第七十四話「古代の呪い」
十二使徒との激戦から数日、零たちは、傷を癒しながら、大河沿いの商業都市へと、無事に到着した。
「――すごい賑わいね」
聖が、活気に満ちた街並みを見渡しながら、感嘆の声を漏らした。
「これまで訪れた、どの都市よりも、大きいべなぁ」
熊谷の言葉に、零も、同意するように頷いた。
だが、その賑わいの裏で、この都市にも、また、静かな異変が、忍び寄りつつあった。
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宿を取った翌日、零たちは、街の市場で、気になる噂を耳にした。
「――最近、旧市街の方で、妙な呪いが、広まってるらしいぜ」
「ああ、聞いた聞いた。古い墓地の辺りで、亡くなった人たちが、夜な夜な、彷徨ってるとか」
その噂話に、零は、思わず反応した。
「すみません、その話、詳しく、聞かせてもらえますか」
商人らしき男は、少し驚いた様子を見せたが、快く応じてくれた。
「旧市街の外れに、古い墓地があってな。最近、そこから、妙な瘴気が、漏れ出してるって、噂になってるんだ。近づいた者が、次々と、原因不明の病に、かかってるらしい」
その話に、零たちは、顔を見合わせた。
(またか)
これまでの旅で、幾度となく耳にしてきた、あの言葉。この繁栄した都市にも、既に、病神の影が、忍び寄っているようだった。
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旧市街の墓地へと向かうと、そこには、これまでの旅で幾度となく感じてきた、あの重苦しい気配が、確かに漂っていた。
「――この気配、以前戦った、十二使徒のものと、似てる気がする」
夜が、鋭く指摘した。
「同じ個体、なのか」
零の問いに、夜は、慎重に頷いた。
「断言はできないけど、可能性は、高いと思う」
墓地の奥、古い霊廟のような建物の前で、零たちは、黒い靄が、じわじわと、地面から染み出しているのを、確認した。
「――ヨウヤク、来タカ」
聞き覚えのある、こもった声。靄の中から、以前対峙した十二使徒が、姿を現した。
「――お前……!」
零が身構えると、十二使徒は、静かに、しかし確かな警戒を滲ませながら、応じた。
「――先日ノ、借リヲ、返シニ来タ。ジャガ、今回ハ、貴様一人ノ相手ヲスル」
その言葉に、零は、剣を構えた。
「――あの人がいなくても、俺は、もう、逃げない」
零の言葉に、十二使徒は、僅かに嗤うような仕草を見せた。
「――威勢ダケハ、良イナ。ダガ、実力ハ、如何ニ」
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戦いが始まると、零は、以前の戦いとは、明らかに異なる、確かな手応えを感じていた。
(前より、動きが、見える)
十二使徒の攻撃の予兆、その一瞬の間――以前ならば、まったく捉えられなかったそれらが、今は、僅かながらも、見極められるようになっていた。
「――ッ!」
零は、迫りくる靄の一撃を、紙一重で躱した。
「花霞、夜、援護を!」
「はい!」
「わかった!」
花霞と夜が、それぞれ、側面から、鋭い攻撃を仕掛けていく。熊谷も、大盾を構えながら、堅実に、十二使徒の動きを、封じ込めていった。
聖の支援魔法が、パーティー全体を、力強く包み込む。
「――クッ、以前トハ、違ウ……!」
十二使徒が、明らかな焦りを見せ始めた。
零は、体の奥の、あの熱を、静かに、しかし確かに、引き出した。
「――俺たちは、もう、以前とは、違う」
その言葉と共に、零は、渾身の力で、剣を振るった。
「――ッ、グァァァ……!」
十二使徒が、大きくよろめく。零たちの連携が、確かに、以前よりも、洗練されたものへと、成長していた。
見知らぬ大陸の、古い墓地で、零たちは、以前苦杯を舐めさせられた相手に対し、確かな成長の証を、示し始めていた。




