第百十六話「宇宙管理者の影」
噴き出す、黒い靄を、前に、零たちは、慎重に、書庫の、扉へと、進んでいった。
「――ヨウヤク、来タカ」
聞き覚えのある、こもった、声。靄の中から、これまで、対峙してきた者たちとは、また、異なる、しかし、同じく、禍々しい、気配を、纏った、十二使徒の、一体が、姿を、現した。
「――この、星の、記録に、何を、企んでいる」
零の、問いに、十二使徒は、静かに、答えた。
「――コノ書庫ニハ、古代ヨリ伝ワル、宇宙ノ、真理ガ、眠ッテイル。ソレヲ、我ラガ主ノ、糧トスル」
「宇宙の、真理……」
零は、静かに、剣を、構えた。
「――貴様ハ、既ニ、感ジテイルハズダ。アノ、雪ノ夜、貴様ヲ、コノ世界ヘト、導イタ、力ノ、正体ヲ」
その、言葉に、零は、思わず、息を、呑んだ。
「――どういう、意味だ」
「――イズレ、知ルコトニナロウ。今ハ、コノ場デ、貴様ヲ、排除スルコトノミ」
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戦いが、始まると、十二使徒は、これまでの、旅で、培ってきた、零たちの、連携をも、上回る、洗練された、動きを、見せた。
「――ッ、速い!」
零は、その、鋭い、攻撃を、辛うじて、躱し続けた。
「熊谷、前へ!」
「おうよ!」
熊谷の、盾が、正面からの、攻撃を、受け止める。花霞と、夜が、それぞれ、側面から、攻撃を、仕掛けていった。
エルナも、静かに、自分の、力を、展開させ、十二使徒の、動きを、僅かに、封じ込めていった。
「――エルナ、いいぞ!」
零の、激励に、エルナは、静かに、頷いた。
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零は、体の、奥の、あの、熱を、静かに、引き出しながら、十二使徒との、決着に、向けて、力を、振り絞った。
「――お前が、何を、知っていようと、この場所を、これ以上、好きにはさせない」
その、言葉と共に、零は、渾身の、力を込めて、剣を、振るった。
「――ッ、グァァァァ……!」
十二使徒の、悲鳴が、書庫の中に、響き渡った。
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「――バ、馬鹿ナ……! コレホドノ、力ヲ……!」
十二使徒は、大きく、体勢を、崩しながら、後退した。
「――今日ハ、コレマデダ。ジャガ、貴様ハ、イズレ、知ルコトニナロウ。貴様ヲ、コノ世界ヘ導イタ、『宇宙管理者』ノ、存在ヲ」
その、言葉を、最後に、十二使徒は、黒い、靄と共に、姿を、消していった。
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戦いが、終わった後、零は、静かに、その、言葉を、繰り返した。
「――宇宙管理者……」
「零、大丈夫? 何か、気になることでも?」
聖の、問いに、零は、静かに、頷いた。
「あの、雪の夜――俺が、この世界に、来ることになった、きっかけ。それに、何か、関係があるのかもしれない」
その、言葉に、一同は、緊張した、面持ちで、耳を、傾けた。
「これまで、俺は、なぜ、こっちの、世界に、来たのか、深く、考えたことは、なかった。でも」
零は、静かに、続けた。
「もしかしたら、その、答えに、繋がる、手がかりが、この先に、あるのかもしれない」
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書庫の、奥を、調べると、そこには、確かに、これまでの、旅では、見たことのない、星々の、動きを、記した、古い、記録が、残されていた。
「――これは……」
聖が、その、記録の、一部を、読み解きながら、静かに、呟いた。
「『生命波動』という、言葉が、記されてるわ」
「生命波動……」
零は、その、言葉に、微かな、既視感を、覚えた。
「数十億年に、一度、宇宙の、彼方から、放たれる、力――それが、時に、病を、時に、奇跡を、この世界に、もたらす、と」
その、記述に、零たちは、改めて、この、世界の、途方もない、広がりと、謎の、深さを、実感させられた。
見知らぬ、砂漠の国の、星読みの、神殿で、零たちは、これまでの、旅の、さらに、その先にある、大きな、真実の、片鱗に、触れ始めていた。




