第八十話「次なる旅路」
港へと向かう道中、零たちは、これまでの中国大陸での旅を、改めて振り返っていた。
「――思えば、この大陸だけで、随分と、色んなことを、経験したな」
零が、そう呟くと、聖が、静かに頷いた。
「万里の長城、張家界、兵馬俑、農村地帯、そして、霊山。どこも、忘れられない場所ね」
「四天王とも、三柱、対峙したべなぁ」
熊谷の言葉に、零は、静かに頷いた。
「ああ。それに、新しい四天王が、既に、次々と現れてる。病神の力の、底知れなさを、改めて、実感させられたな」
夜が、腕を組みながら、真剣な表情で続けた。
「十二使徒も、まだ、他に、十一柱、残ってる。この先、どれだけの敵と、対峙することになるのか」
その言葉に、一同は、改めて、この戦いの、途方もない規模を、意識せざるを得なかった。
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「でも」
零は、静かに、しかし確かな声で、続けた。
「俺たちは、一つ一つ、確実に、前に進んできた。それは、間違いない事実だ」
零は、自分の胸に、そっと手を当てた。
「この体も、この力も、着実に、育ってきてる。日ノ本での経験、そして、この大陸での経験――その全てが、俺を、強くしてくれてる」
花霞が、静かに微笑んだ。
「零殿の、その成長。まことに、目覚ましいものと、存じます」
聖も、優しく頷いた。
「これからも、一緒に、前に進んでいきましょう」
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港に到着した零たちは、次なる目的地――インドへと向かう船の手配を、進めることになった。
「――聖なる河、ガンジス、か」
零は、船の手配所で見た、地図の一角を、静かに見つめた。
「どんな場所なんだろうな」
「わたくしも、詳しくは、存じませぬが……古くから、生と死が、深く結びついた、神秘的な信仰の地だと、聞いたことがございます」
花霞の説明に、零は、興味を引かれた。
「生と死、か」
その響きに、零は、なぜか、これまでの旅で感じてきた、様々な想いが、重なるような気がした。
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出港の準備を整えながら、零は、静かに、港の桟橋から、遠くに広がる海を見つめていた。
(この大陸で出会った、全ての人たちに、感謝を)
万里の長城の兵士たち、張家界の集落の人々、藤原家の人々ならぬ、農村地帯の村人たち、リンという少年、そして、霊山の麓の、あの母娘。
一人一人との出会いが、確かに、零の中に、大切な記憶として、刻まれていた。
「零殿」
花霞が、静かに、隣に立った。
「そなたの、その眼差し――以前にも増して、深みを、増しておいでのように、お見受けいたします」
「そう見えるか?」
「ええ。旅を重ねるごとに、そなたは、確かに、成長なさっておいでです」
その言葉に、零は、静かに、微笑んだ。
「花霞さんが、いてくれるから、こうして、前に進んでこられる」
「零殿……」
花霞は、少し照れくさそうに、視線を逸らした。
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船が、静かに港を離れていく。
甲板から、遠ざかっていく大陸の景色を見つめながら、零は、これまでの旅を、改めて、胸に刻んだ。
「――みんな、次の大陸でも、よろしく頼む」
零がそう言うと、聖、夜、熊谷、花霞が、それぞれ、力強く頷いた。
「おうよ!」
「もちろん」
「ええ」
「はい」
その頼もしい返事に、零は、胸が温かくなるのを感じた。
見知らぬ海の彼方に、新たな大陸――インドが、零たちを、待ち構えている。
そこには、どんな出会いと、どんな試練が、待っているのか、まだ、誰にもわからない。
だが、これまでの旅で培ってきた、確かな絆と経験、そして、決して諦めない意志を胸に、零たちは、次なる旅路へと、力強く、その一歩を踏み出していくのだった。
――中国編は、こうして幕を閉じ、零たちの旅は、次なる大陸、インドへと、その舞台を移していくのだった。




