第九十四話「雪山の死闘」
四天王との戦いが始まると、これまでの旅で培ってきた、確かな連携が、いかんなく発揮された。
「熊谷、前へ!」
「おうよ!」
熊谷の盾が、四天王の靄の猛攻を、正面から、受け止める。花霞と夜が、それぞれ、側面から、鋭い攻撃を、仕掛けていった。
「――クッ、コノ連携、以前、対峙シタ者ヨリモ、洗練サレテイル」
四天王が、明らかな、動揺を見せた。
零は、剣を構えながら、静かに、体の奥の、あの熱を、意識した。
(この国の、人々の、心の拠り所を、守るために)
胸の奥で、これまで以上に、確かな、光が、揺らめき始めた。
「――俺は、この国の、信仰を、絶対に、守る」
その言葉と共に、零は、渾身の力で、剣を、振るった。
「――ッ、グァァァ……!」
四天王が、大きく、よろめく。
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だが、四天王も、簡単には、引き下がらなかった。
「――マダダ! 我ガ、コノ場所ヲ、去ルコトハ、ナイ!」
四天王は、寺院の奥、御神体が、安置されているであろう場所へと、後退しながら、なおも、抵抗を続けた。
「――逃がすものか!」
零は、その後を、追った。
寺院の奥、そこには、これまで見てきた、どんな像とも異なる、荘厳な、御神体の姿が、黒い靄に、覆われるように、安置されていた。
「――この、御神体の力を、我ラガ主ノ、糧トスル」
四天王が、そう告げながら、御神体に、さらなる靄を、纏わせようとした。
「――させない!」
零は、渾身の力を込めて、四天王へと、斬りかかった。
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その一撃は、これまでの旅で積み重ねてきた、確かな力の、集大成とも言えるものだった。
「――ッ、グァァァァァ……!」
四天王の、断末魔にも似た、悲鳴が、寺院全体に、響き渡った。
「――バ、馬鹿ナ……! コレホドノ、力ヲ……!」
四天王は、大きく、体勢を、崩しながら、後退した。
「――今日ハ、コレマデダ。ジャガ、覚エテオケ」
その言葉を最後に、四天王は、黒い靄と共に、姿を消していった。
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戦いが終わった後、御神体を、覆っていた、黒い靄も、次第に、薄れ、消えていった。
「――終わった、みたいだな」
零が、荒くなった息を整えながら、そう呟いた。
寺院の僧侶たちが、驚きと、感謝の入り混じった表情で、駆けつけてきた。
「――御神体が、無事に……! 本当に、ありがとうございます……!」
僧侶の一人が、涙ながらに、頭を下げた。
零は、静かに、御神体を、見つめた。
「これからも、この国の、人々の、心の支えで、あり続けますように」
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その夜、零たちは、寺院に、一時的な、宿を、借りることになった。
「――今回も、無事に、解決できて、良かったわね」
聖が、安堵の表情で、そう呟いた。
零は、静かに、頷きながらも、心の中で、あの、エルナのことを、改めて、思い返していた。
(エルナ、今頃、どうしてるんだろうな)
答えの出ない、その問いを、胸に抱えながら、零は、静かに、夜空を、見上げるのだった。
見知らぬ国の、古都の寺院で、零たちは、また一つ、確かな勝利を、収めていた。だが、その心には、エルナという、新たな存在への、複雑な想いが、静かに、しかし確かに、根付き始めていた。




