第七十七話「仲間の絆」
聖が、しっかりと休息を取った翌日、零たちは、これまでの旅について、改めて、じっくりと語り合う時間を持った。
「――みんな、聞いてほしい」
零が、宿の食堂の一角で、そう切り出した。
「これまで、それぞれが、それぞれのやり方で、頑張ってきた。でも、昨日の聖のことで、俺は、改めて、気づかされた」
零は、静かに、皆の顔を見渡した。
「無理をしてでも、頑張り続けることが、必ずしも、正しいわけじゃない。時には、休むこと、頼ることも、大事なんだって」
その言葉に、夜が、静かに頷いた。
「あんたも、同じでしょう。あんたの体、まだ、完全には、癒えてない」
「……ああ、その通りだ」
零は、素直に、その指摘を受け入れた。
「だから、これから、もっと、お互いのことを、気にかけあっていきたい。無理をしてないか、辛いことは、ないか」
熊谷が、豪快に頷いた。
「賛成だべ! 俺たちは、仲間なんだから、遠慮する必要、ねえべ」
花霞も、静かに微笑んだ。
「まことに、良きお考えかと」
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その日から、零たちの旅は、これまで以上に、互いを気遣う、温かいものへと、変化していった。
「――夜、あんたも、たまには、ちゃんと寝てる? 見張り番、いつも、率先して引き受けてるけど」
聖が、ある夜、夜に、そう尋ねた。
夜は、少し驚いたように、聖を見つめた。
「……別に、平気。私は、そういうの、慣れてるから」
「慣れてても、疲れは、溜まるでしょう。今日は、私が、見張りをやるわ」
聖の申し出に、夜は、しばらく躊躇っていたが、やがて、素直に頷いた。
「……わかった。ありがとう」
その素直な言葉に、聖は、嬉しそうに微笑んだ。
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熊谷もまた、これまで以上に、自分の状態を、正直に、仲間たちに伝えるようになっていた。
「――正直言うと、最近、腕の古傷が、少し、痛むんだべ」
熊谷が、そう打ち明けると、聖が、すぐに、丁寧な治癒魔法をかけてくれた。
「もっと、早く、言ってくれれば良かったのに」
「悪い、悪い。俺も、まだまだ、我慢する癖が、抜けねえべなぁ」
熊谷の言葉に、零は、思わず笑った。
「みんな、少しずつ、変わってきてるな」
「零殿も、その一人にございますよ」
花霞が、静かに、そう指摘した。
「以前の零殿は、無理をしてでも、前に出ようとする傾向が、ございました。ですが、近頃は」
「……確かに、そうかもな」
零は、素直に、その変化を、認めた。
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その日の夕方、零たちは、宿の近くの広場で、久しぶりに、のんびりとした時間を過ごしていた。
「――こうして、みんなでゆっくりするの、久しぶりね」
聖が、穏やかな表情で、そう呟いた。
「ああ、たまには、こういう時間も、大事だな」
零は、夕暮れの空を見上げながら、静かに、そう答えた。
「零殿」
花霞が、隣に座りながら、静かに口を開いた。
「そなたの体調、この頃は、いかがでございますか」
「……そう言えば、最近、あの咳の発作、ほとんど、出てないな」
零は、自分の胸に、そっと手を当てた。
「体、本当に、丈夫になってきてるみたいだ」
「良きことにございますね」
花霞は、優しく微笑んだ。
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夜になり、零は、静かに、一人、宿の窓辺に立っていた。
(みんなのおかげで、こうして、前に進んでこられた)
これまでの旅で、幾度となく、絶望的な状況に、直面してきた。だが、そのたびに、仲間たちの支えが、零を、前へと押し出してくれた。
「――みんな、ありがとう」
誰に聞かせるでもない呟きが、静かな夜の中に、溶けていった。
見知らぬ大陸での旅は、聖の一件をきっかけに、零たちの絆を、これまで以上に、深く、そして確かなものへと、育んでいくのだった。この絆こそが、これから先、さらに大きな試練に立ち向かうための、何よりの支えとなっていくのだった。




