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k02-27 俺の人生の全て

「――! おい、そこのお前! 止まれ!」


 こっちに気づいた兵士が銃を向けてくる。


 ……ふん、構えがまったくの素人だな。



 懐に隠した一般兵装の銃を抜き、そのまま2発くれてやる。


 正面に居た2人の肩を正確に撃ち抜く。



 慌てて反撃してくる周りの兵士達。


 だか、それよりも早く付近の塀に身を隠す。



 たかだか1人と侮ってるのか、一般兵装での反撃。


 ナメられたもんだ。


 銃声が鳴りやむ一瞬の隙を突いて、塀から顔を出しもう1発!


 物陰から身体を半分以上曝け出してこっちを狙ってたマヌケをさらに1人仕留めた。



 どうやら敵方の練度はそこまで高くないらしい。


 もしくは、C.S.C本社の方に戦力を集中させたのか……。




 さて、どう動く?


 慎重に様子を伺うと、左右の橋からもわらわらと人が集まってくるのが見える。


 いいね、思惑通り――!




 増援が来る前に、さらにもう1人を仕留める。



 さて……。奇襲でここまでは一気にやれたが、こっちが素人じゃないと分かれば向こうも本腰を入れてくるだろう。


 思惑通りっちゃそうなんだが……



 言ってる側から――!!


 弾丸が雨のように激しく撃ちつけられ、隠れてる塀が砕けていく!



 少なくとも半分くらいは集まってきたか!?



 どうにか合間を縫って反撃するが、左肩に1発貰う。



 ……っ!


 大丈夫だ。


 幸か不幸か、手元にあるのは小銃だけだ。


 片手だけでもありゃどうにか撃てる!



 弾切れになった一般兵装を捨て、さっき敵から拝借した魔兵器に持ち替える。


 インジケータは……緑!


 どうやら混乱の中魔兵器のライセンス制御の切り替えまでは手が回らなかったらしい。

 ついてるぜ!



 今にも崩れそうな壁から飛び出し、敵のど真ん中に向けて1発打ち込む!


 そのまま次の遮蔽物へ滑り込む!



 放たれた弾は火球となり、着弾と共に――爆発!


 軽装の敵兵が吹き飛ぶ!


 ヒュ〜。やっぱ魔兵器は頼りになるぜ!



 残りは5発か……。


 重装備の奴らやライドアーマーはどうにもならんが、これだけあれば半分以上は……。




 ほんの少し希望が見えてきた



 ――次の瞬間




 バリバリという放電音が俄に耳に入る


 ――やばい!!



 横っ飛びで物陰から退避しようとしたが、遅かった!


 とてつもない衝撃が走り、粉々になったブロック塀諸共吹き飛ばされる!!


 強風に飛ばされるゴミ屑のようにゴロゴロと転がり、付近の植え込みにぶつかり止まる。



 立ち昇る砂埃の煙の向こうでは、ライドアーマーが腕部に装着した大型銃をこっちに向けている。


 銃身からはバチバチと音を立て、紫色の電光が走っている。



 ――小型電磁砲。


 おそらくC.S.C社の新型だ。



 まぁ、遠目で見た時から分かってたが……。


 あの威力……。


 この辺にある遮蔽物じゃ何処に隠れてもムダか……。



 まぁ、どのみちもう動けもしないが。


 自分の足元を見る……。


 ズボンは血で真っ赤に染まり、もはや足の形すら形成してない。



 後は悪あがきだ。


 遠退く意識の中、手に持った魔兵器の弾をありったけ打ち込んでやる。


 だが、ライドアーマーは愚か、近くに居る重兵装の兵士ですらまともなダメージは通ってなさそうだ……。



 カチカチ、と魔兵器が弾切れを伝える。


 頭から流れて来た血が視界を赤くそめていく。



 はぁ……。


 どうだ? 1人にしちゃよくやった方だろ?


 後は頼んだぜ。




 そっと目を閉じようとしたとき……


 ――想定もしていなかった事態が起きた!




 突然目の前に飛び出してきた人影が、両手を広げ俺の前に立ちはだかる。



「私は、ペオニー・バインド・ウィード! 市長の娘よ!」



 何考えてんだこいつは!?


「……バ、バカ! こんな前に出て来るんじゃねぇ!!」


 どうにか絞り出した俺の声など気にもせず、ペオニーはその場で続ける。



「取引きしましょう! もしこの人を見逃してくれれば、私はあなた達に協力するわ!」


「もう充分奴らの注目は集めた! 俺の事はいいから、後は早く逃げろ!」


「――うるさい! 黙ってて!! 死にそうなあんたを置いて逃げるなんて出来る訳ないでしょ! ――最初からそんくらい気付きなさいよ、この役立たず!!」


 そう言ってボロボロと涙を流すペオニー。


 何言ってやがる?


 傭兵なんてただ金で雇っただけの道具だろ。お前自身事あるごとにそう言ってたじゃねぇか……!!




「……何かの罠かもしれん、気を付けろよ!」


 そう言って、腰で銃を構えたまま距離を詰めてくる。


 目の前まで迫った兵士のうち1人が、ペオニーに銃を向けたまま叫ぶ。



「"鍵"は持っているな!?」


「……コレよ」



 そう言って、首からネックレスを外し手に持って見せる。


 慎重にそれを受け取る兵士。



「……聞いていた特徴と一致する。よし、その娘を連行しろ。その男は……殺しておけ」


「――! ちょっと! 話が違うじゃない!!」


 その発言を聞いて、銃を押し退ける勢いで敵兵に詰め寄るペオニー。


 しかしすぐさま傍に居た兵士に取り押さえられる。



 今度は近くに居た別の兵士が、詰め寄る。


「おい、待て! 我々“波間の民”は無益な殺傷はしない! あんた達“協会”ともそういう約束になってるだろ!? 彼は捕縛した上で治療する!」



 なんだ? 仲間割れ……か?



「……チッ、余計な事を。……いいか、こっちは貴重な人材を何人もやられたんだ。これ以上こんな事にリソースを避く訳にいかん! 不安要素はとことん潰しておく」


 そう言って男は俺に銃を向ける。



「――止めて! お願いだから!! なんでも言う事聞くから!! ――痛ぃっ!!」


 敵兵が、暴れるペオニーを押し倒し馬乗りになって押さえつける。


 顔を地面に押しつけられ、苦悶の表情を浮かべる。

 それでも諦めず、こっちへと向かって必死に手を伸ばすペオニー――



 止めろ、


 止めてくれ。


 そいつに乱暴な事をするな……!



 どうにか、どうにかほんの少しでも、あいつの方へ向かって俺も手を伸ばす。




 神様……いや、俺に神に願う資格なんか無いってんなら悪魔でも何でもいい。


 俺の命も魂も何でも差し出す!!



 誰か……!


 誰かそいつを助けてくれ!



 そいつは




 ――俺の“人生”の全てだ!






 俺の頭に狙いを定め、銃の引き金が引かれる。



 乾いた銃声が鳴り響き俺は目を閉じた。











 ……それから何秒経っただろうか。




 どうやら俺はまだ生きてるらしい。




 状況も分からずそっと目を開ける。





 ………




 俺の祈りは……



 一体、()()届いてしまったんだろうか





 神と呼ぶには余りにも禍々しく


 悪魔ですら恐れを為して逃げ出すだろう




 この世の物とは到底思えない


 絶望的な威圧感を放つ異形の人影が




 ――俺を庇うように立ちはだかっていた。

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