第七十一話「十二使徒・第三の刺客」
農村地帯を後にした零たちは、西へと向かう道中、大きな川沿いの街道を進んでいた。
「この川、随分と、雄大ね」
聖が、滔々と流れる大河を見つめながら、感嘆の声を漏らした。
「この大陸を、南北に貫く、大河らしいべ」
熊谷が、地元の商人から聞いた話を、皆に共有した。
「この川沿いには、幾つもの大きな都市が、栄えてるらしい。次の目的地も、その一つだ」
零たちが目指していたのは、この大陸でも、屈指の規模を誇るという、商業都市だった。
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だが、道中、一行は、思いがけない襲撃に遭遇することになった。
「――見ツケタ」
聞き覚えのある、こもった声。街道の脇の茂みから、複数の黒装束の使徒が、姿を現した。
「――今度は、何体だ」
零が身構えると、五体の使徒が、それぞれ黒い靄を纏わせながら、包囲網を形成した。
「――我ラハ、十二使徒ノ一柱。貴様ノ成長ヲ、コレ以上、見過ゴスワケニハ、イカヌ」
その言葉に、零は、これまで対峙してきた使徒たちとは、また異なる、より統率の取れた気配を、感じ取った。
「十二使徒――」
「サヨウ。病神様ニ直接仕エル、十二人ノ精鋭ノ、一柱ダ」
その言葉に、零たちは、緊張を強めた。これまで対峙してきた使徒たちよりも、明らかに、格上の存在であることが、その気配から、伝わってきた。
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戦いが始まると、その実力差は、すぐに明らかになった。
「――速い……!」
零は、十二使徒の放つ、鋭く正確な靄の攻撃を、辛うじて躱し続けた。以前の使徒たちとは、比較にならない、洗練された動きだった。
「熊谷、前へ!」
「おうよ!」
熊谷の盾が、正面からの攻撃を受け止める。だが、その衝撃は、これまでとは、明らかに異なる重さを持っていた。
「くっ……! 重い……!」
「花霞、夜、援護を!」
零の指示に、花霞と夜が、それぞれ、側面から攻撃を仕掛けるが、十二使徒は、それすらも、涼しい顔で、躱していった。
「――貴様ラノ連携、既ニ、見切ッタ」
その言葉通り、十二使徒の動きには、これまでの敵にはなかった、余裕すら感じられた。
零は、拳を握りしめた。
(このままじゃ、まずい)
聖の支援魔法を受けながらも、零たちのパーティーは、次第に、追い詰められていった。
「――ッ!」
零は、迫りくる攻撃を、なんとか躱すが、その隙を突かれ、脇腹に、鋭い一撃を受けた。
「零!」
聖の悲鳴が響く。零は、痛みを堪えながら、それでも、剣を握る手を、緩めなかった。
「まだ、だ……!」
零の胸の奥で、あの熱が、静かに、しかし確かに、燃え上がろうとしていた。だが、十二使徒の圧倒的な実力の前に、それすらも、まだ、十分な力を、発揮できずにいた。
「――マダ、届カヌカ」
十二使徒が、静かに、しかし確かな確信を持って、そう告げた。
見知らぬ大陸の、大河のほとりで、零たちは、これまでで最も強大な、直接の脅威と、その真価を問われる戦いへと、突入していくのだった。




