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病魔喰らい ~世界最弱の病人は、世界を旅して神を超える~  作者: 伝説の男前
第一部 第一章「絶望編」

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第六十話「空中庭園の秘密」

張家界での戦いを終えた零たちは、この地に伝わる伝承を調べるため、近隣の集落を訪れることにした。


「この奇岩の連なりには、古くから、伝承があるそうよ」


聖が、集落の長老から聞いた話を、皆に共有した。


「大昔、この地には、天に近い場所に住まう、仙人たちの楽園――『空中庭園』があったと、言い伝えられてるの」


「空中庭園……」


零は、その響きに、微かな興味を覚えた。


「仙人たちは、人々の病や苦しみを癒す、特別な力を持っていたと言われてる。でも、ある日、その力を妬んだ、悪しき者たちによって、楽園は滅ぼされてしまった、と」


聖の説明に、花霞が、静かに口を挟んだ。


「もしや、その悪しき者というのが」


「――病神の、原型なのかもしれない」


零が、その言葉を引き継いだ。



長老に案内され、零たちは、伝承に伝わる「空中庭園」の跡地――切り立った岩山の頂上付近にある、古い遺跡へと向かうことになった。


険しい山道を進みながら、零は、自分の体の状態を、静かに確認していた。


(思ったより、平気だな)


標高の高い、険しい道のりにもかかわらず、以前のような、激しい息切れは起きていなかった。日ノ本での経験が、確かに、零の体を、着実に鍛えてくれていた。


「零、大丈夫?」


聖が、心配そうに尋ねる。


「ああ、思ったより、楽だ」


零の答えに、聖は、嬉しそうに微笑んだ。


「本当に、丈夫になってきてるのね」



遺跡に到着すると、そこには、苔むした石造りの建造物の跡が、静かに佇んでいた。かつての栄華を偲ばせる、精緻な彫刻の数々が、風化しながらも、その姿を留めている。


「これが、空中庭園の跡……」


聖が、感慨深げに、周囲を見渡した。


だが、その美しい遺跡の奥には、これまでの旅で幾度となく感じてきた、あの重苦しい気配が、色濃く漂っていた。


「――ここにも、いるな」


零が身構えると、遺跡の中心部から、黒い靄が、ゆっくりと立ち上り始めた。


「――ヨウヤク、辿リ着イタカ」


靄の中から、以前対峙した四天王とは、また異なる気配を纏った者が、姿を現した。


「――貴様ハ、コノ地ノ、封印サレシ力ヲ、解キ放トウトシテイル者ダナ」


零が問いかけると、その者は、静かに嗤うような仕草を見せた。


「イカニモ。カツテ、此処ニ栄エシ、仙人タチノ力。ソレヲ、我ラガ主ノ、糧トスル」


「仙人たちの力……。それは、人々を癒すための、力だったはずだ」


零の言葉に、四天王は、僅かに嘲るような響きを、声に滲ませた。


「癒シノ力モ、視点ヲ変エレバ、絶望ヲ増幅サセル、糧トナリ得ル」


その言葉に、零は、強い怒りを覚えた。


「そんなこと、絶対に、させない」



戦いが始まると、四天王は、これまでとは異なる、より広範囲に及ぶ攻撃を仕掛けてきた。


「――ッ、これは……!」


零は、遺跡全体を覆うように広がる、黒い靄の圧力に、思わず息を詰めた。だが、それでも、体は、確かに、その負荷に応えようとしていた。


「聖、皆に加護を!」


「わかってる!」


聖の光が、パーティー全体を包み込む。花霞と夜が、連携して、四天王の攻撃の隙を、執拗に探り続けた。


熊谷が、大盾を構えて、正面から、その圧力を受け止める。


「くっ……この重さ、半端じゃねえべ!」


「熊谷、まだやれるか!」


「もちろんだべ!」


零は、剣を握り直し、静かに、しかし確かに、心の中で呟いた。


(この遺跡に眠る、仙人たちの想いのためにも――)


胸の奥で、あの熱が、静かに、しかし確かに、燃え上がる。


「――俺は、癒しの力を、絶望のために使わせはしない」


その言葉と共に、零は、渾身の力で、剣を振るった。


戦いは、これまでにない激しさで続いた。だが、零たちの連携と、着実に育ってきた力が、次第に、四天王を追い詰めていった。


「――バ、馬鹿ナ……! コレホドノ、力ヲ……!」


四天王は、大きくよろめきながら、悔しげに呟いた。


「――今日ハ、コレマデダ。ジャガ、覚エテオケ」


その言葉を最後に、四天王は、黒い靄と共に、遺跡の奥へと、姿を消していった。



戦いが終わった後、遺跡には、静かな安堵が戻っていた。


「――終わった、みたいだな」


零が、荒くなった息を整えながら、そう呟いた。


聖が、遺跡の周囲を見渡しながら、静かに口を開いた。


「この遺跡に眠っていた、仙人たちの力――もう、二度と、悪用されないといいわね」


零は、静かに頷いた。


「ああ。この場所の平穏を、これからも、守っていけたら」


見知らぬ大陸の、幻想的な奇岩の地で、零たちの戦いは、また一つ、確かな勝利を収めていた。だが、四天王の残り一柱、そして、病神本体の存在は、依然として、大きな謎を残したまま、その旅を、さらなる先へと導いていくのだった。


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