k01-45 私の幼馴染が魔王と呼ばれるに至るきっかけ 【挿絵あり】
「ど、どうなってる!?」
うろたえる男達。
そんな男達に向き直り、毅然とした声で告げる。
「私が戦う理由はもうなくなりました。あなた達はそうはいかないのかもしれませんが……ここは引いてください。でなければ次はあなた達の……首を落とします」
そう言って爪を構えるアイネ。
「――! て、撤退! 撤退だ!」
男の掛け声を合図に一目散に逃げていく。
それを見届けると同時に、アイネの手足覆っていた黒い影は消え元の普通の手足に戻っていた。
白金に輝いていた髪と瞳も元通りの深い蒼色へと戻る。
『ふぅ……ギリギリだったな』
「今の……何だったの!?」
『主よ、お互い聞きたい事も山ほどあるが……すまない、暫しお別れだ』
「え!?」
『心配はいらない。幾ばくすれば自然とカムイは戻る。そうすればまたこうして言葉を交わすことも出来よう』
「え、ちょっと? カムイって? ねぇ、大丈夫なの?」
話しかけてみてもシャドーウルフェン……ファントムの返事はない。
「……何だったんだろ……後でマスターに聞いてみよう。とりあえずホームに戻らないと……」
そう言って、アイネは藪を掻き分け姿を消した。
ーーーーー
アイネがその場を離れて直ぐ後。
付近の茂みがガサガサと揺れ、中から2つの人影が表れる。
ジンとシエンだった。
ジンはアイネが歩いていった方を見て呟く。
「心配して見に来てみりゃ……はぁ、何だよあれ!? 世の中まだまだ分からない事だらけだな」
そう言って頭を抱えるジンに、意地悪そうにシエンが言う。
「だから言ったでしょう。『この世の全てに飽きた』だなんて。いくらあんたでも奢りが過ぎるわよ」
「へいへい。反省します。にしても、最初にあの理論を聞いた時は不可能だって一瞥したもんだが……。まさか実現する奴が表れるとはねぇ。しかもそれがシルヴァントのひ孫……」
茂みから出たシエンは、黙って地面に落ちた牙のような物を拾い上げる。
「人とマモノが心を通わせる……ね。なぁ、この世界にはマモノを使って敵と闘うような奴って居るのか?」
「……キプロポリスじゃ無いわね。エバージェリーではそういう闘い方もあるとは聞いたけど。確か、マモノ使いとか呼ばれるんだったかしら」
「マモノ使い……ちょっと違うなぁ。そりゃ調教やら魔術でマモノを操る感じのやつだろ? そうじゃなくて、何ていうかマモノに信頼されて、もっと崇高な感じの……」
「……さあね」
「俺の国じゃ居たんだよ。お伽話の中の存在だけどな。
――“魔王”」






