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世界最強は今日も負け続ける  作者: 青赤黄
橙の宝玉 壊滅
39/44

狂喜vs憎悪

 人の眼球を舐め回したいと思ったのは9歳の時。

 人の腕に頬擦りしたいと思ったのは10歳の時。

 人の足にいつまでも触り続けていたいと思ったのは11歳の時。

 人の舌に吸い付きたいと思ったのは12歳の時。 

 人の生を美しいと感じたのは13歳の時。

 その全てを我慢することなく実行したのは14歳の時。

 人の眼球を、人の腕を、人の足を、人の舌を、人の生を、奪って、切り取って、自分のものにしたいと思ったのは15歳の時。

 それ以降、僕はそれを実行し続けた。

 綺麗な眼球を、美しい腕を、素晴らしい足を、最高の舌を、美麗な生を。僕のものにし続けた。

 大抵の人は嫌がり、抵抗した。

 当然だ。

 どれもこれも、なくなれば痛いし不便だ。

 でも、だからこそ。

 そのものが手に入った時の嬉しさと言ったら、なんとも言えない快感だ。

 一つ一つ違いのある眼球、腕、足、舌、そして生。

 それらを見分けられた時に優る快感が襲ってくるのだから、やめることなどできるわけがない。

 そして、今までで1番美しい種族に出会った。

 体から稲妻を発し、光り輝く種族。

 シャンゼ族。

 最もそれの稲妻はただの遺伝する能力というだけだったのだが。

 それでも綺麗だと思う。

 それでも美しいと思う。

 それでも素晴らしいと思う。

 それでも最高だと思う。

 それでも美麗だと思う。

 だから。

「最後の生き残りがいたのならね!私はそれを収集せずにはいられないのですよねえぇぇぇぇえ‼︎」

 1人語りの終わりに叫び、ヴォイスが右手の鎌を振り下ろす。

 ゼウンは傷つき、傷だらけの体をなんとか動かして避けるが。

 動くたびに、雷がゼウンを襲う。

『雷雲』

 それは避けようのないもので、一度でも埋め込まれて仕舞えば、宿主が死ぬまで、それか術者が死ぬか術を解くかしなければ、動くたびに電流を流してくる。

 それはゼウンを苛み。

 そして、怒りに油を注ぎ続ける攻撃だった。

 右手の鎌も雷制。

 左手の鞭も雷制。

 ゼウンに埋め込んだのも雷制。

 全て、ヴォイスが使う技は全て、ゼウンのかつて唯一の友であり、唯一の家族の技、能力だった。

「あぁ!やはりあなた方の稲妻は美しいですね!そしてその稲妻を発生させるあなた方の腕のなんと美しいことですかね‼︎」

 体に流された電流で痙攣しているゼウンを見て、ヴォイスは嬉しそうに叫ぶ。

 目は爛々と輝き。狂気に染まっていることは声を聞くだけでわかる。

 やばい、死ぬ。 

 ゼウンが、そう思いながらも立ち上がる。

 逃げたい。逃げたい。

 そう思いながらも、足は前に動く。

「あぁ!あぁ!素晴らしいですね!美しいですね!そこまでボロボロになっていながらまだ私に立ち向かおうとするのはね‼︎あぁ何という、何という精神力ですかね‼︎あぁやはり!私はあなたの心臓が欲しいですね!」

「やらねぇよ」

 ゼウンが稲妻を放つ。

 ヴォイスが防ぐことなく受け、無傷のまま立っている。

「先ほども言いましたがね、私にはその程度の稲妻は効かないのですよね。青い稲妻以上でないとね、私とは勝負にならないのですよね。ですので——」

 ——ぜひ!今ここで、限界を超えて下さいね‼︎

 そう言ってヴォイスの放った青い稲妻を、ゼウンは避けるそぶりすら見せずに食らった。

 諦めたわけじゃない。 

 ただ、青い稲妻を浴びて、その威力を知り、習得しようとしたのだ。

 青い稲妻は容易に人の脳を焼き切る威力を持っている。

 食らったものは、例外を除いて全員死ぬ。

 その例外も、今ゼウンの目の前にいる。

 ゼウンは、例外になれず、死に、地に伏した。

「ふむ、やりたかったことは理解できますね。そして、とても勇気のある行動だと思いますね。賞賛に値しますね。素晴らしく美しい勇気ですね。そして美麗なる心ですね」

 

 まぁ、なせなかったら、全て無駄ですがね。


 その声に反応するように、ゼウンが立ち上がる。

 その身に、赤い稲妻を纏いながら。

「あ・・・・・・赤い、あぁ何と・・・・・・何と、まさか、見られるとは思いませんでしたね」

 そう言うヴォイスの目からは涙が溢れ出ていた。それを拭うことなく、ヴォイスは喋り続ける。

「世界最強の稲妻を見ることが出来るとはね、私は、何と幸福なことなのでしょうね。今ここで死んでも構わないと、思ってしまったではありませんかね」

「・・・・・・・・・なら・・・・・・死ねよ」

 地獄から響いてくるような低音と、天国から響きわたっている鐘のような高音の混ざり合った声で、『それ』はしゃべる。

 反応はできた。

 ただ、避けきれなかっただけ。

 赤い稲妻を纏った拳は、ヴォイスの右肩に擦り、掠った部分を中心に、右肩を消失させ、胸も少し消失させた。

「何と!何と!な——」

 ヴォイスの頭が消失した。




 『それ』は、ヴォイス1人の命では足りないと言うように、外に出、近くの村へと向かい。

「いけませんね、悪を犯して仕舞えば、あなたの美しさが霞んでしまうのですからね」

 ヴォイスに後ろから切り裂かれた。

「いえいえ、驚かずにはいられませんでしたね。まさか青い稲妻に耐えきれないで、死んだ時——の保険もかけておくだなんてね。何と用意——周到なことでしょうかね。私、感——服いた——しまし——たので、全力—よこでお相手さ——せて——いただ——きます——ね」

 赤い稲妻で切り裂かれた体を再生して、ゼウンが何度も何度もヴォイスを消失させる。

 ヴォイスがゼウンから離れ、コホンコホンとわざとらしく咳をして、

「私の能力『零か百か《オールロスト》』は殺した相手の能力を奪うことが出来るのですよね、魔法は無理ですがね、そしてこの能力の真骨頂ですがね。使い続けた私のみが到達した頂なのですがね。私は自分の欠損した部位を殺した相手の体で補うことが出来るのですよね」

 当然、命さえもね。

 ヴォイスの言葉に『それ』は反応しない。まるでどうでもいいことのような反応しかしない。

『雷雲』『雷鎌』『雷鞭』『雷豪』『雷性』『雷実』『雷砲』『雷仰』『雷災』『雷人』『雷城』『雷瞳』

 今のゼウンは稲妻そのもので『雷雲』は効かない。

 同じ理由で物理の性質を持つ『雷鎌』『雷鞭』以外の能力は無効化される。

「ふむ、そう言う効果なのでしたらね」

 呟くと同時に、10個の鉄を操る能力を使い

「鉄に電流を流して仕舞えばいいのですよね」

 そう言って村の鉄を全てゼウンに向かい投げつける。

 それらは、ゼウンの体に触れる直前に全て溶け落ちた。 

「ふむふむ、なるほどですね」

 それにしても、距離を置いてから先ほどまでの苛烈な殴りも来なくなってしまいましたね、一体どうしたのでしょう。

 考えながらも、水、炎、雷の三種類を一つずつ纏わせて、鉄を飛ばす。

 飛ばした鉄の中で、雷の効果を纏わせた鉄のみが溶けず、ゼウンの元に届いた。

「なるほどなるほど、雷を纏ったもの以外は焼き尽くし溶かすと、何と恐ろしいほどの美しさ。余分なものがありませんね。雷を纏った物も防げればさらにいいですが」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「沈黙ですかね」

 ここで初めて、ヴォイスはつまらなそうな顔をする。

「もしや、魔力切れの前に、無理矢理動かしていた脳みそが死んだのですかね?」

 ヴォイスの予想は大半当たっていた。

 脳のほとんどが焼け、消失してしまい、ゼウンは暴走を維持することすらできなくなったのだ。

 そしてヴォイスはその決着のつき方を美麗ではないと思った。

「あぁ、そうです。脳を再生すればいいのですよね」

 鉄を丸めて攻撃力を低くし、雷と再生の効果をつけ、投げる。

 その鉄は、赤い稲妻を突破し、コツンとゼウンにあたり。

「が、があああぁぁぁあ!」 

 ゼウンが叫んだ。

 叫び、暴れ、地面に落ち、地面を消失させながら転がり回り、のたうちまわり、やがて、動かなくなり。

 時間が経ち。

 立ち上がった。

 さきほどまでとは違い、手にのみ、赤い稲妻を纏わせている。

「一応、感謝する。生き返らせてくれてありがとう」

 怒りを滲ませ、隠すことなくヴォイスに憎悪をむける。

 ヴォイスの使った再生。

『雷製』は、ゼウンの姉のものだ。

 姉を慕っていた弟は、それが許せなかった。

『雷雲』『雷鎌』『雷鞭』『雷豪』『雷性』『雷実』『雷砲』『雷仰』『雷災』『雷人』『雷城』『雷瞳』

 を使われるよりも、許せなかった。

 赤い稲妻は、あやふやだった形から、正しい形となり、全身を覆う鎧となった。

 突進するだけでも勝てる、どんな攻撃も雷でない限り防げる。

 そんな防具の誕生に、ヴォイスは涙を滝のように流しながらとてつもない速度で拍手をしていた。

「素晴らしい、素晴らしいです。仲間のことを思い、私を殺すために、そのような頂点にたどり着いたものの全力を見せていただけるとは、なんと、何と言う美しさ。素晴らしいぃ」

 手を止め、涙を拭う。

 拭ったそばから涙はあふれ、止まることを知らない。

「では、再開しましょ——」

 圧倒する。

 言葉を発する暇を与えないほど早い連撃で、削り、抉り、削ぎ、潰し、消失させる。

 今まで殺してきた命のストックが、抗うことができないうちに削られていく。

 つぎはぎされた体は肌の色がところどころで違い、それも、誰に見られることもなく消える。

 消える、消える、消える、消える、消える、消える、消える、消える、消える、消える、消え「ねぇよぉ〜、バァかぁ〜」

 ゲヒヒッヒッヒッゲヒッゲヒッゲゲ。

「ダメダメダメダメダメダメだぁ〜、俺様の主人格は相変わらず手間がかかってしょうがねぇなぁ〜ほんっと手間のかかる主人格様だぁ〜」

 気配が変わったのをゼウンはちゃんと理解していた。

 口調の変化は本人がどうとでもできる。できないほど他人に感化されやすい無職の元殺し屋は例外としても何とかできるものなのだ。

 だが気配はどうもできない、変えようとしても変えられるものではない。

 変えられたとしても少しで、目の前のやつのように180度変わることなんてない。

「にぃ〜、正直さぁ〜、俺様でも勝てる気しねぇんだけどよぉ〜。でも雷纏っちまえば早々直ぐに信じまうってこともねぇんだよなぁ〜」

 じゃあ、始めようぜ?2万4805人vsお前1人。

 その攻撃は早くはなかったが、伸ばした腕の掌か2本の腕が生え、生えた日本の腕の掌からそれぞれ2本ずつ生え。

 倍々、倍々に増えてゆき。

 ゼウンの元に届いた時には13万1072の腕がゼウンに向かって伸びていた。

 その面での制圧力は高く。

 全てが雷を纏っていて消失させることができなかった。

 その腕の波に飲まれ、少しずつ、ダメージを負ってゆく。

 バチっ‼︎

 何かが爆ぜた時のような、電気の音がした。

 13万1072の腕のうち3本が無くなっていた。

 たった3本。たった3本にヴォイスは気づけなかった。

 たった3本。たった3本にゼウンは勝機を見出した。 

 電圧。

 それが高ければ高いほど、威力は倍々に強くなっていく。

 それにゼウンは気がついた。 

 そして、鎧を解き。鎧に使っていた全ての稲妻を剣にし。

 斬る。

 それを繰り返し、繰り返し、繰り返し。

 抜ける。

 一本の腕が、ゼウンの胸、心臓の真上を抜ける。

「『零か百か(オールロスト)』」

 ズズッ、と、稲妻が抜ける感覚。

「残念だったなぁ〜。俺様はテメェの攻略法は知ってるんだよぉ〜。こうやってなぁ〜。テメェの中の電気を全部抜いちゃえばいいんだよぉ〜」

 抜かれる。

 体が正常に動かずに、落ちる。

 高さは10メートルほど。 

 頭から落ち、一度痙攣を起こし、動かなくなった。

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