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病魔喰らい ~世界最弱の病人は、世界を旅して神を超える~  作者: 伝説の男前
第一部 第一章「絶望編」

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第五十五話「次なる大陸へ」

船旅も、十日目を迎えようとしていた。


「もうすぐ、大陸が見えてくるはずよ」


聖が、地図を確認しながら、そう告げた。


零は、甲板に立ち、遠くの水平線を見つめていた。日ノ本での日々を思い返しながら、これから向かう、未知の大陸に、様々な想いを馳せる。


「――中国、か」


その響きに、日ノ本のときと同じような、しかし少し異なる感覚を覚えた。懐かしさというよりは、純粋な、未知への好奇心が、胸の中に広がっていく。


「零殿、何を、お考えでございますか」


花霞が、静かに隣に立った。


「これから向かう国のこと、考えてた。日ノ本とは、また違う文化がある国なんだろうな」


「ええ。万里の長城という、途方もなく長い城壁があると、聞いたことがございます」


「万里の長城……」


その名前にも、零は、微かな興味を覚えた。



その日の夕方、零は、これまでの旅を振り返りながら、仲間たちと共に、これからの計画を話し合っていた。


「病神の四天王、まだ、二柱、残ってる」


零がそう切り出すと、聖が、真剣な表情で頷いた。


「四天王は、四柱。もし、それぞれが、異なる大陸に潜んでいるとしたら――」


「中国にも、いる可能性が高い、ってことだな」


夜の言葉に、零は、静かに頷いた。


「それに、四天王の上には、まだ、十二使徒の残りと、そして、病神本体がいる」


その事実の大きさに、一同は、改めて、この戦いの、途方もない規模を、意識せざるを得なかった。


「気が遠くなる話だべなぁ」


熊谷が、腕を組みながら、ため息交じりに呟いた。


「でも」


零は、静かに、しかし確かな声で続けた。


「一歩ずつでいい。日ノ本で学んだこと、経験したこと――それを糧に、少しずつ、前に進んでいこう」


その言葉に、仲間たちは、それぞれ頷いた。


「零殿の、そのお言葉、まことに、力強きものにございます」


花霞が、静かに微笑んだ。



翌朝、ついに、遠くの水平線に、大陸の輪郭が見え始めた。


「見えたわ! あれが、中国大陸よ!」


聖の声に、零たちは、一斉に船首へと駆け寄った。


広大な陸地が、朝靄の中に、その姿を現し始めている。日ノ本の、こぢんまりとした島国の風景とは、また異なる、雄大なスケールを感じさせる光景だった。


「すごい……。これが、大陸か」


零は、思わず、感嘆の声を漏らした。


「あそこに、万里の長城があるのね」


聖が、期待に満ちた表情で、遠くを見つめた。


零は、自分の胸に、そっと手を当てた。あの馴染みの熱が、これまでにないほど、穏やかに、しかし確かに、体の奥に宿っているのを感じる。


(体も、力も、少しずつ、育ってきてる)


日ノ本での日々を経て、零は、確かな成長を、自分自身の中に、実感していた。まだ、完全に癒えたわけではない。だが、以前のような、脆さに苛まれる日々からは、確実に、一歩、前進している。


「みんな、行こう」


零がそう言うと、聖、夜、熊谷、花霞は、それぞれ力強く頷いた。


船は、静かに、しかし確かに、大陸の港へと、その舳先を向けていく。


見知らぬ大陸での、新たな旅の幕が、今、静かに開こうとしていた。


零たちの戦いは、まだ、始まったばかりだった。だが、これまでの旅で培ってきた絆と経験、そして、決して諦めない意志を胸に、零は、次なる試練へと、力強く踏み出していくのだった。


――第三章「日本編」、完。


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