仲間を売るのに躊躇はない
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ「なぁ、俺の話を聞いてくれよ!頼むからさ」ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガガリガリガリガリガリ「そんなに攻撃してこなくていいじゃんか‼︎」リガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガガリガリガリガリガリ「つーか、何でそんなに首引っ掻くのさ‼︎痛いでしょ!めっ!」リガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガ「あのですねぇ、聞いてますぅ?」ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガ「こらー!何か言いなさいよ、お母さん泣くわヨォ」リガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ「クソッこれでもダメか、何て強い」ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ。
何でこいつはまだ死んでいない。
何でこいつは私の攻撃が読める。
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で。
能力『自在変化』の効果で私を見えなくしているのに。血の色も無色透明無味無臭のものにしているのに。
何であいつはいつもすんでのところで私の攻撃を避けることができる。
何であいつの攻撃は私を掠っていくんだ。いつでも殺せると言う警告か?
ならなぜすぐに殺さない。
何で。
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で。
クッソ見えねぇ、一体どこにいったって言うんだ。
能力は透明化なんだろうけど、どうして近くを攻撃してもいないのか、当たってないだけなのか?さっきから顔の横に風を感じたり、服とかが破けているのってのに、一体どこにいるんだよ。
あれか?いつでも殺せるけど慈悲で助けてやってますって強者の余裕か?クッソ腹立つけど、得意げな顔をしてたりしたら見てみてぇなぁ!
「オラァくらえぇ!」
さっきからやけっぱちで能力『声帯兵器』を死なない程度に加減して何発も撃ってるのに当たった感覚がねえ、
(こいつ、強い)
2人は同時に思った。
ただ2人とも運がいいだけなのに。
勘違いして。
そして2人がこの膠着状態を打開しようと、エゴがもう一つの能力を、レーンが借り受けた能力を使おうとした時。
天井の岩が消えて、「ヒャッハァ〜俺さまぁ〜惨状ぉ〜」と金切り声で叫びながらヴォイスが乱入してくる。
「アレェ〜、何でエゴちゃんがいないわけなのさのさぁ〜。あーこの話し方はめんど〜だ。やめよぉ〜。んでぇ〜エ、ゴ、ちゃ、ん、わあぁぁぁ〜」
ヴォイスは人差し指と親指で輪っかを作ってその輪っかから地面を見て、
「みいいぃぃぃいつけたぁぁぁ〜」
無駄に間伸びさせて言って、地面に降りる。降りたところの隣にエゴはいない。
そんな愚は犯さない。
「なぁなぁエゴぉ〜、2対1ってありぃ〜?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・構わない」
相変わらず、返答は遅い。
最初は一人で殺したいと思っていたのだが、自分の欲よりも早く殺すことを優先した結果だ。
そんなエゴの決定に不満を漏らす者が一人。
「おいおい、俺とエゴちゃんの逢瀬を邪魔しないでくれよ」
レーンが頬を膨らませて言うのを見て、ヴォイスがゲラゲラ笑う。
「逢瀬ってお前ぇ〜最近聞かないゼェ〜、ゲハハ!つーかぁ〜そいつはやめといたほうがいいと思うゼぇ〜、そいつは諦めたほうがいいぜぇ〜、ボス命だからなぁ」
「それは俺にとってプラスポイントでしかないぜ、俺はそう言ういい上司を慕うような人は大好きだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好き」
小さな声が洞窟内に響いて、ヴォイスが人差し指と親指の穴を除いてエゴを見ると。両手で顔を押さえてしゃがんでぶつぶつ言っている。
「私はZ様のために働き、Z様のために動き、Z様のために生きて、Z様のための道具になり、Zのために生きて、Z様のために死ぬ。そのつもり、そのつもり、そのつもり。でも今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、今、アイツ、今私のこと、私のこと私のこと私のこと。す、す、す、す好きって好きって言った」
「ヘェ〜ヘェ〜、お前の惚れやすさは知ってっけど、今はやめてくれ、今はZ様のために目の前の敵を潰そうぜ?」
頭から煙が出てきそうなほど顔を赤くしているエゴに、ヴォイスは言う。
惚れやすいのか、ヴォイスの言葉を聞いてレーンがそう思い、内心でガッツポーズをする。
よっしゃ、今からでもハッピーエンドはあり得るぜ。
まずは、あの邪魔な男の方から。
「ガッ!」
叫ぶこと。
これが『声帯兵器』の使用条件。
目に見えない音の大砲がヴォイスに襲いかかる。
発した音が数万倍に増幅させて飛ばす能力。
それは赤い稲妻でも溶かすことのできないもので、ヴォイスは耳の真横で爆発が起こったような音を聞き、一瞬意識が飛ぶ。
そして、未だ顔を覆ってしゃがんでいるエゴの前を走り抜け、ヴォイスを殴り、そのままの勢いで回し蹴りを顔に当てる。
「グオッ」
うめき声を上げてヴォイスが倒れる。
「ちょっ、何で殴れんだよ、赤い稲妻纏ってんだぞ」
すぐに起き上がり、ヴォイスが驚いた声を出す。
「簡単な話だ。俺のもう一つの能力は全部の能力を無効化するんだよ」
「だったら俺様の『硬質化』も無効化しろよぉ〜、テメーの能力は能力の無効化じゃねぇんだろぉ〜?」
リオルから借り受けた能力を偽り、レーンがハッタリをかますがすぐに看破され、内心汗だくになるが、
「はっ、はっはっは、何を無効化するのは決められるんだよ、『硬質化』何て俺にとってはあってもなくても同じようなものだからな!」
「いやでも『硬質化』のおかげで俺様ダメージねぇぜぇ〜」
だが、俺様の赤い稲妻が効かなかったことも事実。
何の能力だぁ〜。
ヴォイスが頭を働かせている間、ゆらりとエゴが立ち上がり、
「迷わなくていい、今は「はいッ‼︎まだ座ってて!俺君のこと好きで攻撃なんて出来ないから!」
喋り、自分の意志を固めようとしたところで、また好きと言われて呻きながらしゃがみ込む。
漫画とかだったら目がグルグルしているところだ。
レーンと殴り合いながら、ヴォイスがポツリと呟く。
「はぁー、ほんと惚れやすすぎだろぉ〜」
「俺としてはありがたい!」
その叫びも『声帯兵器』の対象であり、殴り合っているヴォイスに防ぎようはなく、近い距離でくらい、鼓膜が破れ、視界が揺れる。
その少しの隙に、レーンはストレートで5発顔を殴る。
レーンは5発本気で殴って、鼻血すら出さないヴォイスを鬱陶しく思い、『硬質化』『鋼鉄化』『強化』の三連がけで、普通なら殴った拳の方が壊れてしまう防御力を持っているのに、壊れるどころか、手を痛めもしていないレーンをヴォイスは異常者を見る目で見て、エゴは未だぶつぶつと呟き続けている。
「なぁいい加減よぉ〜、お前のもう一つの能力教えて貰えねぇかなぁ〜」
ぼやくように言うヴォイスに、大きな声で元気よく、キッパリと「嫌だ」とレーンが言う。
「残念だが、俺が世界警察で準最強でいられたのはこの能力のおかげなんでね、そんな易々と教えらんないよ」
「エゴが聞いてもかぁ〜?」
「それはすぐに答えちゃうぅ」
体をくねくねさせて、顔をデレデレさせるレーンを見てキメェと思いながら、考える。
能力が一体何なのか。
考えはとっかかりすら見つけられぬまま、強制的に中断されて、時間を稼ぐために空を飛ぶ。
流石に空を飛ぶことは出来ないだろうと言う判断をしたからだ。
だが、飛んできた。
否、駆けてきた。
「何でだよぉ〜」
悔しさを声に滲ませながら、『観察』する。
観て察する。
レーンの足をかけている、何もないところに、風の流れがそれていくところがあることが分かった。
そういうのは、そこに物があるときに起こることだ。
物があるわけではなく、レーンの足が上がるとすぐに、風はそのまま流れていった。
なんだ。なんなんだ。どうして。どうして。
「ダァ〜‼︎くそっわかんねぇ〜!」
そう言って目を見開いて頭を掻きむしるヴォイスを冷静に見ながら、ストレートで2発。
ヴォイスはそれを避け、顔を上に向け叫ぶ。
「交代だぁ〜!主人格さまぁ〜‼︎」
その隙にストレートで3発。
殴られて、ヴォイスがのけぞり、体勢を立て直すより先に正中線を狙い殴り蹴る。
そしてもう一度殴ろうとしたとき、避けられ、距離を置かれた。
「『固定』ですかね?空気を『固定』して足場にするのですかね?そして自身の腕や足の形を『固定』して赤い稲妻による消滅を防いでるということではないのですかね?」
「あー、えーっと・・・・・・・・・・・・不正、あー!正解だよ正解い‼︎当てられてよかったですねぇ‼︎」
隠していた能力があっという間にバレてしまい、不貞腐れたようにレーンが叫ぶ。
「あまり悲観しないで頂きたいのですがね、私にはあなたの能力を打開する能力を持ち合わせておりませんのでね。あなたも、私を倒すことは出来ないのではありませんかね?」
ヴォイスの言っていることは正しく、先ほどから幾度となく殴ってはいるのだが、ヴォイスにダメージは入っていない。
「なら、どうするんだよ」
「あなたのボスと私たちのボスが今戦っているはずですのでね、ボスの勝った方の勝ちと言うことはどうでしょうかね?」
「それはダメ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エゴがしゃがんだまま呟く。
それは絶対揺るぎそうにもない声だったが、
「あなたも勝てないのですよね?無駄に動いてもしZ様の邪魔になったらどうなるのですかね?Z様が勝つことを信用して待つと言うのも部下の仕事ですよね」
屁理屈を言っているようにしか聞こえないヴォイスの言葉に、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった」
たっぷりと逡巡してから、納得が言っていないような声で、不満を押し殺すことも無く言った。
「では停戦ということでよろしいですかね?」
「おう、構わんぞ」
不機嫌なエゴの言葉など気にしていないように、二人は停戦協定を結ぶ。
「ところで、エゴちゃんを猫可愛がりしていいかな?」
「お気の済むまでご自由にするといいと思うね」
ヴォイスは仲間を売るのに躊躇はない。




