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世界最強は今日も負け続ける  作者: 青赤黄
橙の宝玉 壊滅
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炎vs氷

 朝起きて、ママの用意した朝ごはんを食べて(野菜は嫌いだから残した)、外着に着替えて、「行ってきますっ」と大声で言って外に飛び出す。

 村で1番元気がよく、いつも友達と走り回っては服を汚し、ところどころ破けさせて帰ってくる女の子。

 それが私だった。

 いつも楽しく遊んでいて、友達とかくれんぼをしている時、偶然それを見つけた。

 村が祀っている猿神様の祠。

 自分のパパよりも大きいその建物は、首が痛くなるまで見上げなければならないほどの大きさだったが、成長してから見たそれは普通よりも少し大きい程度の家だった。

 ゴテゴテした装飾品で光輝いていて、とても綺麗で、魅せられて、ついつい一つ透明な石を取ろうとして、

「何をしている?」(「何をしている?」)

 狭い部屋で叫ぴ反響して重なったような声に咎められた。

 どこから聞こえてくる声だったかは分かりにくかったが、それでも、「ごめんなさいっ」と振り返って頭を下げた。

「子供か、(「子供か、)なぜここにいる?」(なぜここにいる?」)

 重なる声が気味が悪く、泣き出しそうなのを堪えながら、「友達と遊んでたらここに来ちゃって、ごめんなさい」ともう一度謝る。

「ふむ、そうか」

 聞こえてくる声が一つになり、ホッとした。

 だがすぐに、目の前をズシ、ズシと歩く音がして再び体を縮こめる。

 どうしよう、どうしよう。

 どうやって逃げようか。

 そんなことばっかり考えて、具体的な逃げる方法なんて一つも思いつかずにいると、ズシ、ズシと戻ってくる音がした。

 どうしよう、逃げられない。

 そう思った時、目の前に手が差し入れられ、驚いた。

 その手に赤い果物が握られていた。

 手が大きく、果物がほとんど隠れていたが、それが私の好きな果物であることはすぐにわかった。

 私は顔を上げて、初めて猿神様を見た。

 今まで見たことはなかったが見てすぐにわかった。

 白い毛が顔や手足以外を覆って、クリッとした赤い、紅い、深紅の瞳と目があった。

 怖くはなかった。

 先ほどよりも震えは収まっていた。

 とどめに

「やる、食え、ワシのことは怖がらんでいい」

 この言葉に人懐っこい私は簡単に絆されて、

「ありがとう!」

 とだけ言って猿の手から果物を手渡され、それにかぶりつく。

 むしゃむしゃと食べていると、急に体を持ち上げられ、驚きはしたがそれ以上に、いつも見ている視界よりも圧倒的に高い視界にワクワクした。

 そして、持ち上げられたまま、祠の中に入って行き、中にある果物を好きなだけ食べていいと言われたことで、完全に信用した。

「ねぇ友達も連れてきていい?」

「かまわんさ」

 そして翌日からは、友達と遊んで疲れたら猿神様のところに行ってみんなで果物を食べて帰った。

 楽しかった毎日が、さらに楽しいものになった。

 それが崩れたのは16の頃。

 私の言動も落ち着いてきて、時々男の子と口喧嘩していがみ合うくらいの普通の女の子になった。

 自分で言うのもなんだが、容姿は中々に良かったし、体のメリハリも村じゃ1番のものだった。 

 男子の視線が時々自分を女として見ていて、それが少し気持ち悪かったが、好きな人ができて付き合い出すと、そんなことも気にならなくなっていた。

 付き合っていた男の子と何回も会って、結婚しようと言ってもらったのが15歳の時。

 16歳になったら結婚できる。

 待ち遠しく16歳の誕生日を待ち、待ちに待ったその日の夜。

 私の元に迎えが来た。

 村長と、その側近二名が私を迎えにきて、強制的に他の女性たちに体を洗われ、裸同然の薄い外套だけを羽織らされて、何が起こるのか分からず思考停止したまま村長の後をついていった。

 ついたのは、あの祠。

 子供の頃何度も通っていた猿神様の祠。

 そこに入り、

 外套を脱がされ、

 肌が外気に晒されて、

 いやだ。

 と言う言葉が脳内を統べた。

 止まった思考は再開し、記憶に残さないようにと消していた記憶が蘇る。

 村長が家に来て、開口一番に言った。

 お前は猿神様に選ばれたのだ。

 これは名誉なことである。

 お前は猿神様の嫁になるのだ。

 悲痛な顔をしながら言っていた村長の言葉は、最初は理解できなくて、理解したと同時に、いやですと断った。

 私には好きな人がいると、

 私には将来を共にしたい人がいると、

 私には結婚したい人がいると、

 断った後に、私が思考を止める原因になる言葉が村長の口から出てきた。

 彼なら、今後一生遊んで暮らせるだけの金を与えたら、君のことは諦めると言ったら、すぐに承諾してくれた。

 否定した。

 違うと叫んだ。

 声を記憶しておく魔法を出されて、そう言っている彼の声が聞こえてきた。

 そこからは、何も考えたくなくて、思考を止めた。

 彼に私はいらなかった。

 彼は私を必要としていなかった。

 彼は私のことなんてどうでもよかったのだ。

 そう考えたくなくて思考を止めた。

 風呂場では、女たちから哀れみの目を向けられ続けた。

 彼のことはそこにいる全員が知っていたから。

 そして、猿神様の前に何も着ないで立った時に、やっぱり嫌だと思った。

 どれだけ思考を止めようと、彼に捨てられようと、獣の相手なんてしたくなかった。

 だから暴れた。

 話せと言って、殴って蹴って噛みついて。

 止めろの一言もなく頬を殴られた。

 なぜお前が拒否する?

 何も考えずにいればいいんだ。

 そう言われて、少しもしかしたらと思ってしまった。

 お前は我が子を成せばいいだけだ。

 その言葉で確信した。

 この猿は、私を人として見ていない。

 子供を残すための道具としてしか見ていないのだ。

 助けを求めた。

 誰もこなかった。

 2、3度殴られ、気絶した。

 意識が消える直前に、彼に会いたいと思った。

 意識が目覚めると、辺り一面が凍っていた。

 無意識下で自分に『氷遊び』の能力が自分に生まれていたことに気づいた。

 猿も凍っていて、

 祠も凍っていて、

 村も凍っていて、

 人も凍っていて、

 私の愛したあの人は、村のゴミ捨て場に頭と胴が離れた状態で凍っていた。

 きっと、私を守るために行動して、殺されてしまったのだろう。

 私は、彼の頭を腕に抱いて、村の中を歩いた。

 誰か生きている人はいないかと、氷漬けになっていない人がいないかと、

 いない、いない、いない。

 見知っている人は全員凍っているし、身知らない人など村にはいなかった。

 凍った地面に座ると、凍っていた草がパキッと割れた。

 いつもなら、フワッとして、決して硬いと言う印象を与えることのない土が、とても硬くなっていた。

 彼の頭を抱えて、凍った地面に座っていると、

「これ、全部あなたがやったの?」

 と、見知らぬ女性が薄着のまま立っていた。

 こくりと頷くと、白い息と共に「そう」と言う言葉が女性の口から出てきた。

「その人もあなたかk・・・ふぇ、くしゅ」

 何かを聞こうとして、くしゃみが出た。

 うぅ、とうめき声のようなものを出してから、「ちょっと待ってて」と言って、何もないところに鏡を作り、その中に入っていった。

 少し待つと、その女性が厚着をして鏡から出てきた。

「うん・・・・・・これでいいか」

 マフラーを鼻まで持ち上げて、女性は言った。

「その人は、あなたが殺したの?」

 まるで緊張感もなかった空気がピンと張る。

 受け答えによっては殺すと言うように。

 死ぬのは、今はもう怖いとは思えなかった。

 だから、

「違う、凍らせたのは私だけど、この人を殺したのは村の誰か」

 正直に答えた。

「そう」

 静かに、私の言ったことを噛み締めるように何度も女性は頷いて、

「その人とは、どう言う関係だったの?」

 と、初対面で聞くようなことではないことを女性は聞いてきた。

 私は、誰かに私と彼の関係を覚えていて欲しくて、彼と私は愛し合っていたと知って欲しくて、彼と私のことを全て、その女性に教えた。

 猿のことも言った。

「そう」

 さっきと同じ言葉を彼女は言ったが、彼女は感極まったと言うように目の端に、涙を浮かべた

 何で泣いているの?

 そう聞こうとしたが、「あれ、目開かない、ど、どうしよう」と彼女が騒ぎ出すので、一体どうしたと思って言うタイミングを逃した。

 彼女の瞼は凍っていた。涙のせいだろう。

「まぁ、何とかなるか」

 と、彼女は楽観的に言って、ワタワタと動かしていた手足を止める。

 そして言った。

「君は、よく1人で仇討ちを、敵討ちを、憎い相手を殺すことができたね」

 すごく偉いよ。

 彼女はそう言った。

 仇討ち?敵討ち?

 そんなの私はやってない。

 やったのは、虐殺だ。

 村の関係のない人まで殺した。

「それはそうかもしれないけど、その人を殺したのは、自分は無関係ですって顔している人かもしれない、子供でも、親に頼まれて無理やり殺させられたのかもしれない」

 それは、そうかもしれないけど。

「それに、君は自分が嫌なことをされたのだろう?そう言う時に能力が暴走するのは珍しくない。それに、今回の嫌なことは、私だったら意識があっても殺す。そう言い切れる類のものだよ」

 だから、君は悪くない。

「悪いのは君を畜生ごときに差し出した村人たちで、君を見捨てた村人たちだ。君の彼氏は立派に戦った。村人たちの不当な行いを非難して殺されたんだ。私だったら耐えられない。あの人がいない世界なんて生きていたくない」

 最後の方は自分の世界に入ってしまった彼女の言う言葉は、私が欲しかったものだった。

 誰かにそう言って欲しかったことだ。

 私は悪くない。

 この惨状を作ったのは私だけど、私は悪くない。

 そう言ってくれる人を求めていた。

「本当に、私は、悪くない?」

 ゆっくりと、確認するように彼女に訊く。

 彼女はキョトンとしてから、「当たり前だろ?」と本当に当たり前のことのように言った。

「あなた、名前は?」

「あれ?言ってなかったっけ?」

 ライ。

 ライは自分の名前を言った後に「私はこの世界を好きな人とずっと一緒に居られる世界にしたい。君のような人が生まれないようにしたい。そうするまでに何人も、何十人も、何百人も何千人も、何億人でも殺すつもりだ。

 それを手伝って欲しい」

 いいよ。

 私はすぐに答えた。

 いい世界にするためなら、たとえ、何人殺したとしても、私は悪くない。

 悪くない。

 悪くない。

「犯罪者だって言う世界が悪いんだよね」

「そうだよ、私たちはいい世界を作るために殺すんだ。革命家だって、最初は犯罪者だ」

 

「だから、私は彼女について行くの、彼女を支えるの、幹部の中じゃ最弱でも、彼女のために頑張るの」

 そう言って、私は『氷遊び(ひあそび)』を使い、氷花を百は作り出し、目の前のより良い世界を作るのに邪魔な存在を消そうとする。

「そんなのはぁ!逃げだろうがぁ!」

 ファイアと名乗ったその女持つ能力は、私と真逆の能力で『火遊び(ひあそび)』と言うものだった。

 それを使い、女は私に対抗するように炎の花を作って打ち出してくる。

 相殺。さっきからそれがずっと続いている。

 それはいい、それはいいが。

 ふざけるな。

「逃げて何が悪い」

 私だって気づいていることを、そんなふうに、知ったふうに言うな。

「逃げたい時、逃げ道を作ってもらったんだ。そこに逃げ込んで何が悪い。逃げたくなるようなひどい状況を作ったことのない奴が、逃げるのが悪いなんて決めつけるな!逃げたくなるような犯罪を犯したことのない奴が!知ったように言うな‼︎」

 Qが激情を外に出し、叫びと共に『氷症状』を使う。

 これは一つの村を壊滅させ、さらにはそこにいたアルティメイトに並ぶ化け物、パーウェルトすらなすすべなく殺してしまった技だった。

 一瞬で、ファイアが驚いている間に、『氷遊び』は地面を、壁を、天井を凍らせて、ファイアの足元に届く。

 決着。

 勝者は、決まった。

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