第百六話「砂漠の国、エジプト」
十日間の船旅を経て、零たちの船は、ついに、新たな大陸――エジプトの、港へと、到着した。
「――これが、砂漠の国……」
甲板から、降り立った、聖が、そう、感嘆の声を、漏らした。
これまで訪れた、どの土地とも、異なる、乾いた、しかし、どこか、神秘的な、空気が、辺り一面に、満ちていた。遠くには、見渡す限りの、砂の海が、広がっている。
「暑い、な」
熊谷が、額の汗を、拭いながら、そう、呟いた。
「これまでの、どの国よりも、乾燥してるべなぁ」
エルナも、初めて見る、砂漠の光景に、静かに、目を、見張っていた。
「――コレガ、砂漠、カ。命ノ、気配ガ、ホトンド、感ジラレナイ」
エルナの、素朴な、感想に、零は、静かに、頷いた。
「でも、この国にも、きっと、たくさんの人々が、暮らしてる。それに、独自の、文化や、歴史が、あるはずだ」
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港町で、旅の準備を、整えながら、零たちは、この国の、情勢について、情報を、集め始めた。
「――この国には、ピラミッドという、巨大な、建造物が、あるらしいわ」
聖が、地元の、商人から、聞いた話を、皆に、共有した。
「大昔の、王――ファラオと、呼ばれる、統治者たちの、墓として、建てられたんですって」
「墓、として……」
零は、これまでの、旅で、見てきた、様々な、墓所や、遺跡を、思い返した。中国大陸の、兵馬俑の、陵墓。インドの、タージ・マハル。それぞれに、深い、想いが、込められていた、場所だった。
(この国にも、きっと、同じような、想いが、眠っているんだろうな)
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商人から、さらに、詳しい話を、聞くと、この国にも、既に、不穏な、噂が、広まっていることが、わかった。
「――最近、ピラミッドの、周辺で、妙な、噂を、聞くようになってな」
商人は、少し、声を、潜めながら、続けた。
「調査に、訪れた、学者たちが、次々と、原因不明の、病に、倒れているんだ。まるで、古代の、呪いが、目を、覚ましたかのように」
その、話に、零たちは、思わず、顔を、見合わせた。
(また、か)
これまでの、旅で、幾度となく、耳にしてきた、あの、兆候。この、見知らぬ、砂漠の国にも、既に、病神の、影が、忍び寄っているようだった。
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「――ピラミッドへ、向かう、準備を、しよう」
零の、言葉に、聖、夜、熊谷、花霞、エルナが、それぞれ、力強く、頷いた。
「今回も、油断は、禁物ね」
聖の、言葉に、零は、静かに、頷いた。
「ああ。それに」
零は、自分の、胸に、そっと、手を、当てた。
「この国では、これまでとは、また、異なる、脅威が、待ってるかもしれない」
夜が、鋭く、状況を、分析した。
「病神の、四天王も、まだ、一柱、残ってる。それに、十二使徒も、まだ、多くが、健在」
その、事実の、重みに、一同は、改めて、緊張を、強めた。
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その日の、夕方、零たちは、砂漠の、入り口にある、小さな、オアシスの、村で、旅の、準備を、整えていた。
「――エルナ、体調は、大丈夫か」
零が、尋ねると、エルナは、静かに、頷いた。
「――ワタシハ、大丈夫。デモ、零。オ前ハ、ドウダ。コノ、乾イタ、空気――呼吸ハ、苦シクナイノカ」
エルナの、素朴な、しかし、思いやりに、満ちた、問いに、零は、少し、驚きながらも、答えた。
「大丈夫だ。むしろ、日ノ本や、中国、インドでの、旅を、経て、体は、ずいぶん、丈夫になってきてる」
「――ソレハ、良カッタ」
エルナの、その、素直な、安堵の、表情に、零は、静かに、微笑んだ。
(エルナも、少しずつ、感情の、表現が、豊かになってきてる)
その、確かな、変化を、零は、嬉しく、感じていた。
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砂漠に、夜が、訪れると、満天の星が、これまでの、旅で、見てきた、どの空よりも、鮮やかに、輝き始めた。
「――綺麗、ね」
聖が、星空を、見上げながら、そう、呟いた。
「この国にも、きっと、独自の、星にまつわる、伝承が、あるんだろうな」
零の、言葉に、花霞が、静かに、頷いた。
「古代の、人々は、星々に、神々の、姿を、見出していたと、聞いたことが、ございます」
零は、静かに、星空を、見上げながら、これから、待ち受ける、新たな、旅路に、思いを、馳せた。
見知らぬ、砂漠の国で、零たちの、新たな、戦いと、出会いの、旅が、静かに、しかし、確かに、幕を、開けようとしていた。




