第百四話「インド編、終幕」
エルナが、仲間に、加わってから、一週間が、過ぎた頃、零たちは、ついに、この国での、旅の、最後の目的地――南方の、古都に、到着した。
「――ここが、この国の、信仰の、中心地……」
聖が、荘厳な、寺院群の、姿を、見上げながら、そう、呟いた。
だが、その、平穏な、光景の裏に、零は、これまでの旅で、幾度となく、感じてきた、あの、重苦しい気配を、確かに、感じ取っていた。
「――来る、な」
零の、呟きに、エルナが、静かに、頷いた。
「――病神様ノ、刺客。ワタシヲ、消去スル為ノ、者ガ」
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その夜、宿で、休んでいた、零たちの前に、突如として、黒い靄が、渦を、巻き始めた。
「――エルナ、見ツケタゾ」
聞き覚えのない、しかし、これまでの、使徒や、四天王とは、また異なる、より、冷徹な、気配を纏った者が、姿を、現した。
「――我ハ、十二使徒ガ一柱。裏切リ者、エルナヲ、消去スベク、遣ワサレタ」
その、宣告に、エルナの体が、微かに、震えた。
「――エルナ、大丈夫だ」
零は、静かに、エルナの、肩に、手を、置いた。
「俺たちが、いる」
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戦いは、これまでにない、激しさで、始まった。
「――ッ!」
零は、十二使徒の、鋭い攻撃を、必死に、凌ぎながら、エルナを、庇うように、立ち塞がった。
「熊谷、前へ!」
「おうよ!」
熊谷の盾が、正面からの、猛攻を、受け止める。花霞と、夜が、それぞれ、側面から、攻撃を、仕掛けていった。
「聖、支援を!」
「わかってる!」
聖の光が、パーティー全体を、包み込む。
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「――貴様ラ、コノ裏切リ者ヲ、庇ウノカ」
十二使徒の、問いに、零は、静かに、しかし、確かな声で、答えた。
「ああ。エルナは、もう、俺たちの、仲間だ」
「――愚カナ。ソノ者ハ、病神様ノ、道具ニ、過ギヌ」
「違う」
零は、剣を、構えながら、続けた。
「エルナには、確かな、感情がある。それを、俺は、この目で、見てきた」
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戦いの、最中、零は、体の奥の、あの熱を、静かに、引き出した。
「――俺は、エルナの、生きる権利を、守る」
その、言葉と共に、零の、周囲に、確かな、光が、揺らめき始めた。
「――ッ、コノ光ハ……!」
十二使徒が、明らかな、動揺を、見せた。
その、隙を、突くように、エルナが、静かに、前に、進み出た。
「――ワタシモ、戦ウ」
「エルナ……!」
エルナは、静かに、自分の、力を、意識した。これまで、絶望を、もたらすためだけに、使われてきた、その、力を――今、初めて、大切な人を、守るために、使おうとしていた。
「――ワタシノ力ハ、モウ、病神様ノ、モノデハナイ」
エルナの、その、確かな、決意と共に、彼女の、周囲の、瘴気が、これまでとは、異なる、性質へと、変化していった。
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「――バ、馬鹿ナ……! 裏切リ者ガ、コレホドノ……!」
十二使徒が、大きく、動揺しながら、後退した。
零とエルナ、そして、仲間たちの、確かな連携により、十二使徒は、次第に、追い詰められていった。
「――今日ハ、コレマデダ。ジャガ、覚エテオケ」
その、言葉を最後に、十二使徒は、黒い靄と共に、姿を、消していった。
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戦いが、終わった後、エルナは、静かに、自分の、両手を、見つめていた。
「――ワタシ、戦エタ。誰カヲ、守ル為ニ」
その、呟きに、零は、静かに、微笑んだ。
「ああ、よくやった」
聖も、優しく、エルナに、歩み寄った。
「エルナ、あなたは、もう、私たちの、大切な、仲間よ」
その、言葉に、エルナの、瞳から、静かに、涙が、こぼれ落ちた。だが、それは、これまでの、悲しみの涙とは、異なる、確かな、喜びの涙だった。
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翌朝、零たちは、この国での、旅の、区切りを、迎えていた。
「――この国でも、本当に、色んなことが、あったな」
零の、呟きに、聖が、静かに、頷いた。
「ガンジス川、タージ・マハル、ヒマラヤの氷河、そして――エルナとの、出会い」
「次は、どこへ、向かうんだべ?」
熊谷の、問いに、聖が、地図を、広げながら、答えた。
「エジプトという、国が、あるみたい。ピラミッドという、巨大な、建造物が、あるって」
零は、静かに、エルナを、見つめた。
「エルナ、一緒に、行くか」
「――ハイ。貴様タチト、共ニ」
その、確かな、答えに、零たちは、それぞれ、温かい、笑顔を、浮かべた。
見知らぬ国の、朝の光の中、零たちは、新たな仲間、エルナと共に、次なる大陸――エジプトを、目指し、その、旅路を、進めていくのだった。
――第五章「インド編」、完。




