第百十話「蘇る死者」
四天王との、再戦は、これまでの、旅で、培ってきた、確かな、経験を、試される、戦いとなった。
「――今度は、六人だ。前回とは、違う」
零の、言葉に、四天王は、僅かに、警戒の色を、見せた。
「――エルナヲ、加エタカ。ダガ、ソレデ、我ニ、勝テルト、思ウナヨ」
四天王は、そう、告げると、石棺の、周囲に、纏わりついていた、靄を、大きく、展開させた。
「――蘇レ、古の、死者タチヨ」
その、言葉と共に、墓の、壁に、描かれた、無数の、古代の、兵士たちの、壁画が、まるで、生きているかのように、浮かび上がり、実体を、持ち始めた。
「――ッ、また、これか……!」
夜が、思わず、そう、呟いた。以前、中国大陸の、兵馬俑の、陵墓で、経験した、あの、戦いを、思い起こさせる、光景だった。
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「――だが、今回は、以前とは、違う」
零は、静かに、しかし、確かな、声で、告げた。
「熊谷、道を、開いてくれ!」
「おうよ!」
熊谷の、盾が、蘇った、兵士たちの、群れを、大きく、切り開いていく。
「花霞、夜、援護を!」
花霞と、夜が、それぞれ、鋭い、攻撃で、蘇った、兵士たちを、次々と、無力化していった。
「エルナ、皆を、守ってくれ!」
零の、指示に、エルナは、静かに、頷いた。
「――ワカッタ」
エルナは、静かに、自分の、力を、展開させた。これまで、絶望を、もたらすためだけに、使われてきた、その、力が、今、仲間たちを、守るための、確かな、盾へと、変化していく。
「――ッ、ナニ……!」
蘇った、兵士たちの、幾体かが、エルナの、放った、力の、前に、動きを、止めた。
「エルナ、その力……!」
聖が、驚きの、声を、上げた。
「――ワタシノ力ハ、モウ、病神様ノ、モノデハナイ」
エルナの、静かな、しかし、確かな、宣言が、墓の中に、響き渡った。
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零は、その、隙を、逃さず、四天王本体へと、まっすぐに、突き進んだ。
「――お前を、倒せば、この、蘇った、兵士たちも、元に、戻るはずだ」
零の、言葉に、四天王は、大きく、狼狽した。
「――ナ、ナゼ、ソコマデ……!」
「みんなの、力を、合わせれば、届く」
零は、体の、奥の、あの、熱を、静かに、しかし、確かに、引き出した。
「――俺たちは、この、古代の、王の、永遠を、求めた、想いを、絶望の、糧になんて、絶対に、させない」
その、言葉と共に、零は、渾身の、力を込めて、剣を、振るった。
「――ッ、グァァァァ……!」
四天王の、悲鳴が、墓の中に、響き渡った。
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「――バ、馬鹿ナ……! コレホドノ、力ヲ……!」
四天王は、大きく、体勢を、崩しながら、後退した。同時に、蘇っていた、古代の、兵士たちも、次々と、その、動きを、止め、静かに、元の、壁画へと、戻っていった。
「――今日ハ、コレマデダ。ジャガ、覚エテオケ」
その、言葉を、最後に、四天王は、黒い、靄と共に、姿を、消していった。
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戦いが、終わった後、墓の中には、静けさが、戻っていた。
「――終わった、みたいだな」
零が、荒くなった、息を、整えながら、そう、呟いた。
「零、エルナ、二人とも、お疲れ様」
聖の、労いに、零と、エルナは、それぞれ、静かに、頷いた。
「――ワタシノ力ガ、皆ノ、役ニ、立テタ」
エルナの、その、誇らしげな、呟きに、零は、優しく、微笑んだ。
「ああ、大きな、力に、なった」
見知らぬ、砂漠の国の、王家の谷で、零たちの、絆は、また一つ、確かな、勝利と共に、深まっていくのだった。




