第百八話「スフィンクスの問い」
使徒たちとの、戦いは、王の間、その、荘厳な、空間の中で、激しく、繰り広げられた。
「熊谷、前へ!」
「おうよ!」
熊谷の、盾が、使徒たちの、猛攻を、正面から、受け止める。花霞と、夜が、それぞれ、側面から、鋭い、攻撃を、仕掛けていった。
「聖、支援を!」
「わかってる!」
聖の、光が、パーティー全体を、力強く、包み込む。
そして、今回、初めて、実戦に、加わった、エルナも、静かに、自分の、力を、意識していた。
「――ワタシモ、戦ウ」
エルナの、周囲に、これまでとは、異なる、性質の、瘴気が、静かに、広がっていく。それは、もはや、絶望を、もたらすものではなく、確かな、意志を、宿した、力へと、変化していた。
「――ッ、コレハ……!」
使徒の、一体が、エルナの、放った、力に、明らかな、動揺を、見せた。
「エルナ、その調子だ!」
零の、激励に、エルナは、静かに、頷いた。
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零もまた、剣を、構えながら、体の、奥の、あの、熱を、静かに、引き出した。
「――俺は、この、古代の、王の、想いを、絶望の、糧になんて、絶対に、させない」
その、言葉と共に、零の、周囲に、確かな、光が、揺らめき始めた。
零、聖、夜、熊谷、花霞、そして、エルナ――六人の、確かな、連携によって、使徒たちは、次第に、追い詰められていった。
「――バ、馬鹿ナ……! コレホドノ、連携ヲ……!」
使徒たちが、大きく、動揺しながら、後退していく。
「――今日ハ、コレマデダ」
その、言葉を、最後に、使徒たちは、黒い、靄と共に、姿を、消していった。
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戦いが、終わった後、王の間には、静けさが、戻っていた。
「――終わった、みたいだな」
零が、荒くなった、息を、整えながら、そう、呟いた。
「エルナ、初めての、戦い、大丈夫だった?」
聖の、問いに、エルナは、静かに、頷いた。
「――ハイ。誰カヲ、守ル為ニ、戦ウノハ、悪クナイ、感覚ダ」
その、言葉に、零たちは、それぞれ、温かい、笑みを、浮かべた。
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王の間の、奥には、これまでの、旅で、見てきた、どの、遺跡とも、異なる、精緻な、壁画が、描かれていた。
「――この、壁画……」
聖が、興味深そうに、その、壁画を、見つめた。
そこには、巨大な、獅子の体に、人間の、顔を持つ、不思議な、生物――スフィンクスの、姿が、描かれていた。
「スフィンクスは、この国では、知恵の、象徴として、崇められているそうよ」
聖の、説明に、零は、静かに、頷いた。
「――『答エヨ、サモナクバ、喰ラワレン』」
壁画に、刻まれた、古い、文字を、読み解きながら、零は、その、言葉を、静かに、口にした。
「スフィンクスの、謎かけ、ね」
聖の、言葉に、零は、静かに、頷いた。
「この国には、知恵を、試す、そういう、伝統が、あるのかもしれないな」
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その夜、ピラミッドを、後にした、零たちは、麓の、野営地で、静かに、休息を、取っていた。
「――エルナ、今日は、本当に、よく、頑張ったな」
零の、言葉に、エルナは、少し、照れくさそうに、視線を、逸らした。
「――マダ、貴様タチニハ、及バナイ。デモ」
エルナは、静かに、続けた。
「――イツカ、モット、貴様タチノ、力ニ、ナリタイ」
その、素直な、決意に、零は、優しく、微笑んだ。
「もう、十分、力に、なってるよ」
見知らぬ、砂漠の国の、古代の、王墓を、後にしながら、零たちの、絆は、また一つ、確かなものへと、深まっていくのだった。




