず、
「ありゃ、ばれたかー」
そう言ってリオルは手を頭に乗せ、ぺろっと舌を出す。
「で、どうするんですか。あの子」
チッ、と舌打ちしてからカミスが訊く。
「なにもしない」
リオルはニヤッと笑って言って、親指と人差し指で円を作って、円を覗く。
視えたのは、逃げていた女の子が男達に襟を掴まれ捕まっているところだった。
女の子は泣きながら必死に暴れてる。
やっぱり子供って元気だなぁ
リオルは呟いた。
カミスの眉がピクッと動いたことには気づかない。
『感知』 音の反射を身体で感じ、どこになにがあるが、なにを話しているかが分かる能力。使用。
「おい、あんま乱暴にすんなー、ボスに殺されるぞ」
「わーってますよー、でもこいつ暴れるんすよ、殴って気絶させてイイっすか?」
真剣な表情で男の一人が言う。
女の子は今も必死に抵抗している。
だが10歳そこそこの子供の力に負けるような賊では無く、女の子にポカポカ殴られながらもあーだこーだ話しながら結局、
両手を1人、両脚を1人
賊が掴んで2人がかりで運ぶというものだった。
「・・・・・・・・・・・・なんでこんな運びかたなんだよ」
両手を掴んでいる男が、周りの男には聞こえない声で呟いた。
いやもうほんとそのとおり。
なんでそんな面倒な運び方してんのさ。
僕が辟易していると「本当にイイんですか?」と、カミスが訊いてくる。
「んー?どーゆーことー?」
「自覚してるくせに、わざわざ言わせます?」
呆れたような、軽蔑したような顔をしてカミスが言った。
「まぁ良いですよ」
きっつう。
「あのさ、そんな諦めたような顔しないで、僕泣いちゃいそう」
「捨てられた子犬みたいな顔されても」
はあ、と
カミスはため息をついて、表情を変えないまま、
「なんでですか?」
訊いてくる。
「なーにがぁ」
「分かってること聞かないで下さい、なんで女の子助けないんですか?」
「あぁそのことか」
リオルは軽く言って言った。
「だって、めんどーなんだも」
ビシャ、と
地面に血が散った。
身体を関節部分で斬り刻まれ、指や肩からボロボロと落ちる。
その身体が再生してから頬をポリポリかいて
「随分と優しいなぁ、君、《ラグナロク》のメンバーなんだろ?そんなに優しくても入れるんだ」
「違いますよ、私が優しくするのは15歳以下の子供だけです」
「あっ・・・・・・ショタコンロリコン疑惑は本当だったのか(ぼそっ)」
「聴こえてますよ、そしてその通りです」
「なんなら語りますが、キリッ」
「自分の口で言うのはどうなんでしょうねー」
呆れた顔をしてリオルは呟いた。
「別にいいじゃないですか、動きましたよ」
言われてリオルが見ると、1人の男の子が勇猛果敢にも叫びながら賊へとタックルをかましていた。
当然のように避けられたが。
そして背中を蹴られ、木にぶつかった。
そして背中を踏みつけられる。
音は骨が折れたことを示していた。
「あらーヤバいなぁこれは」
呟いて、今にも飛び出しそうなカミスの服の掴む。
「離せよ、雑魚」
「うへー、声ひっくぅ、ひくわー」
同じことが起きた。
再生する間にカミスは動いていて、賊の10メートル以内に入っていて、周囲には糸が張り巡らせている。
「仕事が早いなぁもー」
んで、僕の行動も速い。
リオルはまた蹴られそうになっている男の子の前に立ち、男の蹴りをその身に食らう。
その結果、
人よりも脆く、柔らかく、華奢な身体は、
その中でも特に弱い内臓はあっという間もなく、まばたきする暇もなく、破裂し、
口から血を吐き、人に踏み潰される虫のように死んだ。
先程カミスがとても手加減していたことがよくわかる。
「なんだ、コイツ」
突然現れすぐに死んだ男を見て、困惑したような声を男が出す。
そう言った男の右腕が、鋭利な刃物で切り落とされたような断面になっていた。
もったいぶることなく、切り落とされたのだ。
凶器は糸。
その糸も、リオルの作った結界で原子に戻された。
『原子化』 文字通り物体の分子同士の繋がりを強制的に無くし、原子に戻す能力。
一回に使えるのは5秒だけで、一回使うと一時間は使えない。
そんな使い所の難しい能力をあっさりと使って、
こんな便利と言える能力を捨て駒に使って、
リオル・クライシスは敵を助けた。さらに、
『分解』『破壊』『劣化』『酸化』『炭化』『液状化』『気化』『業火』
9つの能力を使い、九重の結界を張り巡らせて、自分を殺した男を見据え、
「こんにちわ〜、はじめまして♪リオル・クライシスで〜す☆」
何事もなかったかのように両手を振りながらニコニコ笑いながら言った。
だが、男たちの反応は何事もなかったかのようにはならなかった。
「リオル・クライシス!世界最強かッ!」
「??? あっ!だっ、誰かは知りませんが、お願い!助けてください!」
「えー違うよ〜、僕は世界最強なんかじゃない、世界最弱だ。
そして助けない」
男たちの震え声をあっさりと否定し、女の子の懇願を拒否した。
そして腕を切り落とされた男の腕を拾い、『治癒糸』を使ってくっつける。
その動きは速かったため、男は何故自分の腕が戻っているのか不思議に思ったがめっけものだと思うことにした。
そしてリオルは、両手を広げて『切り取り』の能力で空間を切り取って、賊のアジトに空間を繋いで、
「ほらここに入りな、そしたら僕が君たちを君たちのアジトに送ってあげる」
なっ、と
賊たちは口を開け、リオルの言ったことに驚きを隠そうともしない。
男の子は、表情を動かせる意思が無い。
女の子は自分の絶望感を隠せる技術がない。
「安心して、僕は嘘はつくけど人が嫌がる嘘はつかない」
「人が嫌がるほんとーは言うけどさ」
リオルの笑顔に女の子だけでなく、男達も息を呑む。
「さぁ、どうする?決定権は君たちに有る」




