鬼ごっこ
侵入者はいとも簡単に私が隠していた組織の中心部に入ってきた。
普通の方法では入れないようにしているというのにだ。
入ってきてからやっとその存在に気づいたのだ、逃げようがない。
そいつとは前から面識があったから、その規格外は知っていだつもりだが、私が知っているのは多少の規格外でしかないらしい。
私の能力を知るための攻撃をやめ、世界最弱がしゃべる。
「僕がここにきた理由はわかるよね?」
「これでしょう?」
世界最強の世界最弱からの質問に、首から下げている首飾りの橙色で楕円形の宝石を手のひらに乗せながら答える。
「せいかーい。ね、お願い、それちょうだい!」
手を合わせて私を拝んでくる世界最弱に、返答として私は「顔をあげなさい」という。
「もしかしてくれるの?」
パッと顔を上げた世界最弱は首から血を噴き出す。
私が自分の首を切ったから、そのダメージが反射して傷つけたのだ。
世界最弱は血を噴き出している首を押さえながら、私を睨みつけ、
楽しそうに笑った。
「残念だったね、首を切るだけじゃ僕は死なないんだよ、再生しちゃうからね。首を切り落とさないと。言っとくけど、君は強いからね、わざと死んであげることはないよ。僕の運の悪さも、君相手じゃ作動しないだろうね。いや、意外と今も発動しているのかな?」
長ったらしく話し、直した首をコキコキ鳴らす。
そして、また笑って「外に出ようか」と提案してきた。
私はそれに乗って、世界最弱の作ったゲートを潜り、久しぶりに驚いた。
実に三週間ぶりだ。
「あれ?言わなかったけか、総力戦だってさ」
その周囲何十Km何もない平原にいた、一万は超えているであろうリオル・クライシスは同時に言った。
そして、全員が襲ってきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この程度か、予想以下だ」
手の平を空に向けて、大きな、鏡を作り、割る。
全方向から血が噴水のように噴き出した。目の前にいるリオルは頭から足下まで割れて倒れた。
「これで終わるわけないか」
もう一度空に手のひらをむけて、大きな鏡を作り、世界のどこかにある雨を持ってくる。
それは土砂降りで、一瞬で服が海に潜った時のように濡れ、水たまりができる。
水はいい、固形ではないから、どれだけ壊しても元の形に戻る。壊して散った水も、攻撃の材料になるし、今やっているように何人ものリオルが屋根のように上にいようと、肌を伝う水は止められない。
そして、上で壊れて死んだリオルの死体から噴き出す血も、また水だ。
割れる。
先ほどできた水たまりの色が赤くなるのに、5秒程度しか掛からなかった。
「世界最強の世界最弱、この程度なの?」
「君が規格外なんだよ‼︎何30秒程度で十八万人の僕を殺してくれてるんだ‼︎僕の———」
———僕の『残機』がたったの23恒河沙9283極8016裁3459正5871澗0645溝4257穣8588秭2046垓3197京5462兆7651億6920万1045しか無くなっちゃたじゃないか。
驚いた。さっきぶりの驚きだ。
さっきとは比にならない驚きだ。
驚きすぎて声も出せない。思考を放棄してしまいたくなる。
実際一瞬放棄して、その間に右足をつかまれる。すぐに割ったが、右足を掴んだリオルの右足がグズグズに腐っていたから、リオルが目を開けていたことで助かったらしい。
めんどくさい。
しかも、まだどのリオルも能力を一つも使っていない。
こっちはほとんど全て、一つを除いて使ってしまったっていうのに。
足元の水たまりを使って別の場所に移動する。リオルがいない、見通しのいい場所に。
そしてすぐに雨も呼ぶ。
「『鏡創り』応用、鏡屋敷」
なんとなく呟いて、マジックミラーで迷路を作る。
作ってから、鏡屋敷じゃなくて鏡迷路だなと思う。当然、天井も鏡で埋めた。
これで、割ればいいし、迷路のゴールはこの部屋には続いていない。
そのほかにも、水たまりをたくさん作っているし、そこを割れば。
「『針は止まる』」
バリリリン!
全ての鏡が一斉に割れ、何人かの顔を出していたリオルの頭が割れる。
目の前のリオルは足元の水たまりを割り殺す。
危ない、危ない、危ない。
今日1日で何回驚かされるんだ。
まだ十分も経ってないのに。
それより何があった。
さっきのリオルが言っていたのは『針は止まる』だったか?
時間停止の能力、いや、そんな能力。
あるのか、こいつなら。
ならなんでさっき私を殺さなかった。
いや、今はそれじゃない。
「『炎天火』「『水濹河』「『緋雷刃』「『土繆砂形』その他、etc‼︎」
略しやがった。
それにしても、なんだ!その能力は!
くそっ!
炎が天井を作るように円形で生まれ、光を100%吸収する黒い水が足をとり、赤い稲妻の刃が飛び交い、小石程度の大きさの石が体にぶつかり、落ちることなく、体につき、体が熱く火照り、手足が痺れ、目が霞み、体が重く、吐き気がし、耳鳴りがうるさく、内臓が痛み、脳が痛い、昔のことが強制的に思い出されて叫び出したい、全身の毛穴から血が吹き出してしまいそうだ、気を抜くと意識が飛びそうになる。
姿が速すぎて鏡で捉えきれないし、小さくて見つけられないのもいるし、大きすぎて鏡一枚だと殺しきれないのもいる。
だが、体を硬くしているだけのやつや、体を液体化、気体化している奴もいる。
さまざまだ。割れない。のもあるが、気体、液体はその姿自体を割ることができる。
だが、ここまでやっておいて、何度も攻撃をしておいて、どうして、私がまだ死んでいない。
「いや実はね、僕はさ君を殺すことができないんだよ、僕の不運で、だから、今回はタイムアップを狙うんだ、水を飲まなければ人は最大でも一週間で死ぬ。僕はそれを狙っているんだ。そうすると、引き分けになると思っているんだよ。一週間ぐらい、耐久してやるさ」
なんなんだ、こいつ。
水は、雨は炎で全て蒸発しているし、水溜りは、水溜りだけでなく地面まで腐っているから飲めたものではない。
確かにこのままではまずい、だが、先に全員殺せばいい。
殺し切れる気がしない。
いや、近場の街に行ってそこで食料を盗れば!
「ち、な、み、に。空間は閉ざしてるから、近くの街にも国にも行けないぜ。それに動いて汗を流させて脱水症状すら起こせれば僕としては満点。だから、攻め続けるし、殺す気で行く、だから君ももっと生きたいと望むことだね、そしたら——」
———橙の宝玉がまた能力をくれるかもだぜ?
やっぱりこいつはそのことも知っていたのか。
望む、望むのならいつもやっている。
あの人の役に立ちたい、あの人が望むことを叶えたい、あの人に使われたい、あの人のものでありたい。
あの人が生きていれば、私はそれで十分幸せだから、あの人を守る力が欲しい。
まだ、望む時じゃない。
もう一つ、ある。
「『破鏡重円』」
「ん?てなん?」
世界に罅がはいり、割れる。
世界の全てが割れたわけではない、半径100キロの世界がが罅割れて壊れただけだ。
私は大丈夫だが、リオルたちは、割れて崩れて死んでいく。
全員が死んだ後、世界が元通りに治っていく。
治った世界も罅割れは残っているから、地面が陥没する。
落ちはするが、無機質から受けたダメージは自分が見ているところに行くので、私は目を開けていればいい。
地面に降り立った時、すぐには追いつけないであろう国に飛び。
「なぁ(^∇^)、ようこそいらっしゃい」
リオルたちが出迎えのために集まっていた。
久しぶりに、実に13年ぶりに、絶望感を味わった。
鬼ごっこは、最悪の鬼で始まった。
逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。逃げた。殺した。
4日経った。
3日かもしれない。
地面に倒れた。
喉が渇いた。
目が霞んで何も見えない。
眠い。
2日くらいなら寝ないで過ごせる。
敵がいていつ攻撃されるかわからない時には寝れない。
1時間だって、まともに寝れない。
眠い。眠い。眠い。
立ち上がる。
足を出す。
手を広げる。
握る。
そんな簡単な動作すら、気絶してしまいそうな重労働になる。
お腹が空いた。
何か食べたい。
喉が渇いた。
何か飲みたい。
眠気がひどい。
どこかで寝たい。
できるなら、あの人の隣で。
死ぬかもしれない。
死なない。
死ぬわけにはいかない。
死んでたまるか。
せっかくあの人に拾ってもらったのに。
あの人に捨てられるのは構わない。
どこか遠い場所に行ってから死ねばいい。
あの人に捨てられてないのに死ぬのはダメだ。
あの人の役に立たないまま、あの人が望むことを叶えていたい、あの人に使われていたい、あの人のものでいたい。
あの人が生きていれば、私はそれで十分幸せだから。
あの人が、私をそばにおいていてくれれば、それ以上の幸せはないから。
あの人を守る力が欲しい。
今この場で死なない力が欲しい。
相手を殺す力が欲しい。
守るために殺す力が欲しい。
殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。殺すための力が欲しい。
だから。
寄越せ。
——————————チリン———————————
すずの音がした。
何度か、耳にした、音。
能力が与えられた音。
能力の力が、まるで最初から知っていたことのように思い浮かべることができる。
『永久機関』
能力を持つ生物が死んだとしても目的を達成するまで死に切らない能力。
『複製機関』
自分と同じ目的を持つ別生命体を作り出す能力(別生命体は本体とは別意思を持っている、ただし、本体の目的と反することはできない、そして、本体の持っている能力も、複製した生命は持つ)
『感覚機関』
世界のありとあらゆる感覚を全て自分の記憶として知覚させる(現実世界では1秒くらいしかたたない)
『生産機関』
自分の想像した生物や道具を代償、素材なしで作り出す能力。
まずやったのは、『生産機関』による一粒で疲労、空腹、脱水、その他体がベストパフォーマンスを披露するために必要なものをすぐに、補ってくれるもの。
次にそれを飲み込み、
そしてもう一度『生産機関』でどんな能力を持っていてもかすり傷を負っただけで生き返ることをできなくする剣を作る。
最後に、『複製機関』による自己と剣の複製。
計1億の私が対生物用兵器を持って、リオルを取り囲んだ。
「ありがとう。あなたのおかげで私は、もっと雅楽炮烙さんの役に立てる。もっと有用な道具になれる」
ありがとう。
もう一度、ライは行って、剣を構える。
「あー・・・・・・・・・助けて」
命乞いの答えは、目の前のリオルを刺すことだった。
刺されたリオルは、パタリと倒れ、生命活動を停止させる。
そして、残りの『残機』が200以上残っていたのに、起き上がらない。
それを察したリオルたちは叫んで逃げ出した。
逃げた場所は『感覚機関』で察知できた。
今度は私が鬼の番だ。




