第百十二話「師匠からの手紙」
墓所での戦いを終えた零たちが、近隣の街に、戻ってきたとき、思いがけない知らせが、零を、待っていた。
「――神代零様、こちらに、あなた宛の、手紙が、届いております」
宿の、主人から、手渡された、その、手紙には、見覚えのある、達筆な、文字で、宛名が、記されていた。
「――これは……」
零は、静かに、その、封を、開いた。
差出人は、あの、灰堂玄斎だった。
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「――零へ」
零は、静かに、手紙を、読み始めた。
「久しいな。この手紙が、お前の元に、届く頃には、お前は、既に、遥か、遠くの、地を、旅していることだろう。皇帝牙から、お前の、近況を、時折、聞いておる」
零は、静かに、その、言葉を、噛みしめた。
「お前の、成長ぶり、実に、喜ばしい。じゃが、一つ、伝えねばならぬことが、ある」
その、続きの、文面に、零の、表情が、僅かに、曇った。
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「――わしは、もう、長くない」
その、一文に、零は、思わず、手紙を、握りしめた。
「かねてより、患っておった、病が、進行しておる。医者の、見立てでは、あと、一年ほど、じゃそうな」
零は、静かに、その、言葉の、重みを、受け止めた。
「泣くでない、零。わしは、これまで、十分に、生きた。悔いは、ない。ただ、お前に、伝えたいことが、ある」
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「――わしが、これまで、教えてきたこと、それは、単なる、剣技ではない。生きることへの、向き合い方じゃ」
零は、静かに、その、言葉に、耳を、傾け続けた。
「お前の、その、力――苦しみを、糧とする、その、力は、これから、さらに、大きな、意味を、持つように、なるじゃろう。じゃが、忘れるな。力の、大きさよりも、それを、どう使うか、が、何よりも、大切じゃ」
「わしの、命が、尽きる前に、一度、お前に、会いたいと、思うておる。じゃが、それが、叶わずとも、案ずるな。わしは、いつまでも、お前の、成長を、見守っておる」
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手紙の、最後には、こう、記されていた。
「――生きて、そして、生き抜け、零。それが、わしの、何よりの、願いじゃ」
零は、静かに、手紙を、胸に、抱いた。
「――零、大丈夫?」
聖が、心配そうに、声を、かけた。
零は、静かに、涙を、拭いながら、頷いた。
「――灰堂さんが、病に、倒れてるらしい。あと、一年ほどしか、生きられないって」
その、告白に、仲間たちは、それぞれ、言葉を、失った。
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「――会いに、行きたいのか」
夜の、問いに、零は、静かに、頷いた。
「ああ。でも、今は、この国での、旅を、続けなければ」
零は、静かに、拳を、握りしめた。
「灰堂さんは、きっと、俺に、旅を、続けてほしいと、思ってる。だから、俺は、この旅を、しっかりと、続ける。それが、灰堂さんへの、恩返しに、なると、信じて」
その、決意に、聖、夜、熊谷、花霞、エルナは、それぞれ、静かに、頷いた。
「――零殿、そなたの、その、決意――灰堂殿にも、必ず、届くことでしょう」
花霞の、言葉に、零は、静かに、微笑んだ。
「ああ、そう、願いたい」
夜空を、見上げながら、零は、静かに、灰堂への、想いを、胸に、刻んでいくのだった。




