【第09話-04】エピソード0 ― 始まりの物語-千紗
前話の余韻?
しんみりした問い?
そんなもの――朝の“ぎしあん”で吹き飛びました。
恋の本質を考えていたはずの千紗。
「今のあなたはどこにいるの?」なんて真面目に悩んでいたはずなのに。
現実は、想像以上に騒がしい。
日替わり制度。
番制度。
公平性。
優越感。
笑って済ませられる出来事の裏側に、
千紗の本音がちらりと顔を出します。
これはただの修羅場コメディか?
それとも、三人の関係が次の段階へ進む前触れか?
エピソード0、温度急上昇です。
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【Scene10:朝っぱらから、何やってんのよ!?】
それは、三月末のある朝のことだった。
私こと──甘えん坊で、ぶりっ子で、ロリ巨乳で、絶世美少女(自称)の千紗ちゃんは、自室のベッドに寝転がって、憂鬱な気分で天井を見上げていた。
……なんでって?
だって、耳を澄ますと──
ぎし、ぎし、ぎし……
さらに集中すると──
あん……あん……あん……
うわ、これ……うわさに聞く“ぎしあん”ってやつじゃない?
しかも発生源は、我が家・如月家の真上──つまり、小泉家。
そして、私の部屋の真上は……
そう、晴道の部屋。
……は?
ちょっと、晴道と優香、朝から盛ってるの!?
いやいやいやいや。
『日替わりにしよう』って提案したのは私だよ?
“3人”でするには、晴道のベッドじゃ狭すぎるからって、私が言い出したんだよ?
今日は確かに、優香の番──うん、わかってる。理屈は、わかってる。
でもさ、朝っぱらからはやめてよ!
他にやること、あるでしょーがっ!
そんなことをベッドの上でブツブツ考えていたら、美優お母様の声が廊下から響いた。
「千紗〜、いる〜?」
「いるよ〜、なに美優お母様?」
「今ね、蘭くんから連絡があって。鍵の引き渡し、今日できるって」
──えっ。
「どう? 今日午後、時間あるなら、シェアハウス見に行ってみる?」
行くに決まってる!!
「晴道と優香にも聞いてくる!」
その勢いのまま、私は玄関を飛び出し、小泉家のチャイムを鳴らした。
──無反応。
うーん……もう事が済んで、シャワーでも浴びてるのかな。
通い妻たる千紗ちゃんは当然、“合い鍵”持ってますし……失礼しまーす。
玄関、開錠。
チェーン……無し。
ダメな時はチェーンをつけるって、前に3人で決めたルール。ってことは、もう終わったってことだよね?
よし。
私はそのまま、晴道の部屋のドアを勢いよく開けた。
「晴道、優香! これから──」
──あん、あん、あん
ぎし、ぎし、ぎし
……クライマックスでした。
(がーん……!)
……いやいやいやいや。
もうっ、こんな朝から全開モードって、どんなカップルですか!?
“日替わり制度”って、そういう意味じゃないからね!?
てか、私がいる前提で作ったルールじゃないから!
──あっ、いっ……イクっ
びく、びくっ……
あっ、二人とも達した。
こんな状況で踏み込まれて、よく最後までやれますね……ほんとに。
その後、二人がようやく正気に戻ったあと──
まずはシャワーを浴びさせて、即・事情聴取タイム。
ふむふむ。
優香曰く──「今日は私の番!」と意気込んでたけど、特に何も予定はなかったらしい。
沙織お母様は朝イチからパートで留守。
「午前中はまったりして、午後から気ままにデートかな〜」ってノリで、そのまま部屋着で晴道の部屋に乗り込んだらしい。
で、ベッドに座って、こう言ったんだって。
『ねぇ晴道、今日の私、なんか違うって分かる?』
『え? んー……普通に部屋着って感じだけど?』
『実はね……』
耳元で囁くように言ったんだって。
『ノーブラなの♡』
……お、おい。
ってなった晴道に、彼女は畳みかけたらしい。
『今さらそんなの気にする仲じゃないでしょ?』
『私の胸、ノーブラでも変わんないって思った?』
『そりゃ、千紗には負けるけど……』
そこで晴道、まさかの──
『いや、優香の胸は感度が最高だから!』
……お前、そこで褒めるなぁあぁ!!
『じゃあ、ノーブラで正解じゃない♪』
『さ・わ・り・ほ・う・だ・い♡』
そうしてるうちに、優香の方が我慢できなくなって、自分から晴道を押し倒したと。
──って、ほぼ毎回そうらしい。
(ちょっと待て、それ……純粋な愛って言える?)
そして私が尋ねた。“大切なアレ”はどうしたのかって。
……うん、ポケットに最初から入れてたって。
──完全に計画的犯行じゃん!!
朝っぱらから何やってんのよ!
たっぷり、たーっぷり、説教してやりましたよ。ええ、もちろん。
──で、自分の場合どうなんだろうって考えちゃった。
たとえば、私がイチャイチャしだすと──
晴道はまず、大好きな私の大きな胸を服の上から触ってくる。
私も気持ちよくなってきたころ、晴道が「千紗、俺もう……」って言いだして。
『うん、いいよ』って答えたら、あっという間に全部脱がされて。
気づいたら、もうベッドの中。
“アレ”は、いつの間にか晴道が準備してくれてて。
キスくらいなら私からするけど、最後までいくのは、毎回晴道から。
……なんだろう、この優越感。
今朝の憂鬱、どっか飛んでった。
朝から修羅場、でもどこか笑える。
千紗は怒って、呆れて、説教までしたけれど――
本当はちゃんと“観察”していました。
優香は自分から火をつけるタイプ。
晴道は求められると応えてしまうタイプ。
そして千紗は……最後に主導権を握るタイプ。
「優越感」が戻った瞬間、
千紗の中の不安は少しだけ薄れました。
でもね。
安心したときこそ、人は本質から目を逸らす。
あの朝の出来事は、ただのコメディなのか。
それとも三人の関係の“現在地”を示していたのか。
まだ答えは出ません。
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次回、
シェアハウスへ向かう道中。
母・美優の“過去”が語られます。
異性の親友。
告白されなかった想い。
変わらなかった自分。
そして、千紗は気づき始める。
──「好き」と言っていないのは、自分のほうじゃないか?
母の恋の軌跡は、
千紗にとって未来へのヒントになるのか。
物件見学のはずが、
心の見学になっていく。
エピソード0、静かに核心へ。




