第百三話「新たな仲間」
エルナが、正式に、パーティーへと、加わってから、数日が、過ぎた。
だが、エルナは、まだ、仲間たちとの、距離感に、戸惑いを、見せていた。
「――エルナ、朝ごはん、一緒に、食べましょう」
聖が、朝食の席で、そう、声をかけると、エルナは、少し、戸惑いながらも、静かに、席に、着いた。
「――コレハ、何、ダ」
エルナが、差し出された、パンを、じっと、見つめながら、そう、尋ねた。
「パンよ。食べたこと、ない?」
「――ワタシハ、食事ヲ、シタコトガ、ナイ。病神様ノ、器トシテ、創ラレタ、存在ダカラ」
その、答えに、聖は、思わず、息を、呑んだ。
「食べたこと、ない、って……。じゃあ、エルナ、これまで、何も、食べずに、生きてきたの?」
「――ワタシハ、病神様ノ力ヲ、糧トシテイル。人間ノ、食事ハ、必要ナイ」
その、告白に、零も、複雑な、想いを、抱いた。
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「――でも、せっかくだから、少し、食べてみないか」
零が、そう、勧めると、エルナは、恐る恐る、パンを、手に取った。そして、小さく、一口、齧った。
「――コレハ……」
エルナの、表情が、僅かに、変化した。
「どう?」
聖の、問いに、エルナは、しばらく、無言のまま、その、味わいを、噛みしめていた。
「――美味シイ、ノカ、コレハ」
その、素直な、反応に、零たちは、思わず、笑みを、こぼした。
「そうよ、美味しいのよ」
聖が、嬉しそうに、そう、答えた。
エルナは、その後も、少しずつ、パンを、口に、運び続けた。その、様子は、これまでの、感情の読み取れない、姿とは、明らかに、異なるものだった。
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その日の、道中、エルナは、少しずつ、仲間たちとの、会話にも、参加するようになっていった。
「――熊谷、ソノ盾ハ、何ノタメニ、アルノダ」
エルナの、素朴な、問いに、熊谷は、豪快に、笑いながら、答えた。
「これは、仲間を、守るための、盾だべ。俺の、大事な、役目なんだ」
「――守ル、タメ……」
エルナは、静かに、その言葉を、繰り返した。
「わたくしの、剣も、同じにございます」
花霞が、静かに、続けた。
「大切な人を、守るため、そして、姉の、想いを、継ぐために、この剣を、振るっております」
エルナは、静かに、その話に、耳を、傾けていた。
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夜になり、野営の準備を、進める中、エルナは、静かに、零の、隣に、腰を、下ろした。
「――零。一ツ、聞キタイコトガ、アル」
「なんだ?」
「貴様タチハ、ナゼ、ソレゾレニ、大切ナ、想イヲ、抱エテ、旅ヲ、シテイル。ワタシニハ、ソレガ、ナイ」
その、素直な、問いに、零は、静かに、考えた。
「エルナ、お前にも、これから、見つけていける、想いがあると、思う」
「――見ツケラレル、ノカ」
「ああ。俺だって、最初から、明確な、答えを、持ってたわけじゃない。旅を、続ける中で、少しずつ、見つけてきたんだ」
零の言葉に、エルナは、静かに、頷いた。
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「――エルナ、お前は、これから、どんなことを、してみたい?」
零の、問いに、エルナは、しばらく、考え込んでいた。
「――ワタシハ……。人ガ、ドウシテ、笑ウノカ、知リタイ」
その、意外な、答えに、零は、少し、驚いた。
「笑う、ことを?」
「――サッキ、パンヲ、食ベタトキ、聖ガ、笑ッテイタ。ソノ、笑顔ガ、ナゼカ、心ニ、残ッタ」
エルナの、素朴な、言葉に、聖が、優しく、微笑んだ。
「なら、これから、たくさん、一緒に、笑いましょう」
その、言葉に、エルナは、僅かに、口の端を、緩めた。それは、ぎこちなく、しかし、確かな、微笑みだった。
「――コレガ、笑ウ、トイウコトナノカ」
その、初めての、笑顔に、零たちは、それぞれ、温かい、気持ちに、包まれた。
見知らぬ国の、静かな夜、エルナという、新たな仲間は、少しずつ、しかし、確かに、零たちの、絆の中に、自分の、居場所を、見つけ始めていた。




