表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病魔喰らい ~世界最弱の病人は、世界を旅して神を超える~  作者: 伝説の男前
第一部 第一章「絶望編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/122

第八十五話「ヒマラヤを臨む」

ガンジス川を、さらに遡ること数日、零たちは、ついに、川の源流に近い、山岳地帯へと、足を踏み入れた。


「――あれが、ヒマラヤ山脈……」


聖が、遠くに聳える、雪を頂いた、途方もなく高い山々の連なりを見て、感嘆の声を漏らした。


「これまで見てきた、どの山よりも、遥かに、高いべなぁ」


熊谷も、その圧倒的なスケールに、驚きを隠せない様子だった。


零もまた、その光景に、静かな畏敬の念を覚えていた。


(あの高さまで、登ることになるのか)


これまでの旅で、標高の高い場所での過酷さを、身をもって経験してきた零にとって、目の前の山々は、これまで以上の試練を、予感させるものだった。



麓の集落で、ガンジス川の水源に関する、詳しい情報を集めると、零たちは、いよいよ、本格的な登山の準備を、進めることになった。


「――この標高だと、これまでとは、比べ物にならないくらい、空気が、薄くなるはずよ」


聖が、心配そうに、零を見つめた。


「零、無理は、絶対に、しないでね」


「ああ、わかってる」


零は、静かに、そう答えながら、自分の胸に、そっと手を当てた。


(体は、これまで、着実に、丈夫になってきてる。でも、この高さは、未知数だ)


慎重に、しかし、確かな決意を持って、零たちは、山道を登り始めた。



登山は、これまでの旅の中でも、最も過酷なものとなった。


「――ッ、はぁ、はぁ……」


標高が上がるにつれ、零の呼吸は、次第に、荒くなっていった。以前ほどではないにせよ、確かに、体への負荷は、大きなものだった。


「零、大丈夫? 少し、休みましょう」


聖の気遣いに、零は、素直に、頷いた。


「……ああ、助かる」


以前の零ならば、無理をしてでも、前に進もうとしていたかもしれない。だが、これまでの旅を通して学んだ、「無理をしないことも、強さの一つ」という教えを、零は、確かに、自分のものにしていた。


「みんなの、ペースに、合わせてもらって、悪いな」


零がそう言うと、花霞が、静かに、首を振った。


「零殿。焦らず、休むことも、大切な戦い方にございます。以前、そう、お伝えしたはずですが」


「……ああ、そうだったな」


零は、少し照れくさそうに、笑った。



しばしの休息を挟みながら、零たちは、着実に、山を登り続けた。


「――思ったより、私たちも、この高さ、辛いわね」


聖の言葉に、夜も、静かに頷いた。


「うん、正直、私も、息が、上がってる」


その言葉に、零は、少し驚いた。これまで、常に、涼しい顔をしていた夜が、素直に、弱音を、口にすることは、珍しかった。


「夜も、辛いんだな」


「当たり前でしょう。私だって、人間よ」


夜の、少し拗ねたような返答に、零は、思わず、笑ってしまった。


「悪い、悪い。でも、そうやって、素直に、言ってくれると、こっちも、気が楽になる」


夜は、僅かに、頬を赤らめながら、視線を逸らした。


「……そう。なら、良かった」



夕暮れ時、零たちは、ようやく、その日の野営地に、辿り着いた。


眼下に広がる、雲海の絶景を、一同は、しばし、無言で、見つめていた。


「――綺麗、ね」


聖が、静かに、そう呟いた。


零も、その光景に、深く、心を打たれていた。


これまでの旅で、幾度となく、過酷な試練に、直面してきた。だが、その先に、こうした、息を呑むほどの、美しい景色が、待っていることもある。


「――明日には、水源に、辿り着けそうだべ」


熊谷の言葉に、零は、静かに、頷いた。


「ああ。もう少しだ」


見知らぬ国の、天にも届くような、雄大な山々の中で、零たちの旅は、これまで以上の試練を乗り越えながら、その真の目的地へと、一歩ずつ、近づいていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ