表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病魔喰らい ~世界最弱の病人は、世界を旅して神を超える~  作者: 伝説の男前
第一部 第一章「絶望編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/125

第五十六話「大陸への上陸」

港に降り立った零たちを迎えたのは、これまで見てきたどの土地とも異なる、圧倒的なまでの活気だった。


「すごい人の数……!」


聖が、目を丸くしながら、辺りを見回した。石造りと木造が入り混じった、独特の建築様式の建物が、視界の果てまで連なっている。行き交う人々の数も、これまで訪れたどの街よりも遥かに多かった。


「言葉は、大丈夫かしら」


聖の心配に、零は、少し考えてから答えた。


「わからない。日ノ本のときは、なぜか自然に理解できたけど……」


港の役人らしき男に、零は、試しに声をかけてみた。


「すみません、少し、お尋ねしたいのですが」


「――ん? 何を言っておるのだ、お前は」


その言葉は、零には理解できたが、明らかに、日ノ本の言葉とは、異なる響きだった。だが、不思議なことに、意味は、自然と頭に入ってきた。


「零、今の、わかったの?」


聖が、驚いたように尋ねる。零は、少し戸惑いながらも、頷いた。


「ああ、わかった。……また、なんでかは、わからないけど」


夜が、興味深そうに零を見つめた。


「あんたの、その不思議な力、便利ではあるけど、やっぱり気になるわね」


「俺も、気になってる」


理由のわからない、この言語理解の力。日ノ本のときと同様、この大陸の言葉も、零には、自然と通じるようだった。だが、その仕組みは、依然として謎のままだった。



港の役人に、この国の情勢を尋ねると、様々なことがわかってきた。


「この大陸は、幾つもの国が、覇を競い合っておる。今、お前たちがおるのは、その中でも、比較的、安定した治世を敷いておる、大国の一角じゃ」


「万里の長城、というものについて、教えていただけますか」


零が尋ねると、役人は、少し誇らしげな表情を見せた。


「ほう、それを知っておるとは。あれは、この国の北方、異民族の侵入を防ぐために築かれた、途方もなく長い城壁じゃ。人の手で造られたものとしては、最大級のものと言われておる」


その説明に、零たちは、興味を引かれた。


「そこへ、行くことはできますか」


「行けぬことはないが……最近、その辺りでも、妙な噂を聞くのう」


役人の表情が、僅かに曇った。


「妙な噂、というと」


「城壁の一部で、原因不明の疫病が、広まっておるという話じゃ。兵士たちが、次々と、倒れておるとか」


零たちは、思わず顔を見合わせた。


(また、か)


これまでの旅で、幾度となく聞いてきた、あの言葉。この大陸にも、既に、病神の影が、忍び寄っているようだった。



役人から詳しい道のりを聞き、零たちは、万里の長城を目指すことになった。


「思ったより、早く、手がかりが見つかったわね」


聖が、そう呟くと、零は、静かに頷いた。


「ああ。でも、それだけ、脅威が、この大陸にも、深く根を張ってるってことなんだろうな」


夜が、腕を組みながら、真剣な表情で続けた。


「四天王の残り、恐らく、この大陸のどこかにいる。城壁の異変も、その関係かもしれない」


「行ってみるしかないな」


零がそう言うと、熊谷が、豪快に頷いた。


「おうよ。この大陸でも、俺たちのやることは、変わらねえべ。困ってる人を、助ける。それだけだ」


花霞も、静かに刀の柄に手を添えながら、頷いた。


「零殿、皆様。この地でも、共に、戦わせていただきます」



その日の夕方、零たちは、宿で旅の準備を整えながら、これから向かう大陸の広さに、改めて思いを馳せていた。


「地図で見ると、日ノ本の何倍もある広さね」


聖が、新たに手に入れた地図を、広げながら呟いた。


「万里の長城だけでも、この距離感……。この大陸を巡るのは、これまで以上に、長い旅になりそうだ」


零の言葉に、仲間たちは、それぞれ頷いた。


だが、その表情には、不安よりも、確かな決意が滲んでいた。


「零殿」


花霞が、静かに口を開いた。


「そなたの体、この大陸でも、変わらず、大切になさってくださいませ」


「ああ、わかってる」


零は、自分の胸に、そっと手を当てた。以前に比べれば、確かに、体は丈夫になってきている。だが、油断は禁物だと、これまでの旅で、身をもって学んでいた。


窓の外には、見知らぬ大陸の、賑やかな夜の街並みが、静かに広がっている。


零たちの、新たな旅路――中国編が、こうして、静かに幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ