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世界最強は今日も負け続ける  作者: 青赤黄
藍の宝玉
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二刀流も余裕です

 死海、死地と呼ばれている場所が存在する。

 死地から生きて帰ってきた唯一の人物は、死地から世界で一番加工が簡単で、硬い素材を持ち帰ってきてそれを取るために何人もが死地に向かった。

 だが、生きて帰ってきたものはいなかった。

 他の世界では勇者になれるレベルの人物が、帰ってこないなど当たり前のようなものだ。

 死海と死地は繋がっており、死地に辿り着くために死海を越えなくてはならない。

 そして、大抵のものは、死地に辿り着く前に死海で命を落としている。 

 死海に生きている生物は、どこの湖にも、どこの海にも生息できない生物しかいない。

 死海の水分の中の成分が違うからだ。

 水分の中にテトロドトキシンが致死量存在する。

 水に潜ろうものなら死、水に潜らなくとも生息する生物に殺される、運良く生物を殺せても食べることなどできず。

 大抵のものが餓死、それか食われて死ぬ。

 そして、餓死することなく、食われることなく、生きて死地に辿り着いても、そこには異形の化物がおり、それに殺される。

 その大地に刀身たちはたどり着いていた。

「いやーすごい。まさかこんなに早くつけるなんて思ってなかったよ。でも君なんで死海泳いで生きてんの?」

 斬った。

 『選択切断』で毒だけ斬った。

「うわすげぇ、さすが神のバグ最強クラス」

 あった時から何度も聞いているが、その最強クラスだというのはどういうことだ?

「簡単なことだよ。君の他に神のバグがいてね、君のレベルだと、序列一位二位をゆらゆら〜してるってこと」

 ほぅ、俺と同等の人物がいるのか。

「そうだね、いるよ、君も戦った今日狂教会が崇めている狂滎(きょうぎょう)凶介きょうすけがそれだ。あの子は本当にすごい子だよ」

 狂滎凶介。

 聞いたことが、いや、見たことがある気がするな。

 いつだったか。

「君が12歳の時、君は見てるぜ?」

 ああ、そうだった。それだ。

 たしか、たしか・・・・・・・・・何だったか。

「忘れないでよ、どうでもいいことだけどさ。簡単に言うと、むかーしむかーし、たった1人で世界を娯楽の一環で滅ぼそうとして、日本の人のレベルで止まっている人と、何とか化け物にならないレベルで止まっている妖怪たちが、全軍8万9027人のうち8万8719が死んで、何とか封印できた人だよ」

 ほぅ、

 それだけでは強いかどうか分からないな。

「ちょっと楽しそうにしてるくせに」

 まぁな、少し気にはなる。

「ははは、そりゃいいや」

 じゃあ行こうか。

 リオルがそう言って歩き出したのを刀身は追った。

 鞘は、刀身がリオルとあって、行動してからずっと、刀になり、鞘に収まり続けている。

 そして、死地の波打ち際から少し登り、真っ白い地面を登り、真っ白で真っ平らな地面を見る。

 それは一寸の凹凸すら残さず研磨したような地面だった。

 人工物。

 そんな印象しか生まれない、生命体が存在しないような大地だった。

 だが、いた。

 生命体はいた。

 人の上半身から、蜘蛛のように8本の足が生えていて、両腕は右側は2本、左腕は3本、それぞれの腕にカマキリのような鎌がついていて、下唇から股まで切れている。顔は中性的、女でも男でも、どちらにも見える顔だった。目は、人で言う瞳孔部分が6つ、7つ存在していた。

 白い化け物だった。

 白く白く白く白い。

 地面と同化して見えなくなってしまいそうな、白さだった。

 化け物の口が開く。

 下唇から股までの切り込みのようなものが開く。

 開いた瞬間、白一色だった世界に赤色が生まれる。

 赤く紅く朱く緋い。

 粘液でぬらぬらと輝きを歪に放っている口から、明らかに体内に収容できる容積を超えた数と、長さを持った、無数の触手のようなものが音速を超えて刀身に伸ばしてくる。

 それが刀身に届き、刀身が鞘で触手を切り落とそうと刀の柄に手をかけた時、

 コンっと、

 石が地面に落ちたような音がした、

 音の正体は、刀身が空に飛んだ時の音だった。

 刀身は、空に飛んで、冷めた目で白い地面を見下ろすと、先ほどの化物とリオルが、突如10人の人が横たわった時ぐらい大きな口に食われて血を噴き出し、潰され、粉々にされていた。

 その口は、妙に現実的な口だった。

 歯の形、唇の色がどれだけ遠くにいてもわかる。

 だから、口の中に舌がないという違和感が大きい。

 そして、その口が見渡す限り存在して、その口から血が噴き出している。

 足元の光景と同じことが起きているのだろう。

 そして、空中にいる刀身を見ている目がある。

 何対かは分からないが、ある。

 地面に直接、口よりも少し小さいくらいの目が隙間を埋めるように存在している。

 そして刀身を見ている。

 降りて、食おうとしてくれば命を絶てばいい。

 ストっと、血でまだらに染まった白い歯の上に降り立つ。

 口は動かないが、口の中から声がした。

「おーい、トーシンくーん。降りてきて〜こっちこっち〜」

 口の中から聞こえてきた声の主を見るために口の中を覗く。

 そこにはリオルが立って刀身に手を振っていた。

 ブワッと突風が吹いてきた。

 空洞がある。深くはないが、長くはあるのか、それともあの男が何かしたのか。

 その予想は概ね当たっていた。リオルがなんとなく演出として突風を起こしただけであり。

 見た目の通り深くはなく(10メートルくらい)、横にも長くなかった。

 降りてすぐに、綺麗に磨かれた石で作られたような椅子に座っている男がいた。

 その男は、リオルと同じ顔をしていた。

 違うところがあるというなら、目。

 眼。

 誰も自分には敵わないと言っているような、そんな瞳。

「えー、彼が僕の兄。リオル・クライシスでーす」

「やあやあ僕、俺のところに来るのは久しぶりで、俺のところに誰かを連れてくるのは初めてだねぇ」

「まぁねぇ、誰も彼もこの死地じゃあ生きられないからねぇ、笑っちゃうよ」

 ゲラゲラ。

 リオルが目を細めて、見たくないものを相手にしているように笑う。

 クハハ。

 と兄と呼ばれていた方のリオルが、虫嫌いが虫を潰した時に笑ったら、そう笑うだろうというように笑う。

 仲は良くないのだろう。

 そんなのは今まで感じなかったのだが。

「で、俺。僕がわざわざ君のところに来た理由はね、この刀身君は君に刀を取られたんだよ、妖刀以上の妖刀。絶望刀『失塵』」

 どうやら、効果自体は鞘ちゃんも真似できてないみたいだけどね。

 弟の方のリオルがそう言う。

 効果。

 絶望刀。

 知らないな、そんな単語。

「おいおい僕、教えてなかったのか?酷いことをするじゃないか」

 ニヤニヤニマニマ、

 人を小馬鹿にするように、蔑むように、辱めるように笑っている。

「いやだってさぁ、知ってると思ったんだもーん」

 馬鹿馬鹿しいほどに、ふざけた調子で言う。

 声が同じで、目を閉じてしまえばどっちが話しているのか分からなくなる。

「じゃあ僕が教えてあげる「いらないよー僕が話「じゃだめだよー足りないた足「足りる(りない)足りないじゃなくて一緒にいた僕が言うべきだと思うんだよねぇ」

 2人が言葉を重ね合って、歪み合いながら笑い合っている2人の会話が終わり、リオルがくるりと兄から目を離し、刀身を見る。

「それじゃあ、解答編といこう」

 解答なんてないんだけどねぇ。

「まずは絶望刀から。君のいた世界にのみ存在して、しかも二振りしかない妖刀以上の妖刀。それが絶望刀なんだよ。君の持つ『失塵』は本当は『神無戯かんなぎ』と呼ばれているものだよ」

 『神無戯』

 そう呼ばれていたのか。

 知らなかった。

「『神無戯』は世界を切り取ることのできる能力を持っている」

 斬って貼ってが出来る。

「それが『神無戯』だよ、恐ろしいだろ?」

 正直何が恐ろしいのかは分からないのだが、まぁいい、早く『神無戯』だろうが『失塵』だろうがどっちでもいいから早く渡してほしい。

「やだね。俺は『神無戯』を持つ恐ろしさを知らない奴には渡したくないね」

「僕もどーい」

「だよなぁ、渡したくないよなぁ」

 兄の言葉にうんうんと弟は頷く。

 仲は・・・・・・いいのか?

「さぁね、仲がいいと思ったら仲はいいんだろ?じゃあ話を戻そー、

 つまりね、『神無戯』は斬って貼って、世界の運命を変える力を持ってるんだ。いい事実のあった世界を切り取って、別の世界に貼ることができる力があるんだよ。

 ねぇ、それって、相手からしてみりゃ絶対に勝てないってことだぜ?

 絶望だろ?

                       」

 なるほど、そう言うことか、よくわかった。

 わかったから返せ。

「せっかちだなぁ、僕が連れてきた人は、いいぜ、俺の持ってる『神無戯』を返してやるよ。正しく使っても間違った使い方でも何でもしな?」

 ただし——

「——その腰の変化獣を貰いたい」

「あっ、いいねぇ、僕も賛成だ」

「だろだろ?僕」

 2人は仲良く言って、刀身は迷うことなく「わかった」と答えた。

 腰からドクンッと心臓が跳ねる音がした。

 柄を強く握る。

 それで心音の大きさは消え、いつもと同じ音になった。

 そして、それを見ていた兄と弟が不思議そうな、怪訝そうな顔をする。

 それを気にすることなく刀身は歩き、刀の鞘の部分を持ち、距離が1メートルくらいになったところで、兄が「ほい」と『失塵』を手に取って渡してきて、

 交換する様に、刀身は『失塵』を手に取り、鞘に収めたままの刀で兄の方を殴りつける。 

 感触が薄く、手応えをあまり感じなかった。

 それに違和感を覚えながら、走り、死地から出ようと、

 腕を掴まれる。

「おっ、ラッキー。さすが俺」

 鞘から刀を抜き、斬りつけるが、椅子から手を掴んできていた兄には椅子を斬るだけで終わった。

「ははっあっぶねぇ、さすが俺。安心しなよ鞘ちゃんはもう取らない。俺たちは満足したよ」

 なっ?

 弟に呼びかけ、兄にうんうんと頷く。

「どう言う意味だ」

 少しの怒り混じりに刀身が言って兄の手を振り放す。

「おお怖い。でもさぁほんと怖かったよ、俺たちが作った7つの宝玉のうちの一つがぶっ壊れているのかと心配になっちゃったんだけど、まぁ、ぶっ壊れてても今度できる観賞用の剣の鞘にはめるのには問題ないんだよね?僕」

「そうだよ、観賞用に使うんだから壊れてても問題はないんだよねぇ、でもさぁもし使うってなった時にさ、効果があるってわかってた方がいいよね」

「まぁ確かにそうだね」

 何を言っているんだ?

 やはりこいつらの仲はいいんじゃないのだろうか。

「まぁとりあえず、僕との約束を守ってもらおうか」

 約束?何を約束したのだったか。

「忘れたのぉ?藍の宝玉だよぉ、それをもらおうか」

 そう言って、弟が手を伸ばしてくる。

 そう言う約束だったか。

「いいだろう」

 刀身はそう言って腹を押して、腹の中から直径1センチの藍色の玉を取り出し、服で体液を拭いてから渡す。

 サンキュー。

 リオルがそう言って、受け取り、

「それじゃ、解説編パート2と行こうか」

 求めていないのだが。

「藍の宝玉は、愛で間で会で合で哀で相なのさ」

 意味が分からないのだが。

「藍の宝玉は、相性の良い人と会わせて、哀しみなんて感じる暇がほどに愛し合わせる。そんな効果があるのさ」

「くくく、つーか深夜テンションで作ったものの説明するって恥ずくない?」

「恥ずかしいよ!それ堪えてやってんだから掘り起こさないで!」

 そう叫んだリオルの顔は赤くなっていた。

「なんでそんな簡単に人の秘密を言っちゃうかなぁ、そういうのはやめてほしいよぉ〜」

 唇を尖らせながら、リオルがそう言って、コホンとわざとらしく咳をして、

「じゃあ最後。気になっているであろう僕の兄のことだ」

「いや、気になっていない」

 刀身が即座に答える。

「まぁまぁ、君じゃなくて他の人にだよ、僕と兄は元々一つでね、神様に僕が死にたくないって願ったら、死ににくくする代わりに一生君は誰にも勝てないようにするって言われてね、それで勝ちの概念だけが僕から消えて、勝ちの概念だけを持った兄が生まれたんだよ、勝ちの概念しかない、つまり、誰とどんなルールで戦っても勝つことしかできないんだよ、僕が誰とどんなルールで戦っても勝ちという概念がないから勝てないのと反対だね」

「そうかそうか、わかった。では帰る」

「うんいいよ、なかなか面白かったからね、僕、ちゃんと元の世界に帰してあげるんだよ、いいね」

「とーぜんさ、神のバグが1番多くいる元の世界に戻してあげよう」

 ああ、感謝する。

「とーぜん鞘ちゃんも一緒だからね」

「ついでに、世界が滅びかけてる時間軸にしておくよ」

 ん?

 そんなのは望んでいな

 い、と思いきる前にもう見知らぬ場所についていた。

 先ほどの死地とは全然違うボロボロの建物が幾つも立ち並んでいた。

 高さは城のような大きさの建物が垂直に立っている。

 どう見ても技術的に無理だ。

 どうやっているんだ。

 刀身は困惑しながら周りを見て、異世界にいて覚えた数字があるのを見つけた。

 その数字は3つとも繋がっていて読みにくかったが、なんとか読めた。109という数字にどんな意味があるのか知らないが、とりあえず、そこを目指すことにした。

 藍の宝玉を握る

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