第百五話「次なる大陸、エジプトへ」
インドでの旅を終えた零たちは、港町へと向かい、次なる大陸――エジプトへと渡る、船の、手配を、進めていた。
「――エルナ、船に乗るのは、初めてか」
零が、尋ねると、エルナは、静かに、頷いた。
「――ハイ。ワタシハ、コレマデ、人ノ文明ノ、営ミト、深ク、関ワッタコトガ、ナカッタ」
その、答えに、零は、静かに、微笑んだ。
「これから、色々、経験していこう。船旅も、その、一つだ」
⸻
出港の日、零たちは、これまでの、インドでの、旅を、振り返りながら、静かに、桟橋に、立っていた。
「――思えば、この国でも、たくさんの、出会いが、あったな」
零の、呟きに、聖が、静かに、頷いた。
「タージ・マハルの、愛の物語。ガンジス川の、生と死の、信仰。ヒマラヤの、過酷な、試練。そして――」
聖の、視線が、静かに、エルナへと、向けられた。
「エルナとの、出会い」
エルナは、少し、照れくさそうに、視線を、逸らした。
「――ワタシハ、マダ、貴様タチニ、返セルモノガ、少ナイ。ダガ、イツカ、必ズ」
「今のままで、十分だ」
零は、静かに、エルナの、肩に、手を、置いた。
「お前が、ここにいてくれること。それだけで、俺たちにとっては、十分、意味がある」
⸻
船が、静かに、港を、離れていく。
甲板から、遠ざかっていく、インドの景色を、見つめながら、零は、これまでの旅を、改めて、振り返った。
(病神の、真の計画。皇帝牙さんが、言ってた、世界樹の存在。そして、十二使徒との、幾度もの、対峙)
まだ、明らかになっていない、多くの、謎が、残されている。だが、零は、確かな、手応えを、感じていた。
(一歩ずつ、確実に、前へ)
これまでの、旅で、積み重ねてきた、経験と、絆。それらが、確かに、零たちを、支え続けている。
⸻
「――零殿」
花霞が、静かに、隣に、立った。
「そなたの、その、表情――何を、お考えでしょうか」
「これまでの、旅のことを、な。それに、これからの、こと」
「エジプトでも、また、新たな、出会いと、試練が、待っていることでしょう」
花霞の、言葉に、零は、静かに、頷いた。
「ああ。でも、みんなが、いれば、きっと、乗り越えられる」
⸻
夜も、静かに、甲板の、手すりに、寄りかかりながら、遠くの、水平線を、見つめていた。
「――夜、何を、考えてるんだ」
零の、問いに、夜は、少し、間を、置いてから、答えた。
「エルナのこと。あの子が、これから、どんな風に、変わっていくのか、楽しみにしてる」
「楽しみ、か」
「ええ。あの子、まだ、色んなことを、知らない。それを、一つ一つ、教えていくの、なんか、悪くないな、って」
夜の、その、素直な、言葉に、零は、思わず、微笑んだ。
「夜も、随分、変わったな」
「――そう、かもね」
夜は、少し、照れくさそうに、そう、答えた。
⸻
熊谷も、甲板の、隅で、エルナに、何やら、熱心に、話しかけていた。
「――エルナ、これがな、俺の、故郷の、漁村の、話だべ」
「――漁村……。魚ヲ、捕ル、場所、カ」
「そうだべ。お前も、いつか、見に、来るといいべ」
「――行ッテモ、良イノカ」
「もちろんだべ! お前は、もう、俺たちの、仲間なんだから」
熊谷の、豪快な、言葉に、エルナは、静かに、頷いた。
「――イツカ、行ッテミタイ」
その、素朴な、願いに、熊谷は、嬉しそうに、笑った。
⸻
船が、大海原を、静かに、進んでいく。
見知らぬ、しかし、確かな、絆で、結ばれた、零たちの、旅は、こうして、新たな大陸――エジプトへと、その、舞台を、移していくのだった。
まだ見ぬ、砂漠の国。そこに、どんな、出会いと、試練が、待っているのか、まだ、誰にも、わからない。
だが、確かな、絆と、経験、そして、決して、諦めない、意志を、胸に、零たちは、次なる旅路へと、力強く、その、一歩を、踏み出していくのだった。
――第五章「インド編」は、こうして、幕を、閉じた。零たちの旅は、次なる大陸、エジプトへと、その、歩みを、進めていく。




