第七十八話「病魔、また一つ」
商業都市での穏やかな日々を経て、零たちは、次なる目的地――大陸南方に位置する、古くからの霊山へと、向かうことになった。
「この山、古くから、皇帝たちが、天への祈りを捧げてきた、神聖な場所らしいわ」
聖が、地図を確認しながら、そう説明した。
「病神の狙いそうな、場所ってわけか」
零の言葉に、聖は、静かに頷いた。
「可能性は、高いと思う」
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霊山へと向かう道中、零たちは、麓の村で、思いがけない光景に出くわした。
「――お願いします……! どうか、娘を……!」
一人の母親が、聖教会ならぬ、この地の道士の元へ、泣きながら、駆け込んでいく姿を、零たちは目撃した。
「零、あの様子……」
聖の言葉に、零は、静かに頷いた。
「様子を見に行こう」
道士の家を訪ねると、そこには、高熱に苦しむ、幼い少女の姿があった。
「――娘は、三日前から、こうして、寝込んでおります。どんな薬も、効かず……」
母親の悲痛な訴えに、零は、これまでの旅で、幾度となく見てきた光景を、重ねずにはいられなかった。
「聖、頼む」
「わかってる」
聖が、すぐに、少女の元へと駆け寄り、治癒魔法をかけ始めた。だが、やはり、これまでと同様、根本的な改善には、至らなかった。
「――くっ……この病、また……」
聖の悔しげな声に、零は、拳を握りしめた。
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村の外れを調査すると、そこには、これまでの旅で幾度となく感じてきた、あの重苦しい気配が、確かに漂っていた。
「――ここにも、いるな」
零が身構えると、案の定、黒装束の使徒が、静かに姿を現した。
「――穢レナキ者ノ、気配。コノ山ノ、封印ヲ、解キ放ツ、邪魔ヲスルナ」
「この村の人たちを、これ以上、苦しめるな」
零は、剣を構えた。
戦いは、これまでの経験を活かし、比較的、速やかに決着した。使徒は、零たちの連携攻撃の前に、なす術なく、闇の中へと退いていった。
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村に戻ると、あの少女の容態は、使徒が退けられたことで、少しずつ、快方に向かい始めていた。
「――ありがとうございます……! 本当に、ありがとうございます……!」
母親が、涙ながらに、何度も、頭を下げた。
「もう、大丈夫。ゆっくり、休ませてあげてください」
零がそう告げると、母親は、深く安堵の息を吐いた。
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その夜、宿場で、零たちは、改めて、これまでの旅を振り返っていた。
「――こうして、一つ一つ、救っていくしかないんだよな」
零の呟きに、聖が、静かに頷いた。
「ええ。大きな計画の全貌は、まだ、見えないけど、それでも」
「目の前の人を、救い続ける。それが、俺たちのやり方だ」
零の言葉に、夜も、静かに頷いた。
「それに、こうして、一つ一つ、対処していくことで、少しずつ、病神の計画の輪郭も、見えてきてる」
夜の指摘に、零は、頷いた。
「ああ。強い想いが宿る場所、それを、次々と、狙ってる」
花霞が、静かに、地図を広げた。
「この霊山も、まさに、そういった場所にございましょう。恐らく、明日、山を登れば、また、四天王クラスの敵と、対峙することに、なるやもしれませぬ」
その言葉に、一同は、緊張を強めながらも、確かな決意を、それぞれの胸に、灯していった。
「よし、明日に備えて、今夜は、しっかり休もう」
零の言葉に、皆が、静かに頷いた。
見知らぬ大陸の、霊山の麓で、零たちの、次なる戦いへの準備が、静かに、しかし確かに、進められていくのだった。




