第九十三話「四天王・第三の刺客」
エルナとの出会いを経て、零たちは、この国での、次なる目的地――南方の、古くからの信仰の中心地を目指し、旅を続けていた。
「――エルナのこと、まだ、気になるな」
零が、道中、ふと、そう呟いた。
「あの子、きっと、これからも、悩み続けるんでしょうね」
聖の言葉に、零は、静かに、頷いた。
「でも、いつか、必ず、自分の意思で、選べる日が、来ると、信じたい」
⸻
南方の、古都に近づくにつれ、零たちは、これまでの旅で幾度となく感じてきた、あの、重苦しい気配が、次第に、強まっていくのを、感じていた。
「――この辺り、既に、何かが、いるみたいね」
夜の指摘に、一同は、緊張を、強めた。
古都に到着すると、そこには、これまでの旅で見てきた、どの光景とも異なる、しかし、同じく、深刻な、混乱が、広がっていた。
「――これは……」
聖が、絶句する。街の広場には、多くの人々が、集まり、恐怖に、震えていた。
「一体、何が起きてるんですか」
零が、近くにいた住人に、尋ねると、その人物は、震える声で、答えた。
「――寺院の、御神体が……! 何者かに、奪われてしまったんです……!」
その言葉に、零たちは、顔を、見合わせた。
「御神体……。この国にとって、大切なものなんですか」
「はい……! 何百年もの間、この国の、人々の、心の拠り所として、大切に、祀られてきた、神聖な像なんです……!」
その説明に、零は、静かに、拳を、握りしめた。
(また、強い想いが、宿る場所を、狙われたのか)
⸻
寺院へと向かうと、そこには、これまでの旅で幾度となく感じてきた、あの、重苦しい気配が、確かに、漂っていた。
「――ヨウヤク、来タカ」
聞き覚えのある、こもった声。寺院の奥から、これまで対峙してきた者たちとは、また異なる、しかし、同じく、禍々しい気配を纏った者が、姿を現した。
「――我ハ、四天王ガ一柱。コノ国ノ、信仰ノ象徴タル、御神体ヲ、既ニ、我ラガ手中ニ、収メタ」
その宣告に、零は、剣を構えた。
「その御神体を、返してもらう」
「――抗ウカ。ヨカロウ」
四天王が、黒い靄を纏わせながら、迫ってきた。
見知らぬ国の、古都の寺院で、零たちの、新たな戦いが、今、始まろうとしていた。この国の、人々の心の拠り所を、守り抜くために。




