表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病魔喰らい ~世界最弱の病人は、世界を旅して神を超える~  作者: 伝説の男前
第一部 第一章「絶望編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/125

第五十話「折れそうな心」

炎の一件から数日、都はまだ、完全には落ち着きを取り戻していなかった。


零たちは、火元の調査を続けていたが、これといった手がかりは、なかなか掴めずにいた。


「――どこにも、繋がりが見えない」


夜が、集めた情報を整理しながら、苛立たしげに呟いた。


「四天王の気配は、確かにあった。だけど、それがどこから来て、どこに向かってるのか、まるで見えない」


零も、焦燥感を募らせていた。


「病神の真の計画、か……」


あの四天王の言葉が、ずっと頭に残っている。だが、その正体に近づく糸口すら、まだ掴めていない。


そんな中、零の元に、思いがけない知らせが届いた。


「――白川郷から、使者が」


宿を訪れた使者は、青ざめた顔で、零に一通の文を手渡した。


そこに記されていたのは、以前救った村――白川郷の隣にある集落で、再び、原因不明の病が広まり始めたという報告だった。


「そんな……! せっかく、収まったと思ってたのに」


聖が、悲痛な声を上げた。


零は、拳を握りしめた。


(俺たちが、あそこで力を尽くしたのに)


これまでの旅で積み重ねてきた、様々な勝利。だが、それらは、決して「解決」ではなく、あくまで一時的な、局地的な対処に過ぎなかったのだと、改めて突きつけられた思いだった。


「零殿」


花霞が、静かに声をかけた。


「そのお顔、思い詰めておいでのご様子」


「……ああ、正直、少し、堪える」


零は、素直にそう吐露した。


「これまで、何度も戦ってきた。四天王も、二柱、退けた。でも、根本的な解決には、まるで近づけてない気がする」


その言葉には、これまで押し殺してきた、深い焦りと、疲労が滲んでいた。


紫苑が、静かに口を開いた。


「零殿。この戦い、恐らく、一朝一夕には終わりまへん。ですが」


紫苑の視線が、零をまっすぐに捉えた。


「あなたが救うてきた人々は、確かに、存在いたします。白川郷の村人たちも、藤原家の使用人たちも、あの炎から救われた子供も――皆、あなたのおかげで、今、生きております」


「でも、また新しい被害が」


「病は、また現れるでしょう。ですが、それは、これまでの救いを、無かったことにするものでは、ございません」


紫苑の言葉に、零は、静かに耳を傾けた。


「一つ一つの救いを、無駄と思わないでください。それは、確かに、意味のあることにございます」


その言葉には、深い説得力があった。だが、それでも、零の心の奥には、拭いきれない不安が、燻っていた。



その夜、零は、一人、宿の外の縁側で、月を見上げていた。


(俺は、本当に、みんなを、この世界を、救えるんだろうか)


これまで、多くの戦いを経て、力は確かに育ってきた。体も、少しずつ、丈夫になってきている。だが、目の前に立ちはだかる脅威の大きさは、それを上回るスピードで、姿を現し続けている。


「――何、辛気臭い顔してるの」


背後から、夜の声がした。振り返ると、夜が、いつものように、静かに立っていた。


「……夜」


「眠れないの?」


「ああ、ちょっとな」


夜は、零の隣に、静かに腰を下ろした。


「白川郷のこと、気にしてる?」


「……ああ」


「あんたのせいじゃない」


夜の言葉は、いつも通り、素っ気なかった。だが、その中に、確かな気遣いが滲んでいた。


「あんたは、あの村を、一度は救った。それは、事実。今回、また病が広まったのは、あんたの力不足のせいじゃなくて、相手が、それだけしつこいってだけ」


零は、しばらく黙り込んでいたが、やがて、小さく笑った。


「……お前、たまに、すごくいいこと言うな」


「たまに、は余計」


夜の返しに、零は、思わず声を上げて笑った。久しぶりに、心の底から、笑えた気がした。


「ありがとう、夜」


「別に。ただ、あんたが辛気臭い顔してると、こっちまで、調子が狂う。それだけ」


素っ気ない言葉の裏にある、確かな優しさに、零は、改めて、仲間たちのありがたさを噛みしめていた。


(まだ、折れるわけにはいかない)


心は、確かに、揺らいでいた。だが、それを支えてくれる仲間たちがいる限り、零は、まだ、前を向き続けることができる。


夜空に浮かぶ月を見上げながら、零は、静かに、次なる一歩への決意を固めていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ