第九十六話「十二使徒・第四の刺客」
地面の亀裂から噴き出す、黒い靄を見据えながら、零たちは、静かに、武器を構えた。
「――出てこい」
零の呼びかけに応えるように、靄の中から、これまで対峙してきた者たちとは、また異なる、しかし、より洗練された気配を纏った者が、姿を現した。
「――我ハ、十二使徒ガ一柱。コノ寺院ノ、崩壊コソ、我ラガ、真ノ目的」
その言葉に、零は、眉をひそめた。
「御神体を、奪うことじゃ、なかったのか」
「――御神体ハ、単ナル、布石ニ過ギヌ。コノ地ノ、信仰ノ、象徴タル寺院ソノモノヲ、崩壊サセルコトコソ、真ノ狙イ」
その残酷な告白に、零の胸の奥で、強い怒りが、燃え上がった。
「――人々の、信仰の場所を、こんな形で、踏みにじるなんて」
「――絶望トハ、希望ノ喪失カラ、生マレル。人々ガ、心ノ拠リ所ヲ失エバ、絶望ハ、コノ地全体ニ、広ガル」
十二使徒の言葉には、これまで以上に、深く、そして、計算された、悪意が、滲んでいた。
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戦いが始まると、十二使徒は、以前対峙した者たちを、遥かに、凌駕する、実力を、見せつけてきた。
「――ッ!」
零は、十二使徒の、鋭く、正確な攻撃を、辛うじて、躱し続けた。
「熊谷、前へ!」
「おうよ!」
熊谷の盾が、正面からの攻撃を、受け止める。だが、その衝撃は、以前にも増して、重いものだった。
「――くっ……! この力……!」
「花霞、夜、援護を!」
零の指示に、花霞と夜が、それぞれ、側面から、攻撃を、仕掛けていく。だが、十二使徒は、それすらも、涼しい顔で、対応していった。
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「――貴様ラノ、成長、確カニ、認メヨウ。ダガ」
十二使徒が、静かに、しかし、確かな余裕を持って、告げた。
「――我ハ、コレマデ対峙シタ、十二使徒ノ中デモ、最モ、戦闘ニ、特化シタ者。貴様ラデハ、届カヌ」
その宣告に、零は、拳を、握りしめた。
(このままじゃ、以前と、同じことの繰り返しだ)
だが、零は、これまでの旅で、確かな、成長を、遂げてきていた。
「――俺たちは、もう、以前とは、違う」
零は、静かに、体の奥の、あの熱を、意識した。エルナとの出会いを経て、零の力は、また、新たな段階へと、進化しつつあることを、零自身、薄々、感じ取っていた。
(病を、ただ、糧にするだけじゃない。それを、受け止め、そして、他者と、分かち合う力)
その、新たな理解と共に、零の周囲に、これまでにない、確かな光が、揺らめき始めた。
「――ナ……ナンダ、コノ、力ハ……!」
十二使徒が、明らかな、動揺を、見せた。
見知らぬ国の、崩れゆく聖域の中で、零の、新たな力の片鱗が、いよいよ、その真価を、発揮しようとしていた。




