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世界最強は今日も負け続ける  作者: 青赤黄
藍の宝玉
31/44

今日から狂滎様を崇めましょう

 道中関係のない話をペチャクチャと話していた男が急に立ち止まり、関係のある話をし始めた。

「はーいとーちゃーく。ここから見えるあの国はね、宗教国家なんだ。正直言って、通る必要はないんだけど、ちょーと最近周辺国家への被害が酷くてね、国を潰すことにしたんだ。だから君に任せたいんだよ。お願いできるかなぁ?」

 最後の言い方が子供をあやすような言い方で、イラッとしたのだが、なにかを言うのもめんどくさい。

 まぁ、多少めんどくさいが、やれないこともないだろう。

「それじゃよろしくぅ、あっ、ちなみにあの国の名前は大罪大国って言ってね、今日狂教会って言う、君と同じでこの世界にはなかった宗教でね、かなりの危険思想なんだよ」

 その情報はいるのか?

「いやー、何となく知っててもらいたくてねぇ、それでさぁ、そこの上7人が強い能力持ちなんだよ」

 君からしたらザコだけど。

 ならその情報いらないだろ、全員殺すんだから。

「確かにそうだねぇ、ちなみにその7人の偽名と能力だけ教えておくねぇ」

 いらん、どうせザコだろ?

「ザコなんだけどぉ、ちょっと強ーいザコなんだよ」

 中ボスくらい。

「じゃあ説明しまーす、

 『傲慢』ステレオ、能力『勝った者(オール)が勝者(ベット)

 他人のステータスを全て最大一万下げることができ、他人の重力を百倍にまで上げることができ、触覚以外の五感消す状態異常を付与することができる。

 『憤怒』フレーズ『力こそ強さ(パワーハイエンド)

 自分のステータスを最大10万倍まで上げることができ、全ての状態異常を無効化することができる。

 『怠惰』ステージ『働いたら負け(ノームーブキャンセル)

 自分の視界に入った動くものの動きを止める。

 『色欲』ワード『魅入り魅入れビューティーイズビューティー

 自分が声をかけ、それに応えた生物を自分に恋させることができる。ただし例外があって、君はその例外のうちに入るよ。だから気にしなくて良い。

 『暴食』ハード『手を合わ(パックン)せていただきます(パックンゴクン)

 自分が口を開いた時、口を中心に扇状の範囲に入っているものをなんでも食べることができる。食べるものの選択もできる。

 『嫉妬』コード『羨望しても努力せずルックアンドスティール

 自分のステータスや能力を全て相手と同じにする能力。

 『強欲』シード『無いなら作ればいい(オーバーテクノロジー)

 自分のいたらいいなと思う生物を作り出す能力。かなり細かく設定しないと思いよらない事態が起こることもある。

 ざっとこんなもんだよ」

 わかった、行ってくる。

「行ってらっしゃーい・・・・・・・・・僕別に全員殺してとは言ってないんだけどなぁ」

 

 ふむ、城壁は大きい、そして見たことのない高さと素材だ。

 硬そうだ、あの城とどっちの方が硬いのだろう。

 まぁ、あの時と同じで切ればいい。

 遠くで憲兵のように武器を携帯している者がいたが、気にせずに・・・・・・・・・いや、纏めてでいいだろう。

 刀身は『空間切断』を壁と人にだけ作用するよう意識して、刀の柄に手をかける。

 憲兵が足を上げようと筋肉を動かす。

 俺は刀を抜き、逆袈裟に一閃、速度を落とすことなく振り切った姿勢から下へと下ろし、1番下に憲兵を入れる。そこからは横向きに右から左、少し角度をつけ左から右、少し角度をつけ右から左。

 それを50繰り返し、このくらいで良いかと決め、最後に左側の壁に上段から斬り、鞘に収める。

 足を上げようとした憲兵は、まだ地面から足裏が離れていなかった。

 足を上げた憲兵はバラバラになり、それに少し遅れ、壁が大きな音を立てて崩れ落ちる。

 人1人が通るには大きすぎる隙間が空いた。

「さて、行くか」

「ん、観光」

「かんこう? 何だそれは」

「他の国や地方を訪ね、風景・史跡・風物などを見聞したり体験すること」

「なるほど、では観光ついでに潰すか」

 刀の柄を撫でながら刀身は歩き、白銀しろがねと言う、大罪大国の準最強部隊が目の前にいる状況でも堂々と切り崩した部分から入り、

「貴様!ここが狂滎(きょうぎょう)凶介きょうすけ様を崇める今日狂教会であることを知っているのか」

 白銀隊長にそう言われて、

「知っている、お前たちを皆殺しにしろと命を下された、だから貴様ら全員こ・・・・・・皆殺しにしろとは言われてないか?」

 ようやっと刀身は自分の勘違いに気付き、

「うん、言われてない」

 と鞘が言う。

 鞘が気付きながらも言わなかった理由は、別に刀身がそうしようと決めたら、それに従うだけだと前から決めていたからだ。

 だから

「まぁ、全員殺すなとは言われてないからいいだろう」

 と決めたら、それに反対することはしない。

 刀身が一歩踏み出し、それに反応して、白銀隊長の男が「それ以上近づいたら問答無用で殺す」となんとも人の良いことを言って、

 死んだ。

 頭から二つに斬られ、他の隊員はそれに気付けない。

 彼らは全員、刀身が動いたことにすら気付かない。

 彼らは刀身の残像を見ているうちに全員隊長の跡を追った。

 それを見ていた武力を持たない民は絶望に近い感覚を味わいながら、死に、倒壊する家ごと押し潰された。

 刀身が走り、刀身の姿がかき消え、人の視界にはとらえられなくなったが、通った跡ならすぐにわかった。

 刀身が通った後には残骸が残ったから。

 出店の残骸、人の住む家の残骸、人だった物の残骸。

 それらが飛び散り、土気色の中にかすかに赤色が混ざり、見るものに絶望を与える絵を描いていく。

 急に、破壊は止まる。

 破壊する物がなくなったわけではない。

 刀身の目の前には黒い鎧を身に纏った軍がいた。

 約10名。

 軍と呼ぶには少なすぎるが、彼ら10人の能力を考えれば一国の軍と互角以上に渡り合える存在だった。

 その組織の名は黒鉄(くろがね)、大罪大国の最強部隊だった。

 その中の1人の線の細い男が歯をガチガチと鳴らし、後ろを見て顔を蒼くし、その場にへたり込み、失禁する。

 仲間の1人が男の肩に触れて、心配するように声をかけ、へたり込んだままの男は、

「わああああぁぁぁああっあっあぁ‼︎‼︎いやっ‼︎あぁぁあ‼︎‼︎いやだぁ‼︎‼︎死にたくないぃ‼︎‼︎死にたくないぃ‼︎‼︎うわぁ‼︎‼︎あぁぁああああぁ‼︎‼︎」 

 狂ったように叫ぶび、後ろ向きに刀身を見ながら体を引きずるように下がる。

 その男の様子を不思議に思いながら「どうした」と男の肩に触れた男が訊く。

 へたり込んだ男は、1秒先を見ることが出来る能力を持っていて、刀身が前に立つ前には刀身が目の前に立っている未来が見え続けていて、それを不思議思いながらも隊長の言う通り、1人を殺すだけの簡単な任務だと思っていた。

 刀身が目の前に立った瞬間から、希望なんて幸せなものは一瞬で消えた。

 男の目には今、首が胴から離れた仲間や、内臓と血を撒き散らす仲間や、体を縦に斬られた仲間しか見えない、刀身の姿は見えず、恐る恐る後ろを見たら、もう豆粒よりも小さくなった刀身のシルエットと崩れ出した建物があった。

 そして、彼は能力を切った。

 目の前の絶望しかない現実を直視する。

 まだ終わっていない世界に安堵することなんてできない未来を知りながらも、どうせ死ぬなら、みんなと同じで、ちゃんと戦って死にたい。

 震える足を動かして、腰の剣に手を当て、引き抜き、

 自分の首に当てて引く。

 飛び散る様子は噴水のようだった。

 人の体は、意識よりも無意識を優先することもある。

 今回がそれだ。

 仲間の自死に動揺した黒鉄隊員は、全員首をはねられた。

「自死、か」

 つまらなそうに言って、振り返り、残りの黒鉄隊員3名が、剣の柄に手をかけようとして、首がとぶ。

「はぁ、面倒だな」

「一気にやれば?」

 そうするか、と、鞘の言葉に刀身が肯定して、刀の柄を握る。

「王斬『空間切断』選斬『選択切断』」

 鞘が言い終わるのに合わせて、刀身が刀を振るう。

 1秒で、千撃。

 街も、その奥に立っている城も、纏めて斬る。

「これで終いか」

 刀身がため息をつきながら言ったが、崩れ落ちる城のあるところよりも上の部分がなくなった。

「・・・・・・・・・・・そんなことなかったな」

 悠々と、城の崩れた残骸まで歩き。

 瓦礫の山を登る。

 そこにはそこそこなのが7人。

 子供が1人。

 子供の方はただただ弱いだけの存在だった。

 気にする必要はないだろう。

 警戒しているのは3人、3人は国の状況に唖然としていて、残り2人は今からでも和解ができるかどうかを探っているらしいが、無理だろう。

「全員で、彼を殺しましょう」

 やはりな。

 刀身がそう思ったのと同時に、刀を振ろうとし、体が動かないことに気づく。

 『怠惰』の能力だろう。

 刀身からすれば、1番厄介な能力。

「ねぇ、この男例外だわ」

 刀身が動けないことをいいことに、幹部が悠々と話す。

「例外なのか、お前の能力でこちら側に引き摺り込めていたならやりやすかったのだが」

 そう言ったのは先程全員で刀身を殺すといった男で称号は『傲慢』だ。

「確かに、殺しやすくなってただろうよ」

 手を握ったり開いたりしながらそう言って、刀身に近づいてきたのは『憤怒』その称号にふさわしく、刀身の事を怒りの形相で睨みつける。

「殴るのはやめてくださいね。前にも言いましたけど、僕が止めている人は絶対に壊れない物体と同じなんですから」

 『怠惰』が片目だけを開いて『憤怒』に忠告する。

 片目が乾き、目が痛くなってきたらもう片方の目で見てから開けていた目を閉じる。

 『怠惰』がいつもやってる方法だ。

「わーてるよ、何度も言わなくていい」

 そう『憤怒』は言ったが、その事を知らなかった刀身は、ほう、そうなのか。と思う。

 ならば毒などが効くのか。

 アイツはそんなこと言ってなかったな。

「まだ攻撃するなよ、俺も創るから」

 そう言った長身の男は地面に手を当てて、ぶつぶつと呟く。

「我が能力によって命ず、この地で死した者たちよ、我が名に従い、強力な力、防御力を持ち、人に近い大きさで、生まれろ」

 鞘が、刀身の頭に直接、『強欲』の言った事を復唱する。

 鞘が前に創ったてれぱしーというものの機関を使っているのだろう。

 さて、そろそろ斬るか。

 そう思った時には、『強欲』の作り出した生物は完成していた。大きさは人の約2倍くらいで、手足だけでなく、顔の部位も全てその小さい体に無理矢理つけられていた。

 その醜悪な見た目に、7人のうち2人しかいない女性である『色欲』と『暴食』、そして『嫉妬』がその見た目に嫌悪感を示し、創った本人である『強欲』も、顔を両手で覆っていた。

「気持ちわりーな」

 と言った『憤怒』

「俺は気にならん」

 あ?

 と、『憤怒』が振り向いたが、体は連動せず、地面へと首より先に倒れ地に付した。

「なっ!何で僕の能力が外れてるの!ずっと見てたのに‼︎」

 最初に声を上げたのは『怠惰』であり、他は呆けていた。

「王斬『空間切断』は空間を切って、

 選斬『選択切断』は斬るものを選んで、

 襲斬『概念切断』は選択切断でも切れない、生死、時間、電気、空間も斬れる。当然、能力も。

 わざわざ空間切断と分けてるのは空間切断が1番使用頻度が高いから」

 『怠惰』の質問には鞘が答え、それを聴きながら『怠惰』はバラバラに刻まれた体を支えることが出来ず、地に落ちる。

「暴食ぅぅ!」

「ガァ‼︎」

「やれ!不心死ふしんし‼︎」

 『傲慢」が叫び、その叫びに重ねながら、『暴食』が口を開く。

 『強欲』も自分の創った怪物に名をつけ、命令を下す。

「『概念切断』」

 刀身が呟き、

「『空間切断』」

 鞘が刀身の声に重ねて言う。

 刀身の速度は『暴食』に口を閉じる時間すら与えない。

 一つが2つに分かれ、それが倒れるより先に、『嫉妬』が刀身のステータスをコピーし、刀身に襲い掛かる。

 普段なら、刀身の速度に慣れていない『嫉妬』は城壁や家々にぶつかっていただろうが、その家も壁も全て刀身が切ってしまっていたため、そんな終わり方はあり得ない。

 刀身が『嫉妬』を見失い、『嫉妬』が刀身の速度に慣れず持っている武器がかすりもしない。

「ふむ、面倒だ」

 一周。

 刀を構えたまま刀身は周り、遠くで土埃が立ち、二つの物体が何度も跳ねる。

 物体が飛んでいった後には、赤黒い液体が途中まで真っ直ぐに付いていた。

 物体が跳ねるのやめた時、人の言葉ではないものを叫びながら『強欲』が不心死と名付けた怪物が刀身に襲い掛かり、刀の刃が怪物に当たり、体を薄く傷つけ、怪物は倒れ、二度と立たなかった。

「『選択切断』でこいつに与えられた命だけ斬った」

 鞘が求められてもいない説明を言う。

「そんな」

「なぜだ」

 『強欲』は膝をつき倒れ、『傲慢』は目を見開き問う。

「なぜ、私の能力が効かんのだ」

「いや、効いてたさ。斬ったから効果がなくなっただけだ」

 刀身はこともなげに言って、刀を横に一閃。

 速すぎて見えなかったその刀は、走って逃げ出していた『色欲』

 立ったまま呆然としていた『傲慢』

 失意のまま立つことができずにいた『強欲』を切り裂いた。

「さて、どうするか」

 呟き、戦い、否。

 蹂躙の間ずっと瓦礫に隠れていた子供を見る。

 年は8つ程で、今も頭を抱えて震えている。

 それを見た瞬間にリオルが「終わったぽいね」とやってきたので、刀身は鞘を鞘に収め、

「面倒だ」

 そう呟いた。

「うん?何が?」

「何でも」

 オッケー。とリオルは言ってから、まっすぐ行ってて、僕やることがあるからと言って、刀身は走り出した。


 ドッ、と何かを蹴るにしては重すぎる音がしてから「もう大丈夫だよ」と優しく語りかけてくる声があって、目を開いた。

 目の前には人が沢山いた。チラリと見える景色の中には出店もあった。

 今までのは夢だったんだ。

 そう思ったが、すぐに違うことに気がついた。

 周りの人は見たことのない服を着て、聞いたことのない言葉を話し、出店で売られているものに見覚えのあるものはなかった。

 少年は、刀身の蹂躙によって命を落とさず、リオルによって異世界に飛ばされたのだ。 

 歳は8歳。

 能力名は『棚からぼた餅(アンアンラッキー)

 自分にとって不幸だと思うことが有れば実際それは運の良かったことである能力。本人が気付けないことが多い。

 少年は当然この世界の言葉など読めない。

 遠くに赤い門のようなものがあり、その下にぶら下がっている大きな赤い提灯に、『雷門』と書かれてあることなんて、分からなかった。

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